Silchester、⼤東建託に5.04%出資

配当・自己株消却を求める“静かなる圧力”の中身

2025年5月23日、英国拠点の資産運用会社Silchester International Investors LLP(以下、Silchester)が、大東建託株式会社(証券コード:1878)の株式3,475,000株を保有し、発行済株式総数に対して5.04%の保有割合に達したことを大量保有報告書で開示した。

一見すると平易な「投資顧問業」としての報告だが、報告書には「資本政策の変更を要求することがある」と明記されており、Silchester特有の“エンゲージメント重視型アクティビズム”が裏に控えている可能性が高い。

Silchesterとは何者か?──アクティビストの中の“古典派”

Silchesterは2010年設立、ロンドンに本社を置くLLP(有限責任事業組合)であり、伝統的な長期投資スタイルを貫きつつ、株主価値の最大化を志向する“クラシカル・アクティビスト”として日本市場でも広く知られる。

過去には昭和電工、コスモエネルギーHD、日本毛織などに対して積極的に増配要求やガバナンス改善提案を行ってきた。基本姿勢は経営陣との対話を重視しつつ、必要に応じて株主提案や反対票を投じるというもので、敵対的ではないが確実にプレッシャーをかけていくスタイルが特徴である。

大東建託とは──分譲からサブリースまでの不動産統合モデル

大東建託は、アパート建築の請負から管理・サブリース運営までを一気通貫で行う業界最大手であり、土地活用を軸に「地主ビジネス」とも称される独自モデルを構築してきた。

一方、サブリースに関わる契約問題や収益性の鈍化、地方拠点の非効率化といったガバナンス課題も過去に浮上しており、近年では成長鈍化に対して自己株買いと配当政策の見直しが注目されていた。

報告書から読み取れる“圧力”

Silchesterの保有目的には以下のような文言が並ぶ

  • 増配・自己株買入・金庫株消却など資本政策の変更を要求することがある
  • 会社分割・合併・事業譲渡等の議案への賛否を柔軟に判断
  • 保有比率を変動させる可能性あり

これは、いわゆる「ライト・アクティビズム」の典型であり、表立った敵対行為を避けつつも、IRや資本政策を軸に企業行動を修正させようとする戦略が透けて見える。

直近の売買動向──小口処分と断続的買い戻し

報告書には、2025年4月22日~5月22日までの間に市場内外で約20万株以上の断続的な売買履歴が記載されている。

ので決まりますこれは単なるポジショニング調整ではなく、市場需給や出来高、経営側のIR対応を見極めながら“圧力の濃淡”を調整しているものと見られる。

取得資金は全額「顧客勘定(47.7億円相当)」からのものであり、長期資金による戦略的保有であることも確認されている。

結論──大東建託の資本政策が次に問われる番

Silchesterによる5%超の出資は、株主提案という形式を伴わずして“圧力”として機能する。

特に、配当政策の見直し、ROE改善、ガバナンス報告の精緻化といった中長期テーマに関して、大東建託は今後「対話か反発か」の判断を迫られる可能性がある。

市場関係者や投資家は、今回の大量保有が「嵐の前の静けさ」なのか、それとも“株主資本の最適化”という潮流の中の一里塚なのか、その真意を見極める局面にある。


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