【決算分析】株式会社ジオコード(第21期)

ジオコードの「Web×SaaS」戦略に陰る現実と課題

企業概要

株式会社ジオコードは、SEO対策・Web広告・サイト制作を一気通貫で提供する「Webマーケティング事業」と、営業支援や勤怠管理などのクラウド業務支援SaaSを展開する「クラウドセールステック事業」を二本柱に、東京・大阪を拠点として全国展開を図るDX系ベンチャー企業である。

創業は2005年、長年培ってきた検索エンジン対策ノウハウに加え、Web制作・広告運用・SaaS導入支援を融合させた“集客から業務改善まで”を包括的に支援できる点が強み。

主要プロダクトには、見込み顧客の育成・商談管理を一体化したCRM「ネクストSFA」、ICカードを活用した勤怠・交通費精算ツール「ネクストICカード」がある。

 業績サマリー

(第21期:2024年3月~2025年2月)

指標 実績 前年比・補足
売上高 15.8億円 +4.0%(微増)
営業利益 ▲2,508万円 赤字拡大(前年▲576万円)
経常利益 2,788万円 +24.9% 増益(営業外収益頼み)
当期純利益 1,673万円 +17.7%
営業CF +1.3億円 大幅増(前年+2,600万円)
投資CF ▲3.0億円 有価証券投資拡大が主因
財務CF ▲1.05億円 借入返済+配当支出
現預金残高 9.4億円 ▲2.8億円減少

赤字続きの本業と、営業外・金融収益に支えられた黒字計上という“ねじれ構造”。

セグメント別構造

本業は縮小気味、収益源は広告と金融投資

事業区分 売上高 利益 コメント
Webマーケティング 13.6億円 3.48億円 SEO伸び悩み/広告が牽引
クラウドセールステック 2.17億円 ▲1,009万円 利用増も赤字拡大
  • SEOを中心とする“オーガニックマーケティング”は新規案件が鈍化

  • Web広告は+31.3%成長でカバーするが、全体では利益減。

  • クラウド部門(ネクストSFA/ICカード)はユーザー獲得進むも赤字体質から脱却できず

財務構造

キャッシュは潤沢だが、投資が“財務圧”に変化

  • 営業CFは4倍近い伸び(売掛金回収+保証金受け取り)

  • 投資CFは▲3.0億円(有価証券取得に2.9億円
  • 財務CFは▲1.05億円(借入返済+配当)

➡ 「利益は薄くとも、現金はある」構造だが、成長投資=金融投資に寄った形が懸念材料。

支配構造と株主動向

“創業社長と持株会社”による二重構造

  • 筆頭株主:ディーグラウンド(原口社長が代表)、保有比率35.9%

  • 原口社長本人の直接保有:22.3%

  • 実質的に58%以上を創業者が支配

➡ この構造は「意思決定の速さ」という武器にもなるが、コーポレートガバナンス面での透明性課題を残す。

戦略の歪み

“SaaSで未来を取る”構想の限界か?

  • クラウド部門は前年比+19%増収だが赤字転落(▲1,009万円)

  • 投資回収を急ぎすぎた販管費増、採用費の先行が響く

  • 本業で稼げていない状況で、金融収益(配当金25百万円)で帳尻を合わせる構造

➡ 「SaaS企業のふりをした広告収益会社」になりかけているリスクが見える。

“広告依存とSaaS赤字”の構造転換を問う

株式会社ジオコードは、数字だけ見れば「成長して黒字」だ。

だがその中身を覗くと──

  • 営業利益は赤字拡大

  • 成長の牽引役はWeb広告

  • 期待されたSaaSは成長しても収益化できず

  • キャッシュの大半を金融投資に振り向け、次の一手が見えない

この会社は本当に「Web×SaaS」なのか。


「未来を取る」ためのクラウド投資は、いつまで“未来”のままでいられるのか。

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