光通信がグリムス株5.03%を取得

通信キャッシュフロー企業が描く“非通信分野の静かな版図拡大”

2025年7月10日、通信系コングロマリットである光通信株式会社(代表:髙橋正人)は、再生可能エネルギー事業を中核とする株式会社グリムス(証券コード:3150)の株式を1,198,700株取得し、発行済株式の5.03%に相当する保有比率に達したと関東財務局に提出された大量保有報告書で明らかになった。

報告書によると、本取得は「純投資」が目的とされ、アクティビスト的な提案や経営介入の意図は示されていない。

しかし、取得の背景にある資金構造、買い集めのタイミング、対象企業のセグメント的特性を踏まえると、光通信が描く“次の非通信投資地図”の布石とも読み取れる。


グリムスとは何か

グリムスは、法人向け電力・ガス販売や再エネ発電に加え、近年ではエネルギー管理クラウド、IoT電力量計などを手掛ける“エネルギー×テクノロジー”の複合体である。

売上の大半は電力販売事業が占める一方、ストック型の顧客基盤(契約継続率95%以上)を有し、BtoB特化のLTV(顧客生涯価値)設計が強み。

特にPPAモデル(第三者所有型太陽光)やVPP(仮想発電所)といった再エネ×テック領域への投資姿勢は、今後の成長トレンドと親和性が高く、企業としての将来評価が高まりつつある。


光通信の狙い

光通信といえば、携帯販売や通信代理店事業をルーツに、キャッシュリッチな財務体質を活かして「無干渉型ファンド型投資」を繰り返してきた企業だ。

過去にはオービック、ジャパンベストレスキュー、JMDC、IBJなどの中堅成長株に相次ぎ資本参加し、どれも事業干渉をせずに長期ホールドしつつ、マーケットの成長とともに収益化を図ってきた実績がある。

今回のグリムス取得も、以下のような典型的特徴を備えている。

  • 市場内および市場外で分散的に取得(約2ヶ月間、累計40回超の取引)
  • 平均取得単価は2,300円前後で一貫性あり、明確な取得戦略が見える
  • 取得資金は全額自己資金(27億円規模)であり、レバレッジや外部調達はなし

これらは、光通信が中長期で同社の安定収益に着目していることを強く示唆している。


注目すべき市場的意味合い

光通信は、すでにエネルギーや介護、不動産テックなどの周辺業種にも資本介入している。

これらに共通するのは、「ストック収益モデル」「社会インフラ化する業種」「PBRが割安水準」の3点である。

グリムスはその全てを満たしており、光通信にとっては“通信収益に依存しない第2の財務安定エンジン”として育成可能なターゲットといえる。

また、光通信が取得直後に5%報告を行うケースは稀であり、今回は開示義務発生日(7月3日)から即座に提出されている点からも、マーケットの目を意識した“存在感の演出”が感じられる。


光通信は“沈黙型アクティビスト”か?資本プレゼンスの問い

光通信によるグリムス株5.03%取得は、これまでと同様「干渉しない戦略的保有」の一環と見られる。

しかし同時に、それは「沈黙」というスタイルの裏側にある“構造的プレッシャー”を孕んでいる。

PBR是正、資本効率の改善、株主還元の強化──こうしたキーワードに企業がどう応じるかによって、光通信の立場は「長期安定株主」から「静かな提案者」へと変化し得る。つまり、

投資の目的はあくまで“成長の共犯”か、それとも“評価の是正役”か──

今後、グリムスが光通信の存在をどうIRに反映させるか、あるいは何も触れないか。その選択が、“資本主義の圧”として企業の未来を大きく左右する可能性すらある。

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