FOUR SEASONS ASIA、三和油化工業の株式5.37%取得

環境循環型モデルへの資本の流入

2025年5月22日、シンガポールを拠点とするFOUR SEASONS ASIA INVESTMENT PTE. LTD.(以下、FSアジア)は、三和油化工業株式会社(証券コード:4125)の株式を231,700株取得し、保有比率が5.37%に達したことを関東財務局へ報告した。

報告書によれば、投資は「純投資」としており、顧客資金によるファンド型ポジション構築である。

注目すべきは、その取得手法が極めて段階的かつ集中的に行われており、2025年4月以降に約20回以上の市場内買付を重ね、直前には1日で8,800株・9,100株・4,600株という大型取引を実施している点である。

市場内価格帯は1,222円〜1,551円と分散し、戦略的な平均取得単価の調整を試みた様子が見受けられる。

FSアジアとは何者か?──アジア地域に根ざす投資助言ファンド

FSアジアは2006年に設立され、CEOである国府田茂佳氏を中心に、日本・アジアの中小型企業に対するバリュー投資および企業再評価を主眼とした投資活動を展開してきた。

特に、循環型産業、環境技術、再生可能資源といったテーマに強みを持ち、脱炭素社会の流れの中で独自の投資哲学を確立している。

その投資スタンスは、伝統的な割安株アプローチとESGを融合させた「環境バリュー投資型」とも呼ぶべきものであり、一定のガバナンス対話や資本効率改善への期待を前提とするが、強硬なアクティビズムとは距離を置く傾向にある。

三和油化工業とは──“廃油再生”のフロンティア企業

三和油化工業は、自動車整備・金属加工などで排出される廃油を再処理・精製し、再生潤滑油として供給するリサイクル事業を中核に据えた企業である。

近年では、再資源化の精度を高めるための新工場稼働や、収集効率の高度化、環境対応型製品の開発など、業界内での存在感を高めている。

環境省や経済産業省とも連携を図りつつ、全国的な廃油回収網を活かして「資源循環モデル」の社会実装に取り組んでおり、脱炭素・循環型経済といったマクロトレンドの追い風を受けている。

なぜ今、三和油化なのか──3つの投資仮説

  1. PBR1倍未満の割安株としての再評価余地:非鉄・エネルギー素材セクターの中でも、三和油化は利益率改善とバランスシート改革が期待されており、バリュエーション見直しの余地がある。
  2. ESG文脈での評価上昇:廃油再生という事業モデルそのものがESG評価の対象となり、環境ファンドやESGインデックスの買い需要に繋がる可能性がある。
  3. 資本政策の提言余地:高い内部留保に対して、今後の成長投資戦略・株主還元・IR方針といった観点から、緩やかな対話型アプローチが展開される可能性。

投資家が注目すべき視点

  • FSアジアの今後の買い増し余地および6%超への到達有無
  • 同業他社とのROE・ROIC比較による相対的評価の見直し
  • IR強化・サステナビリティ報告書の開示レベル向上
  • 中長期的にみた再生油需要の持続性とグローバル展開の可能性

“再生”というキーワードが生む資本の連携

今回の大量保有報告書は、単なる中小型株の需給変動ではない。

FSアジアが「再生」にこだわる理由、それは単なる環境貢献ではなく、企業の持続可能性と資本効率の両立を目指す確信的アプローチである。

三和油化工業が、どのようにこの信任に応え、資源循環型企業としての価値を市場に示していくのか──その問いこそ、今後の資本の質を問う試金石となるだろう。

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