CARTA HOLDINGS、2024年12月期 有価証券報告書レビュー

広告DXと人的資本経営で“進化推進業”へ

はじめに

株式会社CARTA HOLDINGS(証券コード:3688)は、2024年12月期の有価証券報告書において、広告DX支援を軸とした堅調な成長と、人的資本経営による組織の再編・強化を明確に打ち出した。

売上高は前年比0.7%増の242億円、営業利益は21.4億円と前年同期比64.4%増と大幅増益。

2023年に打ち出した中期経営方針「NEXT EVOLUTiON」のもと、サステナビリティと事業進化を両立させるモデルが動き出している。


1. 財務ハイライト(連結ベース)

  • 売上高:242億7,500万円(前年比+0.7%)
  • 営業利益:21億3,900万円(同+64.4%)
  • 経常利益:23億8,400万円(同+32.6%)
  • 親会社純利益:16億8,800万円(前期:▲23億6,000万円)
  • 自己資本比率:50.0%(前年:47.2%)
  • 営業CF:+25億7,600万円/投資CF:▲7億5,600万円/財務CF:▲12億300万円
  • 現金及び現金等:143億4,900万円(+8.2%増)

2. セグメント別の実績

デジタルマーケティング事業

  • 売上高:162億3,900万円(前年比▲4.1%)
  • セグメント利益:17億500万円(前年比+90.9%)

電通グループとの協業、新規広告ソリューション拡大が奏功。

予約型広告の減少を直販や運用型広告で補い、プロダクトの高度化とコストコントロールにより利益率が急上昇。

インターネット関連サービス事業

  • 売上高:80億3,500万円(前年比+11.8%)
  • セグメント利益:4億3,300万円(前年比+6.3%)

メディア運営・EC・人材関連ソリューションが堅調。

特にPeX・DIGITALIOによるポイント経済圏の強化や、サポーターズによる新卒マーケティング支援が業績貢献。


3. 経営戦略とグループ再編

  • 2025年度は中計最終年度、「進化推進業」としての自社定義を内外に浸透へ
  • デジタル広告会社3社統合(CARTA COMMUNICATIONS、CARTA MARKETING FIRM、Barriz)による業務効率化
  • 組織再編・人材戦略と連動したESG・ガバナンス対応の強化

同社の掲げる“エコシステム全体での価値創出”という視座が、広告主・媒体社・ユーザーすべてに向けたサービスの品質向上に現れている。


4. ESG/人的資本経営の深化

  • 平均年齢34.2歳、平均勤続年数7.1年、離職率12.1%
  • 年間平均給与:667万円(前年比+1.4%)
  • 女性管理職比率:17.8%(2030年目標:30%)
  • 男性育休取得率:82.8%、障がい者雇用率:2.4%
  • 社内サーベイeNPS:▲33.9(改善傾向)

バリュー浸透・ピープルアナリティクス・生成AI活用推進(AI Lab)など、HRの高度化が進む。

DEIやスキル育成、1on1や社内異動の透明性向上も強化中。


5. 投資家視点での評価

CARTAは、安定成長+ESG先進型企業という評価軸で見られることが多い。

成長余地と資本効率の観点から、以下が投資家の関心領域である:

  • 営業利益率:8.8%(成長企業としてはやや控えめ)
  • 自己資本利益率(ROE):7.1%(2022年度比▲32.5pt)
  • 配当性向:113.9%(高還元だが一時的水準)
  • 自己株取得・電通グループとの連携深化による株主価値向上
  • AI・プライバシー法制への対応力が今後の競争優位に直結

論評社としての視点

「デジタル広告」という一過性のブームを超え、CARTAは“事業者の進化を支援する伴走者”としての役割を着実に果たしている。

クライアントのDX化、メディアの収益改善、広告主のガバナンス対応など、多面的に貢献するプレイヤーへと進化している点は評価に値する。

一方で、広告市場の構造変化、クッキー規制、AI導入競争といった不確実性の高い事業環境においては、資本政策・IRの磨き込みが今後の株価評価に直結する局面でもある。

2025年、CARTAが描く“人と未来の可能性を拓く”モデルの実現度が、企業価値に問われる年となる。

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