
レノ連合、フジ・メディアHD株15.06%保有
2025年7月8日、株式会社レノはフジ・メディア・ホールディングス(証券コード:4676)に関する変更報告書を提出し、共同保有体制下での株式保有比率が15.06%に達したことを公表した。
この報告は単なる株式の保有割合変更にとどまらない。提出文書の背後には、レノ、野村絢、エスグラント、CIFという“投資連合体”が密接に連携しながら資本的包囲網を敷いている構造が浮かび上がる。
本稿では、この動きの真意を資金供給、保有構造、統括権限の観点から解剖し、その“次の一手”を推察する。
共同保有比率15%超
今回の変更報告書に記載された共同保有者の内訳は以下の通り:
- 野村絢(個人投資家、シンガポール在住):20,984,800株(8.96%)
- 株式会社エスグラントコーポレーション:8,794,900株(3.76%)
- 株式会社シティインデックスファースト(CIF):5,492,500株(2.35%)
- 株式会社レノ:100株(0.00%、名義上)
合計で35,272,300株、保有比率は15.06%に達し、会社法上「重要提案行為」や「特別決議の阻止」が現実に視野に入る水準となった。
目的欄には「投資及び状況に応じて経営陣への助言、重要提案行為等を行う」と明記されており、明示的なアクションは未実施であるものの、“その気になれば動ける”ラインに踏み込んでいる。
野村絢を頂点とした資金構造
今回の報告書で最も注目すべきは、野村氏を中核とした資金供給ネットワークの実態である。
- 野村絢:自己資金47億円に加え、三田証券からの信用枠約2.8億円を利用
- エスグラント:野村氏からの個人借入含め、合計約26.3億円の信用・借入
- CIF:同様に約15.6億円を調達、野村氏からの資金流入を一部反映
この構造からは、野村氏が実質的な投資ファンドの“親玉”として、複数のビークル(SPV)を通じて支配権限とリスクヘッジの分散を図っている様子が透けて見える。
株式を保有しない“司令塔”としてのレノ
レノは今回、実質的な株式保有を行っていないにもかかわらず、報告書の全体連絡窓口・事務処理責任者として機能している。
- 連絡先・実務担当:レノ・高橋葉子氏
- 報告書提出主体:レノ
- 他者の株式取得・保有を一元管理する情報集約機能を果たしている
これは、レノが“直接保有せずに資本支配を統括する”というアクティビスト型プラットフォームとして進化していることを意味する。
今後、議決権行使助言、IR要請、ガバナンス提案などが行われれば、「保有ゼロで支配を得る」新たな資本主義モデルとして注目される可能性がある。
フジ・メディアHDの今後の対応次第で、市場の空気は一変する
今回の報告書は新株取得ではなく、「担保契約・信用ポジション変更」に関する形式的な修正に過ぎない。しかし、それは静かに構築された“持株連合の強化”を示す信号であり、次の行動=IR要求、株主提案、提携要求などがどのタイミングで起きるかに市場は注目している。
- 総会を控えたアクションの可能性(議案提出、役員候補擁立)
- 保守的なガバナンス体制への挑戦状としての意味合い
- 対抗勢力による“ホワイトナイト”の登場や提携構造の再編
「起点文書」は既に提出された。
変更報告書No.8は、単なる株式変更の届け出ではない。それは、フジ・メディアHDをめぐる資本攻防の“ステルス的開戦宣言”であり、レノ連合がどのような布陣・力学・戦術を持ち込むのかを見極める上での出発点である。
企業はこの文書を軽視すべきでなく、株主・市場はこの動きに警戒を怠るべきではない。