Ado、北浜キャピタル株を“段階的に現金化”

新株予約権を使った希薄化型資本循環スキーム

2025年7月7日、株式会社Adoは、北浜キャピタルパートナーズ株式会社(証券コード:2134)に関する大量保有報告書(変更報告書No.42)を近畿財務局に提出し、保有比率が25.67%から24.03%に低下したことを開示した。

一見するとわずかな比率減少に見えるが、報告書の詳細を精査すると、新株予約権の短期消化・転換・売却の反復操作が執拗に続けられており、Adoが仕掛けてきた“資本スキームの出口”を意味する重要な転換点となっている。


17円取得→即日売却の高速オペレーション

報告書には以下のような複数の取引が記載されている

  • 【5月16日】2,500,600株市場内で処分
  • 【5月26日〜6月26日】新株予約権66,700,000株分を0.05円で取得
  • 同数の普通株を17円で市場外取得→即日売却

このように、新株予約権→株式転換→即時市場処分という一連の資本トランザクションを日次ベースで反復し、1ヶ月間で最大12%相当の浮動株化を引き起こしている。

これにより、Adoの保有比率は25.67%→24.03%へと縮小したが、表面下では数千万株規模の株式が“市場に放出された”事実が見逃されてはならない。


新株予約権ビジネスの終焉か、それとも再布陣か

Adoのこれまでの北浜キャピタルへの関与は、典型的なPIPEs型ファイナンスと事後換金モデルを組み合わせたものである。

  • 過去複数回の増資で大量の新株予約権をAdoが取得
  • 低価格での転換(17円)→市場で段階売却
  • 株式報告書上では保有比率を維持しつつ、実質的に“現金化→離脱”の出口戦略

今回の報告では、報告義務の生じる1%超の減少を初めて明示的に開示しており、スキーム解体フェーズへの移行=資本戦線の後退という構図が明らかになっている。


❸ 株式会社Adoとは

株式会社Adoは、2020年代以降、大阪を拠点にM&A仲介、ファンド組成、不動産証券化などを手がける“地場密着型のファイナンスアーキテクト”として台頭。

代表の佐々木康裕氏は、北浜キャピタルとの関係において

  • 増資引受・IR設計・株式換金に関与
  • 実質的な資本パートナーとして内部に食い込む構造を構築

として機能していた。だが今回の報告では、「純投資」「提案行為なし」と明記されており、関係性の希薄化と再構築の可能性を想起させる局面にある。


保有24%ラインの“意味”と処分の行方

保有比率24.03%という数字は、会社法上の特別決議拒否権(3分の1)を下回る一方で、重要提案権(3%〜)や株主議案提出権は保持できるラインでもある。

今後の焦点は

  • Adoが残る株式を段階的に売却するのか、それとも一時保有で静観するのか
  • 株価や流動性、IRの反応次第で再度“スキーム投資”を仕掛けるか
  • 他ファンドや企業との連携による“株主主導型再編”への発展可能性

という観点から、市場・企業・株主はこの報告書を“スキーム終結”と見るのか、“新フェーズへの移行”と見るのか、重要な分水嶺に立たされている。


Adoのキャピタルアーキテクチャは、資本構造の“動線”を示している

今回の報告書は、単なる比率減少ではない。それは、予約権スキームの反復と流動化という極めて現代的な資本流動手法の終息点を示唆する。

Adoが構築してきた資本戦略は、買い占めでもアクティビズムでもない。「希薄化型スキームを用いた静かな支配と離脱」である。

そして今、その構造は再び市場のなかで“誰が残るのか、誰が拾うのか”という問いを投げかけている──それは、株式という形式の裏側で行われる、現代資本主義の設計力の問題である。


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