
ネパール水力発電と外食企業の接点を読む
2025年5月13日、香港を拠点とするMEL CAPITAL LIMITED(以下、MELキャピタル)が、株式会社海帆(証券コード:3133)の株式2,785,600株を保有し、持株比率が5.32%に達したことを関東財務局に報告した。
注目すべきは、その保有目的に「ネパール水力電力発電所事業における共同出資事業に関する保有」と明記されている点だ。
MEL CAPITALとは何者か?
MELキャピタルは2022年に設立された香港法人で、代表者はYUE KWAN ALAN WONG氏。事業内容は「日本・アジア地域におけるインフラ整備に関するコンサルティング事業」とされており、比較的新しい組織ながらも、アジア新興国におけるエネルギーインフラ分野への投資を軸に据えた活動を行っている。
報告書上では「簡易株式交換による取得」であると明記されており、通常の市場内買付やTOBではなく、資本提携やスキームを伴った“事業連携型”の取得であることが読み取れる。
株式会社海帆とは?──再建中の外食企業
株式会社海帆は、愛知県を拠点に「昭和食堂」「がブリチキン。」などを展開する外食企業である。
コロナ禍によって大きな打撃を受けたものの、再建フェーズに入りつつある。直近では、M&Aや海外進出、資本業務提携を通じて経営の立て直しを図る戦略を打ち出していた。
特筆すべきは、海帆が単なる飲食業にとどまらず、「地方創生」や「アジア新興市場への事業進出」を掲げていた点である。
こうした動きは、MELキャピタルが掲げる「インフラ整備事業」との親和性を感じさせる。
取得構造と意図──簡易株式交換の意味
報告書によると、取得資金の記載は「0円」、取得形態は「簡易株式交換」。これは、MELキャピタルが保有する他資産もしくはSPCとの持ち分交換等を通じて、海帆との資本関係を構築した可能性がある。
このようなケースでは、出資を受ける企業側が新株を発行し、MELキャピタルが“カウンターパート事業”として提供するリソース(例:水力発電所への出資、資金調達スキーム、現地ネットワーク等)との引き換えで持分を取得する「バーター型連携」が想定される。
今後の展開と市場への影響
この保有報告は、以下のようなシナリオの端緒となり得る。
- ネパール事業との統合モデル:海帆がアジア新興国の飲食・観光・再生可能エネルギー領域に進出する足がかりを得る可能性。
- 地域開発・PPP(官民連携)型の事業創出:MELキャピタルのアジアでの事業経験と、海帆の「地方創生」ビジョンの融合。
- 業績のV字回復と株主構成の再編:再建フェーズにある海帆にとって、戦略投資家の登場はガバナンス改善・財務強化の追い風となる。
- 水力発電や再エネ文脈でのESG評価の上昇:サステナビリティ評価が今後のIR材料となる可能性。
“異種連携”が生む戦略的レバレッジ
MELキャピタルによる海帆株の取得は、単なる金融投資ではない。事業連携・インフラ投資・地域創生という複数のテーマが交差する“異種提携”の起点である。
こうした動きは、外食業界の再編や、新興国インフラとの連動を視野に入れた「越境型M&A」や「地域開発ファンド構想」へと発展する可能性を秘めている。
投資家としては、この“提携型大量保有”の行方を見極めることが、単なる株価判断を超えた構造的な視点を持つうえで重要である。