
人材とブランドの多様化で過去最高益
企業概要
株式会社ジェイグループホールディングスは、愛知県名古屋市を拠点に展開する多業態型飲食チェーンの中核持株会社である。
居酒屋「芋蔵」「博多かわ屋」「吟醸マグロ」などの主力ブランドを全国展開するほか、カフェ(猿Cafe等)、レストラン(大阪王将、名古屋めし食堂)も展開し、国内101店舗・海外1店舗・FC8店舗の合計110超店舗体制を構築する。
同社は「個店主義」に基づき、立地ごとにブランドや業態をカスタマイズし、標準化とは逆の戦略を貫いてきた。
加えて、不動産保有によるテナントビル運営や、外部への不動産転貸、さらにM&Aによる業態取得など、飲食×不動産×M&Aを掛け合わせた立体的な経営モデルを志向している。
2023年6月以降は子会社統合やM&Aを活発化。新たにエッジオブクリフ&コムレイドなどのバル業態企業を傘下に加え、ブランドポートフォリオの刷新と郊外展開への転換を加速中。
業績サマリー(2024年3月~2025年2月)
指標 | 実績 | 前年比・補足 |
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売上高 | 107.4億円 | +3.0% 増収(2年連続) |
営業利益 | 3.77億円 | +21.7% 増益 |
経常利益 | 3.52億円 | +15.4% 増益 |
当期純利益 | 4.58億円 | +85.3% 増益(過去最高益) |
営業CF | +8.35億円 | 8倍近く急増 |
有利子負債比率 | 約59.1% | 高水準継続 |
現預金残高 | 15.6億円 | 前期末比+2.9億円(資金繰り安定) |
飲食事業の現在地
多業態×郊外戦略は成果か
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居酒屋・カフェ・レストランを中心に60業態101店舗(国内)+海外1店舗+FC8店舗
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主力業態は「芋蔵」「博多かわ屋」「ほっこり」「猿Cafe」など。近年は「吟醸マグロ」など少人数向け専門業態へ転換中
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2024年度は新規出店:清水PAなど4件/閉店:11店舗(うち7件を外部転貸)
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**既存店売上:前年比104.0%**と堅調だが、閉店・撤退費用(減損140百万円)も重しに
財務構造
借入・のれん・保証金に支えられた資産構造
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有利子負債:58億円超(総資産の59.1%)
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のれん:1.6億円(M&Aによる子会社取得)
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差入保証金:9.2億円(賃借物件依存体制)
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純資産:19.4億円(自己資本比率19.4%)
⇨ 財務の“見た目”は改善しているが、実態は「借入・のれん・保証金」で膨らんだ資産構造に依存している。
M&A戦略の功罪
ブランド獲得か、重荷の追加か
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2024年12月:エー・ラウンドを子会社化(地元型飲食業態)
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2025年1月:EOCクラシコ/ブレインなど3社を一括取得(東京中心バル展開)
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M&Aの“手数料負担”により第4Q利益を圧迫
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今後もバルや高単価レストラン等の取得が続く可能性
⇨ 中小M&Aによりブランド多様性は拡大するが、運営負荷/財務負担/統合リスクも同時に拡大。
不動産と「FC・転貸」モデル
非飲食収益の芽は育つか
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テナント保有:名古屋市内に4棟以上(EXIT NISHIKI等)
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直営閉鎖7店舗を外部に転貸 → 不動産収益化を進める流れ
- 不動産事業売上:4.2億円(前年比+8.3%)、営業利益:1.08億円(前年比▲19.0%)
⇨ 「撤退→転貸」の不動産化は良策だが、売上が縮小して利益構造が安定せず、中長期的な収益源としてはまだ未成熟。
個店主義の限界、そして多業態の未来
ジェイグループHDは、再び利益を回復し、M&Aでブランドを広げ、財務も黒字化した。
だが、その裏で構造的課題が静かに進行している。
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有利子負債は依然として高水準
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多業態による「統合負荷」が増大
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転貸モデルの利益化には時間がかかる
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出店数の増加が直ちに収益拡大には繋がらない
“個店主義”を貫くこの企業は、今後どこまで「店舗の統制」と「財務の健全化」を両立できるのか。
成長の裏側にある「拡大疲労」の兆候──その真価が試されるのは、次の四半期である。