株式会社大盛工業 半期分析レポート(2025年3月)

1. 企業概要

証券コード

株式会社大盛工業(証券コード: 1844)は、建設事業、不動産事業、通信関連事業を展開する企業である。

本社は東京都千代田区にあり、代表取締役社長は栗城幹雄氏が務めている。

主力商品・サービス・ターゲット市場

大盛工業は、主に上・下水道工事を中心とした建設事業を展開し、不動産の売買・賃貸事業、通信関連事業も手掛けている。

特に老朽化対策が進むインフラ工事に強みを持ち、東京都をはじめとする公共工事案件の受注が堅調である。

戦略方針

  • 建設事業の収益力向上: 上・下水道工事に加え、新たな土木業種の受注にも積極的に取り組み、施工日数の短縮と工事コストの低減を進める。
  • 不動産事業の拡大: 賃貸物件の安定運用と、優良収益物件の取得・売却に注力。
  • 通信関連事業の成長: NTT局内の通信回線の保守・管理業務を軸に、新規案件獲得を推進。

2. 財務状況の分析

  • 売上・利益の推移
    • 売上高: 3,175,691千円(前年同期比+13.3%)
    • 経常利益: 492,822千円(前年同期比+28.0%)
    • 親会社株主に帰属する中間純利益: 332,285千円(前年同期比+16.3%)
  • キャッシュフローの健全性
    • 営業活動CF: -1,250,774千円(前年同期-264,557千円)
    • 投資活動CF: -50,825千円(前年同期-528千円)
    • 財務活動CF: -390,023千円(前年同期+88,561千円)
    • 現金及び現金同等物残高: 1,661,581千円
  • 自己資本比率や収益性指標の評価
    • 自己資本比率: 51.2%(前年同期比+3.0pt)
    • ROE: 5.8%(前年同期5.1%)
    • 営業利益率: 15.9%(前年同期14.2%)

3. 業界動向と競争環境

近年の建設市場では、国土強靭化計画の推進により公共投資が底堅く推移している。

特に老朽化インフラの修繕や更新需要が高まり、上・下水道工事の需要が安定している。

一方で、建設資材の高騰や労働力不足によるコスト増が業界全体の課題となっている。

また、不動産市場では物流施設の開発が活発化し、都心部の不動産価格は高水準を維持しているが、金利上昇の影響による市場の冷え込みリスクがある。

通信業界では、5Gネットワークの整備が進む中で、通信インフラの保守・管理事業の需要は引き続き堅調である。

4. 事業別の成長戦略

  • 各セグメントの売上高・利益率
    • 建設事業
      • 売上高: 2,292,086千円(前年同期比+17.0%)
      • 営業利益: 284,175千円(前年同期比+24.7%)
    • 不動産事業
      • 売上高: 397,324千円(前年同期比+22.3%)
      • 営業利益: 120,937千円(前年同期比+87.3%)
    • OLY事業
      • 売上高: 270,635千円(前年同期比-17.5%)
      • 営業利益: 59,467千円(前年同期比-18.0%)
    • 通信関連事業
      • 売上高: 220,760千円(前年同期比+9.7%)
      • 営業利益: 41,066千円(前年同期比+25.3%)

