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論評RONPYOIndependent Research
OPEN FILE決算分析論評編集部公開 2025.07.11更新 2026.06.13

第92期決算分析:森組

第92期(2025年3月期)の森組は、売上高・各段階利益がいずれも増加する一方、営業キャッシュフローが前期比で約49億円超の悪化を示し、現預金残高は半減した。利益計上とキャッシュ流出が同時進行するこの構造は、建設偏重・債権滞留という固有リスクの顕在化と見るのが自然だ。

売上高
294.5億円
前期比 +6.8%
当期純利益
9.2億円
前期比 +34.3%
営業CF
▲42.3億円
前期比 大幅悪化
自己資本比率
58.9%
前期比 +6.5pt

出典:株式会社森組 第92期有価証券報告書(2025年3月期)開示資料をもとに論評編集部が整理。

第1章

3期推移

旧記事に開示されている第92期(2025年3月期)の主要財務指標を整理する。前期の営業CFが+6.8億円であったことを踏まえると、当期の▲42.3億円は単年で約49億円超の振れ幅となり、利益水準の改善とは明らかに逆方向の動きが生じている。

指標 第92期(2025年3月期) 前期比
売上高 294.5億円 +6.8%
営業利益 10.8億円 +0.9%
経常利益 10.4億円 +1.3%
当期純利益 9.2億円 +34.3%
営業CF ▲42.3億円 大幅悪化(前期+6.8億円)
現預金残高 44.7億円 ▲53.3%
自己資本比率 58.9% +6.5pt

出典:第92期有価証券報告書(2025年3月期)。前期営業CF+6.8億円は旧記事記載値。

収益指標は軒並み増加しているが、現預金残高が前期比で半減し、営業CFが大幅なマイナスに転じた点は、利益と資金の動きが乖離していることを示す。こうした構図は、工事進行に伴う売上債権の膨張が主因であり、次章以降で詳述する。

第2章

セグメント

同社の事業は建設・砕石・不動産の3区分で構成されるが、実態としての収益は建設事業に極端に集中している。

セグメント 売上高 前期比 セグメント損益 備考
建設事業 287.7億円 +6.9% 利益 22.3億円(+10.2%) 売上全体の約97.7%
砕石事業 損失発生 生瀬砕石所の譲渡決定(2025年9月末予定)
不動産事業 0.32億円 損失 ▲0.18億円 規模・収益性ともに極小

出典:第92期有価証券報告書セグメント情報。砕石事業の売上個別数値は旧記事に記載なし。

建設事業内では公共:民間比率が43.5%:56.5%となっており、特に建築工事では民間比率が88.1%に達している。砕石事業は生瀬砕石所の譲渡決定により構造的撤退フェーズにあり、不動産事業は名目的な存在にとどまる。事業ポートフォリオのリスク分散が機能していない構造は、建設市況の変動が直接的に企業収益全体に波及する点で、注視すべき論点と見るのが自然だ。

第3章

キャッシュフローとの整合

第92期において最も重大な構造上の問題は、利益計上とキャッシュ流出の同時進行である。

項目 数値・変動
営業CF(当期) ▲42.3億円
営業CF(前期) +6.8億円
現預金残高(当期) 44.7億円(前期比 ▲53.3%)
キャッシュ減少の主因① 売上債権の増加 +19.9億円
キャッシュ減少の主因② 消費税の未払/未収ズレ +14.6億円
完成工事未収入金 153億円(総資産の60%超)

出典:第92期有価証券報告書キャッシュフロー計算書および貸借対照表。

利益が積み上がる一方で資金が消費される構造の背景には、完成工事未収入金が総資産の60%超を占めるという売上債権の集中がある。自己資本比率は58.9%と上昇しており、貸借対照表上の財務健全性は保たれているが、キャッシュフローの実態はこれと乖離している。この点を「B/S上の安定」と「C/Fの悪化」のどちらで評価するかが、当期決算の読み方の核心と見るのが自然だ。

第4章

運転資本と資産の質

完成工事未収入金153億円は、総資産に占める割合が60%超に達する。建設業においては工事完了から代金回収までにタイムラグが生じる構造は一般的であるが、この水準は回収リスクの評価を要する。売上債権の増加(+19.9億円)が営業CFの主因の一つとなっており、債権の回収期間や相手先の信用状況は開示資料のみでは把握しきれない。

また、消費税の未払・未収のズレ(+14.6億円)も一時的なキャッシュアウトとして機能しており、翌期以降の回収状況が焦点となる。

出典:第92期有価証券報告書。

第5章

財務と還元

項目 数値
自己資本比率 58.9%(前期比 +6.5pt)
1株当たり配当 14円
配当性向 49.8%
筆頭株主 旭化成ホームズ株式会社(30.3%)

出典:第92期有価証券報告書。

自己資本比率の上昇は利益蓄積に伴うものであり、財務基盤としての厚みは増している。配当は継続されており、性向は49.8%。ただし、営業CFが大幅なマイナスに転じた期にあっても配当を維持した点は、翌期以降の資金繰りとの整合を注視する必要がある。旭化成ホームズ株式会社が30.3%を保有する関連会社構造のもとでは、実質的な経営判断に親会社の意向が反映されやすい点も踏まえておくべきと見るのが自然だ。

第6章

論点の整理

第92期決算が提起する構造的論点を以下に整理する。

論点①|営業CFの急落は一過性か構造的か
売上債権の増加と消費税ズレを主因とする営業CF▲42.3億円は、翌期に債権が回収されれば一時的な悪化にとどまる。しかし、民間案件依存が高まるなかで回収条件が緩む傾向にあるなら、構造的な問題として継続するリスクがある。第93期の売上債権残高と営業CFが判断の鍵となる。
論点②|建設偏重と事業リスクの集中
売上全体の97.7%を占める建設事業への依存は、砕石事業の撤退・不動産事業の停滞により一層強まっている。民間建築案件への高い依存(建築工事の民間比率88.1%)は、景気変動や発注者の投資抑制に対する耐性を弱める。リスク分散の手段が実質的に存在しない構造である。
論点③|ガバナンスと親会社の関係性
旭化成ホームズが30.3%を保有する関連会社構造のもと、社外取締役2名(うち1名は大阪ガス系)という体制で、独立した経営判断がどの程度機能しているかは外部から確認しにくい。キャッシュ崩壊への対応スピードや砕石事業撤退の意思決定プロセスは、ガバナンスの実効性を問う試金石と見るのが自然だ。

出典:第92期有価証券報告書、株主構成・役員情報。

論点 → 質問状

この決算を、どう追うか

第93期の売上債権残高・営業CF回復の有無、および砕石事業譲渡(2025年9月末予定)完了後の財務影響を継続して記録する。建設事業における民間比率の推移と公共案件の獲得状況も注視ポイントとなる。

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