株式会社一や 半期分析レポート(2025年3月)

1. 企業概要

会社概要・証券コード

株式会社一や(証券コード;9968)は、衣料事業、飲食事業、不動産事業を展開する企業である。

本社は高知県高知市にあり、代表取締役会長兼社長は山本真嗣氏が務めている。

同社は、紳士服などの衣料品販売を手掛けるほか、焼肉店や餃子専門店を運営する飲食事業、不動産の賃貸を行う不動産事業を展開している。

主力事業とターゲット市場

  • 衣料事業:紳士服などの衣料品販売、オリジナルTシャツの企画・販売
  • 飲食事業:焼肉店および餃子専門店の運営
  • 不動産事業:国内および海外の賃貸物件の運営

経営方針

  • 販売網の強化:店舗移転による販売環境の改善
  • 飲食事業の収益性向上:商品価格の見直しによる売上総利益率の向上
  • 不動産事業の安定収益化:国内外の賃貸物件の運用最適化

2. 財務状況

売上・利益の推移

  • 売上高:386,920千円(前年同期比7.7%増)
  • 営業損失:△50,329千円(前年同期:△40,371千円)
  • 経常損失:△6,219千円(前年同期:△34,795千円)
  • 純損失:△18,448千円(前年同期:△37,148千円)
  • 自己資本比率:90.0%(前年92.4%)

キャッシュフロー分析

  • 営業活動キャッシュフロー:△20,767千円(前年同期:△51,286千円)
  • 投資活動キャッシュフロー:+43,055千円(前年同期:+18,532千円)
  • 財務活動キャッシュフロー:△7,378千円(前年同期:0千円)
  • 現金及び現金同等物の残高:515,607千円

分析
売上の増加に伴い、純損失が縮小傾向にある点はプラス要素である。

ただし、営業赤字の継続やキャッシュフローの悪化が懸念される。財務基盤は比較的安定しているものの、収益性の向上が今後の課題となる。

3. 業界動向と競争環境

市場環境

  • 衣料業界:EC化の進展により、実店舗販売の競争が激化
  • 飲食業界:外食需要の回復が進むが、コスト上昇が利益率を圧迫
  • 不動産市場:海外投資家の関心は高いが、国内市場は金利上昇の影響を受ける

料業界では、EC市場の拡大が進み、実店舗販売の競争が激化している。一やの衣料事業もその影響を受けており、収益性の維持が課題となっている。

飲食業界では、コロナ禍からの回復が進み、外食需要が増加しているものの、人件費や原材料費の上昇が利益率を圧迫している。

不動産市場では、海外賃貸市場は堅調な成長を見せているが、国内市場は金利上昇の影響を受ける可能性がある。

4. 事業別の成長戦略

衣料事業

  • 売上高:34,586千円(前年同期比3.8%増)
  • セグメント損失:△2,470千円(前年同期:4,145千円の利益)

課題

  • 店舗移転に伴うコスト増
  • EC市場の競争激化

戦略

  • オンライン販売の強化
  • ブランド価値向上による価格戦略の見直し

飲食事業

  • 売上高:309,699千円(前年同期比8.3%増)
  • セグメント利益:18,399千円(前年同期比8.8%増)

成功要因

  • 価格改定による客単価の上昇
  • コストコントロールの徹底

不動産事業

  • 売上高:42,633千円(前年同期比6.0%増)
  • セグメント利益:25,480千円(前年同期比47.8%増)

 

衣料事業では、販売環境の改善を目的として、一部店舗の移転を実施した。これにより販売網の最適化を図り、売上の伸長を目指している。

しかし、移転に伴う経費増加が収益を圧迫し、セグメント損失を計上する結果となった。今後は、オンライン販売の強化やブランド価値の向上を通じて、事業の収益性改善を図る必要がある。

飲食事業では、外食需要の回復を背景に、客単価の向上が進んでいる。価格改定による利益率の改善が実現し、増収増益を達成した。

ただし、原材料費や人件費の高騰が依然として事業の収益性に影響を与えており、コスト管理が今後の鍵となる。

不動産事業では、国内外の賃貸物件の運用が順調に進み、売上は前年同期比6.0%増となった。

特に海外賃貸物件の需要が堅調であり、今後の収益安定化に寄与する見込みである。

しかし、国内市場では金利上昇の影響を受ける可能性があり、事業の収益モデルを慎重に見極める必要がある。

5. 投資対象としての評価

短期的な見通し

  • 売上は増加傾向だが、収益性が課題
  • 営業赤字の改善が必要

中期的な展望

  • 飲食事業の成長が鍵
  • 不動産事業の安定収益化がポイント

長期的な成長可能性

  • 衣料事業のEC展開が成功すれば成長の可能性あり
  • 海外不動産市場での拡大戦略が重要

6. 投資家視点での評価

ガバナンスの評価

  • 自己資本比率90.0%と財務基盤は安定
  • 経営陣の資本配分の効率性に課題

株主提案の可能性

  • 配当政策の見直し(現在は無配)
  • 不採算事業の整理と集中戦略の必要性
  • 収益性向上に向けた資本戦略の強化

不採算事業の整理と集中戦略の導入が重要な課題となる。特に、衣料事業の収益性が低いため、抜本的な事業改革が必要となる可能性がある。

飲食事業の成長を活かし、経営資源を集中的に投下することで、収益構造の改善が期待される。

株主提案の観点では、現在無配であるため、配当政策の見直しを求める声が高まる可能性がある。

投資家にとって魅力的な企業となるためには、収益の安定化とともに、適切な株主還元策を採用することが求められる。

7. まとめ

株式会社一やは、売上の増加と不動産事業の安定化により、一定の財務基盤を維持しているが、収益性の低さが課題となっている。

今後は、衣料事業のEC展開や不動産市場でのさらなる成長が、企業の成長戦略の中心となる。

短期的には、営業赤字の縮小が最優先課題であり、コスト管理の強化が求められる。

中期的には、飲食事業の成長を活かし、全体の業績を安定させることが重要となる。長期的には、EC市場や海外不動産市場の拡大を図ることで、さらなる成長が期待される。

投資家にとっては、企業の財務健全性を評価しつつ、成長戦略の実行力を慎重に見極める必要がある。

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