ダルトンインベストメント:センコーグループHD株式5.01%取得

【物流×資本政策に対する米系ファンドの視線】

2025年6月4日、米系アクティビストファンドDalton Investments Inc.(以下、ダルトン)は、センコーグループホールディングス株式会社(証券コード:9069)の株式8,793,900株を取得し、発行済株式総数の5.01%に達したことを大量保有報告書により開示した。

同社は、2025年3月末から5月末までの間に、60回近くに及ぶ市場内・外での断続的な買付を行っており、一部市場外取引では1株1,780円を超える単価でまとまった取得を実行している。

この“蓄積型”取得の背景には、同社の資本政策・株主構成に対する意識変化を促す狙いがあると見られる。

Daltonとは何者か?

株主価値重視のアクティビズムの実践者

ダルトンは米ネバダ州ラスベガスを本拠とし、日本市場における複数の企業に対して長期エンゲージメント型の投資を行ってきた運用会社である。代表者はJames B. Rosenwald III氏。

同社は、過去に昭和真空、富士通フロンテック、三菱製鋼などのPBR1倍割れ銘柄に対して増配提案やガバナンス改善を主張し、投資家からの信任を得てきた“対話型アクティビスト”の一角を担う存在である。

センコーグループHDとは?

物流機能の川上から川下まで

センコーグループは、トラック輸送・倉庫・港湾業務に加え、食品、建材、医療、日用品など多様な物流チェーンを網羅する総合物流企業である。

M&Aによる周辺事業拡大や、物流センターの高度化、AI・ロボティクスを活用したオペレーション改革など、変化に対応する積極的姿勢が評価されている。

一方、PBRは長らく1倍を下回り、内部留保の厚みや安定財務が市場から十分に評価されてこなかった経緯もある。

報告書の含意

“株主構造への静かな提起”

ダルトンによる保有目的欄には、以下の明確な意思が読み取れる:

  • 取締役会構成やガバナンス方針に関して、少数株主の意見を反映した独立社外取締役の選任提案の可能性
  • 増配や自己株買いなど、資本政策の変更要求
  • 株主価値最大化のための対話・提言の継続

取得資金はすべて顧客資金で構成されており(合計13.68億円)、機関投資家の投資判断としての“選別投資”であることがうかがえる。

今後の注目ポイント

  • ダルトンが株主提案権を行使するか(6月以降の株主総会)
  • センコーグループ側のIR活動や資本政策に対する変更有無
  • 他の機関投資家(国内外)の賛同・同調動向
  • 自己株取得・配当方針の変更等によるPBR1倍回復の兆し

物流企業への“対話資本”の到来

DaltonによるセンコーGHD株5.01%の取得は、物流という社会インフラを担う企業に対しても、資本効率・株主価値という尺度からの“再定義”が始まっていることを示している。

物流セクターにおいても、ガバナンスと資本政策を巡るグローバルな資本との対話が避けられない時代に入った──その象徴が、本件である。


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