情報戦略テクノロジー  2024年度有価証券報告書

情報戦略テクノロジー、グロース上場後初の有報で見せた“本気のDX”企業戦略

はじめに

2024年3月に東証グロース市場へ新規上場を果たした株式会社情報戦略テクノロジーが、上場後初となる第16期(2024年12月期)の有価証券報告書を提出した。

売上・利益ともに安定した成長を維持しながらも、その成長の裏側にある独自の開発思想「0次DX」や、プラットフォーム事業「WhiteBox」など、従来のSIerやSES企業とは一線を画すユニークな戦略が浮かび上がってくる。

この記事では、業績・財務・事業モデル・人的資本戦略までを徹底的に読み解く。

業績ハイライト(2024年12月期)

  • 売上高:58.4億円(前期比+10.4%)
  • 営業利益:4.1億円(同+6.4%)
  • 経常利益:4.0億円(同+3.0%)
  • 当期純利益:2.7億円(同▲0.8%)
  • 自己資本比率:62.2%(前年38.8%)
  • 営業CF:+1.9億円
  • 現預金残高:18.2億円(前年比+6.6億円)

売上・利益ともに堅調に推移しており、特に自己資本比率の急上昇(約+23pt)は、上場による資本注入効果が反映された結果だ。

営業キャッシュフローも引き続き黒字であり、財務の安定性が際立っている。

財務の健全性とキャッシュフロー(詳細分析)

財務の健全性(2024年12月期末時点)

  • 総資産:28.1億円(前年:18.4億円)
  • 純資産:17.5億円(前年:7.1億円)
  • 自己資本比率:62.2%(前年:38.8%)
  • 有利子負債:3.2億円(前年:4.4億円)
  • 株主資本:17.5億円(前年:7.1億円)
  • 株式上場に伴い、資本金+資本剰余金が約7.6億円増加

総資産・純資産ともに大幅増加し、負債比率が大幅に低下。実質無借金経営に近づいており、資金調達耐性の強化が進んでいる。

キャッシュフロー状況(単位:千円)

  • 営業CF:+193,789千円(前年:+292,204千円)
    • 税引前利益407百万円に対して、法人税等支払額124百万円が響きやや減少
  • 投資CF:▲100,769千円(前年:▲7,327千円)
    • 敷金差入が大幅増(123百万円)、拠点拡大の影響
  • 財務CF:+567,959千円(前年:▲196,602千円)
    • 新株発行による収入:+749,765千円
    • 長期借入金返済:▲181,404千円
  • 現預金期末残高:1,816,750千円(前年:1,155,771千円、増加率+57%)

営業CFは着実な黒字を維持。投資CFは本社移転・支店開設に伴う設備支出によるマイナス。財務CFは株式発行による調達で大幅プラスとなり、期末現金残高は18億円超に。資金繰りは極めて良好で、投資余力も高い状態。

0次システム開発──SI業界の常識を「なくしていく」

情報戦略テクノロジーの中核事業は、「0次システム開発」と呼ばれるアプローチである。

これは、顧客企業と直接契約し、外注構造を介さずにエンジニアが業務に深く入り込み、提案・設計・実装を一気通貫で行うスタイルを指す。

要件定義から入るのではなく、ビジネス課題の本質に迫る“前段階”から伴走するという意味での「0次」だ。

このスタイルにより、

  • 多重下請け構造からの脱却
  • ウォーターフォール開発からアジャイル型への転換
  • エンジニアの主役化(使い捨て回避)
  • 顧客企業のIT内製化支援

といった構造改革を実現しており、日本の旧来型SIモデルとは異なる潮流を築いている。

WhiteBox──業界横断型プラットフォームの布石

同社が手がけるもう一つの柱が、システム開発業界向けのオープンプラットフォーム「WhiteBox」である。

2021年にサービスインし、2024年末時点で会員登録社数は2,753社、登録エンジニア数は3万人超に達している。

WhiteBoxは、スキルシートのDB化、1次請け企業による案件掲載、パートナー企業との直接提案・マッチングなど、受発注のあり方をDX化するものであり、「未来マッチング」「商流の逆転」といった機能を通じて、多重構造の緩和を目指している。現在は自社の営業活動にも活用されており、エコシステム拡大の中心的役割を担っている。

人的資本戦略──エンジニアこそが競争力の源泉

情報戦略テクノロジーは、「エンジニアの待遇改善」も事業戦略の一部として位置づけている。

  • 平均年収:708万円(2024年度)
  • 残業時間:1日平均1時間未満
  • 社員エンジニア数:253名(前年比+15.5%)
  • エンジニア1人当たり売上高:1,178万円

評価制度の整備や、マネジメント/スペシャリスト双方のキャリアパス、勉強会・資格取得支援などを通じ、長期的な人材定着と能力開発に取り組んでいる。

また、管理職に占める女性割合や、男性育休取得率(2024年は45.5%)など、人的資本開示の水準も高い。

経営課題と注目ポイント

情報戦略テクノロジーの最大の課題は、「成長と同時に文化と思想を維持できるか」にある。0次DXは思想性の高い事業モデルであり、エンジニア採用やパートナー開拓を進める中で、そのカルチャーをどう伝播させ、均質化させるかが試される。

また、WhiteBoxを軸としたプラットフォーム構想は、ゆくゆくはマッチング/スキルDB/教育/評価/支援といった“エンジニア経済圏”を築く可能性を秘めているが、そのためにはSaaS事業としてのスケーラビリティと、収益貢献力の向上が不可欠だ。

論評社としての視点

DXという言葉が形骸化しつつある中で、情報戦略テクノロジーの取り組みは、まさに「現場」から生まれた本質的な構造改革である。

0次システム開発という思想は、発注者・受注者という立場を超え、エンジニアを主役とする協業型の開発スタイルを提唱するものだ。

2025年度は、その思想をいかに拡張し、次なる成長曲線へ乗せるかが焦点となる。エンジニアと企業の関係を変えるという大命題に挑む、この“現場発”のDX企業の軌跡から、今後も目が離せない。

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