
バルニバービの成長戦略と課題──レストラン事業と地方創生プロジェクトの現在地
はじめに
2025年3月14日、株式会社バルニバービ(証券コード:E31815) の第34期半期報告書 が公開された。
バルニバービは、関東・関西を中心にレストラン事業を展開しながら、不動産開発と連携したエステートビルドアップ事業 にも注力している。
この半年間で、同社の業績は以下のような特徴を示した。
- 売上高:69.6億円(前年同期比+6.3%)
- 営業利益:2.4億円(前年同期比-13.5%)
- 親会社株主に帰属する純利益:1.2億円(前年同期比-62.0%)
- 自己資本比率:46.2%(前年の33.5%から改善)
- 財務活動によるキャッシュフロー:24.8億円(前年の約4倍)
- 現金及び現金同等物の増加:18.6億円増(前年同期比2倍)
本記事では、バルニバービの最新の経営戦略と成長戦略、財務状況、そして今後のリスク要因について詳しく解説する。
バルニバービの成長戦略
1. レストラン事業の成長
バルニバービのレストラン事業は、関東・関西エリアを中心に100店舗以上を運営 しており、独自の戦略を展開している。
(1) バッドロケーション戦略
バッドロケーション戦略とは、立地のデメリットを逆手にとり、独自の空間設計と食の魅力で集客する手法 だ。
2024年9月には、京都市中京区で 「BONSAI1877」 をオープンし、歴史ある京町屋のリノベーションを活用している。
また、東京都新宿区では「本家かのや」を新ブランド「十割そば 否否五杯と本家かのや」として再オープンし、新たな顧客層の開拓を進めた。
➡ バッドロケーション戦略の売上高:16.9億円(前年同期比-6.2%)
(2) 不動産デベロッパーとの連携
バルニバービは、大手デベロッパーと提携し、特別な条件で物件を獲得 することで、収益性の高いレストランを展開している。
2024年10月には、東京都千代田区で 「GARB Cheers OTEMACHI」 というスポーツバーを新たにオープン。
➡ 不動産デベロッパー戦略の売上高:29.9億円(前年同期比+14.0%)
(3) 行政・公共機関との協力
自治体と連携したプロジェクトも拡大中で、地域活性化イベントの開催やオリジナル業態の開発に取り組んでいる。
➡ 行政・公共機関戦略の売上高:11.6億円(前年同期比+14.9%)
(4) 季節限定の展開
冬季にはスキーリゾートエリアで限定店舗を運営し、新たな市場を開拓。2024年12月には、新潟県魚沼郡の 「ぶなキッチン」、長野県の 「瀬戸内淡路島 中華そばいのうえ」、北海道の 「レストラン ダウンヒル」 などを開業。
➡ 大学・その他戦略の売上高:1.8億円(前年同期比+10.0%)
2. エステートビルドアップ事業の展開
バルニバービは 地方創生を軸に不動産開発と飲食事業を融合 する「エステートビルドアップ事業」を進めている。
(1) 淡路島プロジェクト
淡路島北西海岸では 「Frogs FARM ATMOSPHERE」 を展開し、飲食店や宿泊施設を含む複合施設を20施設運営。
2024年7月には新たにレストランを開業し、ホテルと一棟貸コテージを2025年春にオープン予定。
(2) 島根・出雲の地方創生
島根県出雲市西海岸では、観光・二拠点生活・移住支援を目的とした 「WINDY FARM ATMOSPHERE」 を展開。レストランと宿泊施設の運営を強化し、新たに アウトドアウェディングのプランを導入 する計画。
➡ エステートビルドアップ事業の売上高:7.6億円(前年同期比-5.2%) ➡ セグメント損失:6,422万円(前年は利益9,150万円)
財務状況とリスク要因
1. 財務状況の変化
- 総資産:122億円(前年同期比+20.9億円)
- 負債合計:64.7億円(前年同期比-2.6億円)
- 純資産:57.9億円(前年同期比+23.6億円)
財務状況は安定しているものの、純利益は減少し、エステートビルドアップ事業の赤字が影響を与えている。
2. キャッシュフローの変化
- 営業活動によるキャッシュフロー:1.1億円(前年同期比+9.7%)
- 投資活動によるキャッシュフロー:-7.3億円(前年同期比2倍以上の投資)
- 財務活動によるキャッシュフロー:24.8億円(前年同期比4倍増)
➡ 株式発行による調達資金(22.8億円) がキャッシュフロー改善に大きく寄与。
3. 主なリスク要因
- 飲食業界の人材不足と人件費高騰
- エネルギー価格の上昇と仕入れコストの増加
- 不動産投資の回収期間が長期化するリスク
- 新規出店による初期投資の負担
今後の成長戦略
バルニバービは、飲食業と不動産開発を組み合わせた独自の成長モデル を確立しつつある。今後の注目ポイントは以下の3つ。
-
地方創生プロジェクトの収益化
- エステートビルドアップ事業の赤字解消が急務。
- 宿泊・観光需要の取り込みを強化 する必要がある。
-
財務健全化の継続
- 資金調達を抑え、自己資本比率の安定化を図る。
- キャッシュフロー改善を維持 し、長期的な収益基盤を確立。
-
海外展開・新業態開発
- 海外市場への展開や、飲食以外の新たな業態 にも可能性。
まとめ
バルニバービは 飲食業と不動産業を組み合わせた独自のビジネスモデル を展開し、今後の成長が期待される。
一方で、エステートビルドアップ事業の赤字解消や財務の健全化が課題となる。
この挑戦が成功すれば、新たな飲食業界のリーダーとしての地位を確立する可能性がある。