5. 投資対象としての評価

大盛工業は、安定した公共工事の受注と不動産事業の拡大により、堅調な成長を維持している。

短期的には、老朽化対策工事やインフラ整備の需要が追い風となり、売上と利益の増加が見込まれる。

中期的には、建設資材の価格変動や労働力不足がコスト増の要因となるため、利益率の維持が課題となる。

不動産事業の安定収益化が、全体の業績を支える鍵となる。

さらに、通信関連事業においても、5Gネットワークの拡張やデジタルインフラの整備が進む中で、新規受注の増加が期待される。

ただし、競争が激化しているため、価格競争の影響を受けるリスクも考慮する必要がある。

6. 競合比較と市場評価

大盛工業の競争環境において、同社は特定の分野に強みを持つものの、競争相手との比較によって優位性と課題が明確になる。

競合企業との比較

  • 競合A社(総合建設業): 全国規模で展開し、大規模なインフラ案件に強みを持つ。一方で、コスト増が業績に影響を及ぼしている。
  • 競合B社(不動産事業特化): 住宅開発や賃貸経営を中心に事業を拡大。安定収益が確保されているが、金利上昇による影響が懸念される。
  • 競合C社(通信関連事業強化): 5Gインフラ拡大に伴い、通信設備工事の受注を増やしている。新技術対応の柔軟性が高い。

大盛工業は、建設・不動産・通信の3事業を並行して展開している点で、多角的な収益源を確保している。

しかし、競合企業と比較すると、スケールメリットを生かした大規模プロジェクトへの参入には課題が残る。また、不動産市場の金利変動や通信分野での技術革新の速度に適応する必要がある。

7. リスク要因の詳細分析

大盛工業が直面する主なリスク要因は、以下の通りである。

1. 市場リスク

  • 建設業界のコスト上昇: 建設資材や労務費の上昇により、利益率が圧迫される可能性がある。
  • 不動産市場の変動: 金利上昇や景気減速により、不動産売買が停滞するリスクがある。

2. 経営リスク

  • 受注競争の激化: 他の建設業者との価格競争が厳しく、利益率が低下するリスクがある。
  • プロジェクト管理の複雑化: 多岐にわたる事業を展開する中で、プロジェクト管理が難しくなる可能性がある。

3. 競争リスク

  • 新技術の導入競争: 5Gネットワークの拡張やスマートインフラ整備に対応するため、技術革新への適応が必要。
  • 大手企業とのシェア争い: 特に建設・不動産市場では、大手ゼネコンやデベロッパーとの競争が激化している。

4. 規制リスク

  • 法規制の変更: 建設業や不動産業における法規制が変更されることで、事業運営に影響を及ぼす可能性がある。
  • 環境規制の強化: 持続可能な建設やエネルギー効率の向上が求められ、コスト増の要因となる。

5. 資金調達リスク

  • 金利上昇の影響: 建設資金や不動産事業の融資条件が悪化する可能性。
  • 財務健全性の確保: 事業拡大のための資金調達が適切に行われない場合、財務状況の悪化が懸念される。

8. 投資家視点での評価

大株主情報(トップ5)

  1. WINBASE TECHNOLOGIES LIMITED(5.58%)
  2. 高野 廣克(3.37%)
  3. 株式会社プラス(2.82%)
  4. 石原 勝(2.18%)
  5. 木田 裕介(1.50%)

大盛工業の株主構成は分散しており、特定の大株主による支配は限定的である。

上場企業としての透明性を維持しつつ、安定した経営基盤を確立している。

また、株主還元については安定した配当政策が維持されているが、今後の財務状況の変化による影響を注視する必要がある。

9. まとめと投資判断のポイント

大盛工業は、建設・不動産・通信関連の3つの事業を展開し、特に公共工事の受注による安定収益を確保している。

短期的には業績の伸長が期待されるが、中期的には資材コストや労働力不足といった課題に直面する可能性がある。

また、競争環境の中で強みを発揮しつつも、大規模プロジェクトへの参入や技術革新のスピードに対応することが今後の成長の鍵となる。

投資家は、同社の財務健全性と今後の成長戦略に注目し、投資判断を行う必要がある。

大盛工業は、安定した公共工事の受注と不動産事業の拡大により、堅調な成長を維持している。短期的には、老朽化対策工事やインフラ整備の需要が追い風となり、売上と利益の増加が見込まれる。

中期的には、建設資材の価格変動や労働力不足がコスト増の要因となるため、利益率の維持が課題となる。

不動産事業の安定収益化が、全体の業績を支える鍵となる。

 

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