
売れるネット広告社グループ、企業変革と成長戦略──M&A、事業多角化の狙いとリスクを読み解く
はじめに
2025年3月14日、売れるネット広告社グループ株式会社(旧:株式会社売れるネット広告社) の半期報告書が公表された。
同社は インターネット広告事業 を基盤とし、D2C(ネット通販)向けのマーケティング支援、広告運用、越境EC、M&A仲介支援などを展開している。
この半年間で、売れるネット広告社グループは 大規模な組織再編 と M&A戦略 を実行し、企業構造を大きく変革させた。具体的には、以下の動きがあった。
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M&Aによる事業拡大
- 2024年8月に 株式会社JCNTを子会社化(グローバル情報通信事業への参入)。
- 2025年1月1日付で グルプスとオルリンクス製薬を合併し「オルクス株式会社」を設立(D2C事業の統合)。
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持株会社体制への移行
- 2024年9月30日、持株会社として 「売れるネット広告社グループ株式会社」に社名変更。
- 吸収分割により、事業会社として 「売れるネット広告社株式会社」を新設。
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財務状況の変化とリスク管理
- 売上高は前年同期比+242.7%増の8億円超 だが、M&Aに伴う投資費用や減損損失により純損失は約3.9億円。
- 自己資本比率は48.5%から29.8%に低下(財務健全性の課題)。
本記事では、同社の戦略的変革、事業成長の可能性、そして抱えるリスクについて深掘りしていく。
売れるネット広告社グループの戦略的背景
M&Aによる事業拡大と市場ポジションの変化
売れるネット広告社グループは、 D2C向けのデジタルマーケティング支援 をコア事業としてきた。
しかし、同市場の競争激化を受け、新たな収益源の確保と事業の多角化 を進める必要があった。
その解決策として、M&Aを積極的に活用 し、以下の3つの主要セグメントを形成した。
1. D2Cマーケティング支援事業
- 主力サービス:「売れるD2Cつくーる」「最強の売れるメディアプラットフォーム」
- 課題:広告表現規制の強化、景表法・薬機法の影響による費用対効果の悪化
- 売上高:3.1億円
- セグメント損失:1.5億円(前年より悪化)
2. D2C(ネット通販)事業
- 主力サービス:「KogaO+(シートマスク)」などの化粧品販売
- 売上高:1.5億円
- 営業利益:1,400万円の赤字(だが、広告宣伝費調整後は黒字)
3. グローバル情報通信事業(新規参入)
- 主力サービス:株式会社JCNTによるモバイル通信機器レンタル(Wi-Fiルーター、SIMカード)
- 売上高:3.5億円
- セグメント利益:4,400万円(唯一の黒字事業)
財務状況とリスク要因
売れるネット広告社グループの最新財務状況を見ると、 売上成長の一方で、赤字拡大と自己資本比率の低下 が目立つ。
1. 売上と収益の変化
- 売上高:前年同期比+242.7%の8億円
- 経常損失:1.3億円
- 純損失:3.9億円(前年の約5倍)
2. 自己資本比率の低下
- 48.5%(前年) → 29.8%(今期)
- M&A資金や設備投資により長期借入金が増加(3.3億円 → 5.7億円)
3. キャッシュフロー
- 営業活動によるキャッシュフロー:-5,800万円(赤字)
- 投資活動によるキャッシュフロー:-6,500万円(M&A、新機能開発)
- 財務活動によるキャッシュフロー:+1.9億円(株式発行と借入)
今後の展開と成長戦略
売れるネット広告社グループは、財務リスクを抱えながらも成長戦略を明確に打ち出している。
1. 持株会社化による事業最適化
- 事業会社「売れるネット広告社株式会社」 に業務を移管し、持株会社としてグループ経営に専念。
- グループ全体の経営資源を最適化 し、成長分野への投資を強化。
2. グローバル情報通信事業の成長
- 2024年8月のJCNT買収により通信機器レンタル市場に参入。
- インバウンド需要や国際イベントに合わせて売上拡大を狙う。
3. D2C事業の強化
- KogaO+(シートマスク)を中心にD2C市場でのシェア拡大。
- 自社製品とマーケティング支援を融合し、クロスセル戦略を展開。
4. 資本市場での信頼回復
- 2025年3月に株式分割を実施(投資家層の拡大)。
- 財務健全化に向けた資金調達計画の見直し。
まとめ
売れるネット広告社グループは、大胆なM&Aと事業多角化で新たな成長モデルを模索している。
しかし、短期的には赤字拡大や財務リスクの増大という課題を抱えている。
今後の焦点は、
- D2Cマーケティング支援事業の利益率改善
- グローバル情報通信事業の成長加速
- 自己資本比率の回復と財務健全化
企業変革の最中にある売れるネット広告社グループ。この改革が成功すれば、国内広告市場における新たなリーダー企業となる可能性がある。
しかし、現在の財務リスクをどう克服するかが、今後の成長の鍵を握ることになるだろう。