黒字化の陰で、現預金は消失し、売上も沈んでいた
2025年3月期・第11期中間。EduLabは「黒字化」を果たした。
売上高は29億5,392万円、経常利益2億3,611万円、親会社株主に帰属する純利益は1億7,868万円。前年同期の純損失2億6,986万円から大きく回復したように見える。
だが──その裏で、現預金は1億5,000万円以上減少(前年末:15.7億 → 今期末:12.5億)し、売上高は前年比で▲11.0%減。
かつて「教育×AI×グローバル」と評された同社の事業は、明らかに収縮している。
この“利益なき増収”とは逆の、「黒字なき縮小」とも言える構造転換の意味を、我々は読み解かねばならない。
営業黒字の裏にある「減収・縮小」の現実
EduLabはこの中間期、売上3.3億円減、利益2.7億円改善という“数字の反比例”を記録した。
その背景にあるのは、明確な「撤退戦略」だった。
つまり、利益は稼いだのではなく、“やめることで出した”ものだった。
セグメント分解:再建型事業の明暗
EduLabの主力セグメントを分析すると、再建と収益化が鮮明に分かれる。
セグメント |
売上高(前年比) |
セグメント利益(前年比) |
テスト等ライセンス事業 |
▲27.9% |
▲39.7% |
テストセンター事業 |
+1.9% |
+28.0% |
AI事業(DEEP READ等) |
+16.7% |
+過去赤字→黒字転換 |
テスト運営・受託事業 |
▲16.9% |
+606.8%(粗利急伸) |
その他(広告等) |
▲34.1% |
赤字から黒字へ転換 |
特に、AI事業とテスト運営事業が、営業利益構造の柱として浮上。広告やライセンス型は減収であり、“労働集約とAIモデル”のハイブリッド経営が現状の解となっている。
キャッシュフローの構造──稼いだ金は、残らなかった
EduLabの営業利益は約1.7億円。しかし、営業キャッシュフローはたったの5,392万円。
営業利益とCFがほぼ連動しないこの構造には、以下の要因がある。
つまり、キャッシュの裏付けのない利益であり、再投資原資としての余力には乏しい。前期末から3億円減の手元資金(12.5億円)は、決して余裕とは言えない水準だ。
監査報告と財務制限条項──“信頼の砂上”をどう読むか
EduLabの中間決算には、前期までの連続赤字を理由とした財務制限条項の抵触が注記されている。
形式上は問題なし──だが、金融機関との信頼で成り立つ財務基盤であることは明白。
“借入の引き直し”が難しくなれば、再成長どころか、現状維持さえ危うくなる構造である。
これは「再生」ではなく、「縮小均衡」ではないか?
EduLabは、確かに黒字に転じた。だがそれは、成長の果てに生まれたのではない。
“事業を減らし、投資を止め、支出を削った結果”の黒字である。
つまり今、EduLabがいるのは「再生の始点」ではなく、“縮小均衡の頂点”かもしれない。
キャッシュを消費し、売上を失いながら、黒字を保つ──この構造は、長続きしない。
次の四半期、EduLabは何を示すのか。売上が戻るのか、利益が維持されるのか、キャッシュが増えるのか。