楽天カード、グループ内フィンテック中核としての躍進

2024年12月期 有価証券報告書レビュー

はじめに

楽天カード株式会社(非上場)は、2024年12月期の有価証券報告書を提出し、クレジットカード業界の構造変化とキャッシュレス推進の潮流の中で、再び安定成長軌道へ乗った姿を鮮明にした。

楽天経済圏の中核を担う同社のパフォーマンスは、グループ全体の資金循環と信用力を支える屋台骨である。

本記事では、財務指標、事業別動向、キャッシュフローの構造、そして今後の戦略の方向性を「論評社」の視点で深掘りしていく。


1. 財務ハイライト

  • 売上収益:4,079億円(前年比+23.8%)
  • Non-GAAP営業利益:663億円(同+35.0%)
  • 営業利益:623億円(同+2.7%)
  • 税引前利益:619億円(同+2.6%)
  • 当期純利益:481億円(同▲0.8%)
  • 自己資本比率:2.0%(前年:2.8%)
  • 営業CF:▲2,778億円(前年:▲1,937億円)
  • 投資CF:+273億円
  • 財務CF:+3,805億円
  • 現金および現金等:4,483億円(前年末比+1,301億円)

成長性・収益性では抜群の実績を残す一方、営業CF赤字継続と自己資本の低位水準は財務的課題として残る。


2. クレジットカード事業の軸足と取扱高の拡大

  • クレジットカード取扱高:24.0兆円(+13.7%)
  • リボルビング残高:6,678億円(+4.2%)
  • キャッシング残高:1,502億円(+4.0%)

楽天カードは、モバイル・証券・ペイメントなど楽天グループとのクロスユースを強化し、エコシステムの入口としての役割を拡大。

2024年には楽天証券での投資信託カード決済、楽天モバイルとの連携キャンペーンが奏功し、取扱高・リボ残ともに順調に伸びた。

また、マーケティング費用削減や債権管理の効率化も進み、営業利益率の維持と損失率の低下にもつながっている。


3. ペイメント事業の拡大──楽天ペイとEdyのシナジー

  • ペイメント売上:924億円(前年比+528.4%)
  • 営業利益:45億円(前年:▲3.9億円→黒字転換)

楽天ペイメントでは、2024年末に「楽天ペイアプリ」と「楽天カードアプリ」を統合し、UI・UXを刷新。非接触決済の利用促進とアクティブユーザーの維持を狙う。

楽天Edyでは、自治体・インフラ連携による利用シーンの拡大と、プリペイド型の安全性・利便性の両立が進んだ。今後は交通系・公共料金連携などを含むスキーム拡大が期待される。

フィンテックプラットフォームとしての基盤構築が着々と進行している。


4. 財務とキャッシュフロー──巨大CFの構造を読み解く

  • 営業CF:▲2,778億円
    • 貸付金増加:▲4,058億円(カードショッピング・リボ需要)
    • 営業債務増加:+1,133億円
  • 投資CF:+273億円(有価証券売却益など)
  • 財務CF:+3,805億円
    • CP(コマーシャルペーパー)発行:+2,374億円
    • 短期借入金:+1,714億円

資金調達では、借入と社債の分散活用、債権流動化、みずほFGとの提携などにより、流動性と信用力を両立。

資金調達総額は3.1兆円、平均調達コストは年1.13%。きわめて低コストかつ安定したファンディング基盤を維持。


5. 経営課題と再構築戦略

  • 自己資本比率の改善(2.0%→最低でも5~10%水準へ)
  • カード貸倒コスト・信用リスクの適正管理(貸倒引当金+内部格付見直し)
  • グループ再編の影響と統制(ペイメント吸収・保険事業スピンオフ)
  • 外部パートナー戦略の高度化(みずほ連携・決済共通基盤)

今後の焦点は「楽天カード」単体の収益性維持だけでなく、「楽天フィンテックエコシステム全体の接続拠点」としての中核的機能をどう強化するかにある。


6. 投資家視点での評価

楽天カードは、国内キャッシュレス化の象徴的存在であると同時に、楽天グループ全体の収益構造を支える重要な中核企業である。

投資家視点から見た際の注目点は以下のとおりである。

  • トップラインの成長性:取扱高24兆円・前年比+13.7%と着実な成長軌道にあり、消費動向・モバイル連携・証券取引などとのクロスユースによる継続的なスケーラビリティが期待される。
  • 営業利益の安定性:Non-GAAPベースで663億円、実際の営業利益も623億円と堅調。コスト削減と債権管理の効率化により、今後も安定した収益創出が見込まれる。
  • キャッシュフロー構造の二面性:営業CFは赤字だが、主因はカード債権の増加という“成長に伴う赤字”であり、収益性とは矛盾しない。資金調達面ではコマーシャルペーパーや短期借入を活用し、財務CFで資金流動性を補完している点は評価される。
  • 自己資本比率の低さ:2.0%という数値は、金融業としても業界最低水準の一つであり、資本強化の道筋(内部留保/増資/連結最適化など)の明示が求められる。
  • グループ内での立ち位置強化:みずほFGとの連携や、楽天証券・銀行・ペイメントとの統合機能を担うことで、グループ再編の中心プレイヤーとなっている。今後の戦略的意義は、単体企業を超えて楽天フィンテック全体に波及する。

総じて、収益面では魅力ある一方で、財務健全性・資本構造の脆弱さが投資家の懸念材料となっている。中長期的に持続可能な成長軌道を描くには、「成長ドライブ」と「バランスシート強化」の同時実行が不可欠である。


論評社としての視点

楽天カードは、ただのカード会社ではない。「楽天経済圏の入口」であり、信頼と資金を繋ぐ“グループの心臓”である。

2024年は、金融再編とテクノロジー融合を進めながら、キャッシュレスの未来図を再描き直す1年だった。営業利益成長、シェア拡大、プラットフォーム統合など「攻め」の施策は奏功しているが、営業CF赤字と自己資本比率の課題は残る。

真の「フィンテック巨人」となるには、収益性・財務健全性・社会的信頼──そのすべてを統合できるかが鍵だ。

2025年、楽天カードは次なる変革の扉を開ける。

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