
Web3テクノロジーズとの連携による資本再構成の布石
2025年7月9日、ネクスグループおよびその事実上の関係会社であるWeb3テクノロジーズは、CAICA DIGITAL(証券コード:2315)の株式7,431,466株を共同保有していることを変更報告書で明らかにした。
これは発行済株式の5.44%に相当し、法定開示ラインを上回る“戦略的ライン超え”である。
一見すると形式的な保有割合の報告変更に見えるが、背後にあるのはネクスグループを頂点とした“資本再編スキームの序章”だ。
Web3・FinTech・証券・システム開発といった領域を横断するCAICA DIGITALに対し、ネクス連合は「資本を通じて事業接続を図る」という、極めて現代的なクロスセグメント戦略を持ち込もうとしている。
「2社」ではなく「1組織」
保有比率の内訳は次の通り:
- ネクスグループ:749,534株(0.55%)
- Web3テクノロジーズ:6,681,932株(4.89%)
- 合計:7,431,466株(5.44%)
表面上は2社による共同保有に見えるが、両社は設立経緯から密接に接続されており、実質的には「ネクスによる株式スピンオフ+保有温存」の構図といえる。Web3テクノロジーズはネクスの新設分割によって2022年に設立され、代表取締役も両社ともに石原直樹氏が務めている。
つまり、これは「外形的には別法人だが、実質的には1つの資本戦略エンジン」として機能する体制である。
自己資金と“内部流動資金”の交錯
ネクスグループの749,534株の取得に要した資金約5,096万円は、以下の2者からの借入で賄われている
- 株式会社ネクス(親会社)から4,000万円
- 実業之日本デジタルから1,096.8万円
つまり、ネクスグループは外部資金調達ではなく、グループ内循環型融資によって“内部で完結する資本戦略”を組んでいることがわかる。
一方でWeb3テクノロジーズは「自己資金により取得」と記載しているが、そもそも同社が保有する株式は設立時の“ネクス保有分のスピンアウト”であり、その資本源流はネクスにある。
この点を踏まえると、7.4百万株に及ぶ保有比率はネクスの意思によって集中管理されていると見るべきである。
保有目的と“建前と布石”の分岐点
今回の報告書では「中長期的なシナジーの観点からの純投資」であり、「重要提案行為の予定はない」とされている。
だが、CAICA DIGITALの中核事業が証券、ブロックチェーン、暗号資産、システム開発と広範であり、
- Web3テクノロジーズ:分散型台帳、DeFi領域
- CAICA:証券システム開発、金融DX
といった形で業種的シナジーはきわめて明確である。
よって、「今はまだ提案しないが、必要があれば即時介入可能な体制」であると解釈するのが妥当だ。
“静かな買収の起点”か
今回の報告書は、保有構造の整理に見える。しかし、以下の点で資本支配の本格化が進む兆候がある。
- 今後さらに5%→10%→20%と段階的に取得比率を高め、CAICAを連結対象または関連会社化する可能性
- 株主提案(役員選任、定款変更)を通じた経営干渉の足がかり
- CAICAの金融事業部門とWeb3テクノロジーズとの“統合再編”による事業譲渡・吸収の布石
“ネクスによるCAICA資本包囲網”が水面下で始まった
今回の保有報告は、形式的には変更報告に過ぎない。
だが実質的には、ネクスグループがCAICA DIGITALに対し“構造的な連携体制を前提とした包囲型資本スキーム”を着々と構築している証左である。
特に注目すべきは、事業提携やM&Aではなく「株式の保有と維持」から始める静かな支配モデルである。
これは、従来型の買収・TOBではなく、金融ブロックチェーン時代における“制度内包型の支配構造”を表現する先進的ケースといえるだろう。