
■ 企業概要
ウェッジホールディングスは、電子書籍やゲームなどのコンテンツ開発事業と、タイ拠点のマイクロファイナンス投資(GL関連)を両輪とする異色の投資型企業である。
GL社を巡る粉飾・訴訟問題が尾を引き、財務健全性とガバナンスには常に懸念が付きまとう。
■ 業績サマリー(第24期中間:2024年10月〜2025年3月)
指標 | 金額 | 前年同期比・補足 |
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売上高 | 4.2億円 | ▲3.3% 減収 |
営業損失 | ▲2,252万円 | 赤字継続(改善) |
経常利益 | 9,431万円 | 黒字転換(前年▲5.2億円) |
純利益(親会社) | 7,973万円 | 黒字転換(前年▲5.4億円) |
営業CF | +7,888千円 | 減少(前年:+1.44億円) |
現預金残高 | 2.94億円 | 前期末比 ▲2.17億円 |
■ 黒字転換のカラクリ──「持分法益」と「為替差益」の効果
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実質的な業績回復ではなく、持分法による投資利益(+8,852万円)と為替差益(+1,101万円)が黒字の主要因。
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一方、本業である営業活動は依然赤字(▲2,252万円)。
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GL社に依存した帳簿上の利益であり、キャッシュ創出を伴わない構造。
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つまり、利益の「質」が依然として低い。
■キャッシュアウトの実態──黒字でも減る現金
区分 | 金額 | 内容補足 |
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営業CF | +788万円 | 実質減少、黒字とは逆の動き |
投資CF | ▲1.61億円 | 貸付2.39億円/回収8,000万円 |
財務CF | +2200万円 | 借入による資金調達 |
現預金残高 | 2.94億円 | 前期末5.11億円から▲2.17億円 |
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実質のキャッシュ流出は貸付金の新規実行(グループ内資金移動か)。
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PLは黒字だが、BSとCFでは“出血”状態が続く。
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財務体力は確実に消耗中。
■ コンテンツ事業──黒字確保も“成長”の実感乏しく
項目 | 状況 |
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売上高 | 4.2億円(▲3.3%) |
セグメント利益 | 1.26億円(前年1.80億円)=▲30% |
コメント | 書籍・ゲームの受注堅調/ただし前年は“過去最高ロイヤリティ”の反動あり |
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黒字は確保されたが、実質はコスト調整による演出。
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成長ドライバーが見えず、「持続性ある黒字」とは言い難い構造。
■GL問題──黒字の下で続く構造的不信
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監査法人アリアは「限定付結論」を付与。
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GLHの融資取引の影響不確定
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GL(簿価10億円)の評価見直し未実施
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GL関連訴訟(JTRUST ASIAほか)は継続中
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GLF(タイ法人)はライセンス取消 → 清算中 → 持分法除外
➡️ 「黒字だから安心」とは言えない。そもそもGL評価そのものが不確定要素。
■これは“事業の黒字”ではなく“帳簿の黒字”だ
ウェッジホールディングスはPLでは黒字、だがCFでは出血、BSでは不信という三重構造にある。
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持分法益に頼る“帳簿回復”
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現預金の流出とグループ内貸付という“見えない資金移動”
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限定付き監査意見という“第三者からの警告”
企業としての真の健全性は、黒字か赤字かではなく、“どのようにして黒字なのか”にこそ表れる。
そして今の黒字は、過去の傷を覆う化粧板にすぎないのではないか。
「黒字復帰」とは、果たして企業の再生なのか──
それとも、帳簿上だけの“形だけの勝利”なのか。