
スマホ社会のID基盤”を志すベンチャー
企業概要
めぶくグラウンド株式会社は、自治体×デジタルID×データ連携基盤を主軸に据えるGovTechスタートアップである。設立は2022年、群馬県前橋市に本社を置き、地域主導型のDXインフラの構築をミッションとして掲げる。
主力事業は、本人確認・電子署名機能を備えた「めぶくID」と、それをベースとした「めぶくデータ連携基盤」「ダイナミック・オプトイン機能」の提供であり、同社は前橋市を筆頭に、北海道江別市、長崎県大村市など複数の自治体に導入実績を持つ。
でもまた、親会社であるグループ企業が主体となり、大阪・門真市でもサービス提供を展開中。
「スマホ時代のID標準を創る」──このテーマのもと、日本型デジタルアイデンティティのデファクト・スタンダード構築を目指す、きわめて意欲的な地域発企業である。
財務サマリー
(第3期中間:2024年9月~2025年2月)
指標 | 実績 | 前期比・補足 |
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売上高 | 3,110万円 | +166% 増収(前年比) |
経常損失 | ▲1.93億円 | 赤字継続(微改善) |
中間純損失 | ▲1.93億円 | 同上 |
純資産 | 1.30億円 | ▲0.79億円減少 |
自己資本比率 | 39.9% | 前期:47.3%から悪化 |
営業CF | ▲5,800万円 | 赤字だが資金消費は限定的 |
現預金残高 | 1.77億円 | 前期比▲0.61億円 |
➡ 開発投資フェーズによる赤字継続だが、財務的には一定の余力を維持。
事業の現在地
“ID×データ連携”の社会実装フェーズ
- 売上の86%は前橋市へのソリューション提供(前年100%)
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サービス構成:
①めぶくID(デジタル本人認証)
②データ連携基盤(アプリ間通信・API接続)
③ダイナミック・オプトイン(同意制御モジュール) -
2024年秋より「デジタル認証モジュール」の提供開始 → 民間企業アプリへのOEM組込が本格化
➡ BtoG(自治体向け)からBtoB(事業者向け)への橋渡し期に突入中
キャッシュと投資の構造
開発負担と流動性
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販管費+開発費負担による損失継続(今期も約2億円赤字)
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ソフトウェア等の無形資産:1.2億円超を保有
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営業CFは微赤字に留まっており、資金の延命は可能なレベル
➡ 資本政策・自治体以外からの収益多角化が、今後の命運を握る
株主構造と戦略性
自治体連携と地元資本の意味
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大株主:
①前橋市(A種株式100%)=議決権あり/配当・残余なし
②カネコ種苗、コシダカHD、ジンズHD、日本通信、群馬銀行ほか地元資本 -
A種株式は議決権を持ちつつ、配当・残余は制限 → “自治体による統治権”と“財務負担制限”の両立設計
➡ 自治体が筆頭株主というGovTechモデルならではの特異な支配構造
この赤字は、投資か、消耗か
「スマホで行政も、医療も、金融もつながる世界を」。
めぶくグラウンドは、それを現実にしようとしている数少ない国内プレイヤーだ。
だが──
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売上は伸びたが、赤字は縮小せず
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顧客はほぼ行政依存
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固定費増により、資金枯渇のリスクが近づく可能性
この赤字は、日本のID標準を創るための「種まき」なのか。
それとも、地域実証で終わる“スマートシティ・ローカル版”の限界か。
次の半年こそ、「民間連携」と「収益構造の可視化」が試される。