
新株予約権の行使と売却が交錯する“解体型投資”の構造
2025年6月11日、香港の投資ファンドAthos Capital Limited(以下、アトス・キャピタル)は、株式会社ヘリオス(証券コード:4593)に関する変更報告書を提出し、同社株式の保有割合が25.63%で変わらず維持されたことを明らかにした。
しかし注目すべきは、2025年6月4日に6,255,500株の売却を実施し、翌6月6日に3,000,000株相当の新株予約権を行使して普通株式として取得しているという“売却と希薄化を同時進行させる”動きである。
Athos Capitalとは?
短期×希薄化の戦略型ファンド
アトス・キャピタルは2011年に設立された香港拠点の資産運用会社であり、代表はフリードリッヒ・シュルテヒレン氏。
過去には複数の東証グロース市場銘柄に対し、低価格での新株予約権取得→希薄化→売却というスキームを通じて、短期的に流動性と価格上昇を狙う「戦略型キャピタルゲイン投資」で知られてきた。
日本では、法的に適法な開示と取得を行いつつも、投資家の間では“過度な希薄化リスク”や“モラルハザード的資本行動”として警戒される存在でもある。
ヘリオスとは?
再生医療の旗手、しかし資金調達難に直面
ヘリオスは、iPS細胞技術を活用した再生医療製品の研究・開発を進めるバイオベンチャーであり、長らく資金先行型の経営を続けてきた。
治験の長期化や赤字計上の常態化から、外部資本による調達依存度が高く、今回の新株予約権による調達もその一環と位置づけられる。
一方で、市場では「希薄化による株価低迷」「将来的な収益化の不透明性」といった懸念が根強く、継続企業の前提に関する注記が付されることもあった。
報告書が示す「2つの対極行動」
今回の変更報告書では、以下のような対極的な行動が記載されている。
- 【6月4日】市場内にて6,255,500株(発行済株式の5.35%)を売却
- 【6月6日】新株予約権の行使により3,000,000株を市場外で取得(1株あたり180円)
この結果、保有割合は25.63%で維持されたが、構成内訳は“現物の減少”と“新規発行株の希薄化補填”という極めて動的な内容となっている。
また、同社は依然として約1,245万株(約12.4%分)の新株予約権を保持しており、今後さらなる行使と売却を繰り返す可能性が高い。
“市場資本”の流動と道義のあいだで
Athos Capitalによる本件報告は、単なる株数変更の報告ではない。
それは「市場で売り抜けながら、発行体の新株引受でポジションを補填し続ける」という資本戦略の可視化であり、ヘリオスの資本政策と市場信頼性に対する根本的問いかけでもある。
投資家は今後、希薄化リスクと短期資本の動向、そして発行企業自身のガバナンスに対して、より高いリテラシーで対応する局面に入っている。