
会社法とコーポレートガバナンス:投資家が知っておくべき基本知識
企業の粉飾決算や取締役の不当報酬受領など、組織ぐるみの不祥事が後を絶たない。こうした事態が発覚すれば、会社の信用は失墜し、業績悪化に伴い株価は低迷する。
その結果、最も損失を被るのは投資家である。
企業が適切な統治を行うためには、ガイドラインとしての「会社法」と「コーポレートガバナンス」が欠かせない。
また、投資家にとっても、企業の健全性を判断する重要な基準となる。本記事では、投資家が押さえておくべき会社法とコーポレートガバナンスについて解説する。
会社法とは?
会社法は、2005年に制定された企業の設立・運営を規定する法律である。商法、商法特例法、有限会社法を統合する形で誕生し、企業統治の法的枠組みを提供する。
2021年改正会社法のポイント
2021年3月1日に施行された改正会社法では、以下の重要な項目が新設された。
- 株主総会資料の電子提供制度
- 株主提案権の濫用的な行使の制限
- 取締役のインセンティブ報酬の規定
- 取締役の個人別報酬内容の明確化
- 会社補償・D&O保険契約
- 社債管理補助者制度
- 株式交付制度
特に注目すべきは、社外取締役の設置義務化である。従来は、設置しない場合の理由開示で済んでいたが、現在は義務となり、より透明性の高い経営が求められるようになった。
コーポレートガバナンスとは?
コーポレートガバナンスとは、企業が株主・顧客・従業員・地域社会などの利害関係者の立場を踏まえ、公正かつ迅速な意思決定を行うための仕組みである(出典:金融庁「コーポレートガバナンス・コード」)。
企業には、株主、従業員、顧客など、多様なステークホルダー(利害関係者)が存在し、それぞれの利益が必ずしも一致しない。
例えば、
- 利益を株主への配当に回せば、株主は喜ぶが、従業員の賞与に充てることも可能だったかもしれない。
- あるいは、価格を下げて顧客に還元するという選択肢もある。
このような利害の対立を適切に調整し、公平な視点で意思決定を行うための仕組みがコーポレートガバナンスである。
コーポレートガバナンス強化の目的
東京証券取引所が策定した「コーポレートガバナンス・コード」では、次の5つの基本原則が示されている。
- 株主の権利・平等性の確保
- 株主以外のステークホルダーとの適切な協議
- 適切な情報開示と透明性の確保
- 取締役会等の責務
- 株主との対話の促進
上場企業の株式は常に取引可能であり、投資家が株主になることは比較的容易である。
しかし、投資先の財務状況や株主構成を知る機会は限られ、四半期決算などを通じて一部の情報しか開示されない。
そのため、企業側が積極的に情報を開示し、透明性を高めることで、株式市場の活性化や日本経済の健全な成長を促進することがコーポレートガバナンス強化の狙いである。
投資家が企業のコーポレートガバナンスをチェックする方法
投資先企業のコーポレートガバナンスを確認する方法として、主に以下の2つが挙げられる。
- 企業の公式サイトを確認する
- 企業の「コーポレートガバナンス体制」ページに、基本方針や取組みが掲載されていることが多い。
- 例えば、三菱商事(8058)の場合、「コーポレート・ガバナンスに対する取組」ページで基本方針を確認できる(出典:三菱商事公式サイト)。
- 統合報告書をチェックする
- 統合報告書には、コーポレートガバナンスの基本方針だけでなく、監査体制や社外役員の構成なども詳しく記載されている。
- 企業のガバナンス体制をより深く知りたい場合、統合報告書の確認が有効である。
まとめ
企業の不祥事は、投資家に大きな損失をもたらすリスクがある。そのリスクを回避するためにも、会社法とコーポレートガバナンスについて理解し、投資先企業の経営透明性をチェックすることが重要だ。
会社法は企業運営の法的枠組みを規定し、コーポレートガバナンスは企業の意思決定の透明性と公平性を確保する役割を持つ。
投資家として、企業の公式サイトや統合報告書を活用し、コーポレートガバナンスの状況を適切に把握することで、より賢明な投資判断を行うことができるだろう。