ストラテジックキャピタル、ノリタケ株5.10%取得

“PBR是正圧力”の本丸へ

2025年7月17日、アクティビスト系ファンドの雄として知られる株式会社ストラテジックキャピタル(代表:丸木強氏)は、ノリタケカンパニーリミテド(以下、ノリタケ)株式を1,481,600株、発行済株式総数(29,034,398株)の5.10%保有していることを開示した。

報告書には「純投資および状況に応じて重要提案行為を行う」と記されており、これは実質的なアクティビスト宣言である。

しかもノリタケは、PBR0.5倍台・キャッシュリッチ・非効率な資本政策という典型的なターゲット特性を備えており、本件は「制度とガバナンスの接点に現れた緻密な戦略投資」と捉えるべきだ。


報告書から見える取得スキーム

わずか2ヶ月で5.1%を積み上げた高速取得

報告書によれば、ストラテジックキャピタルは2025年5月12日から7月10日までの約2ヶ月間で、以下の通り市場内外で合計1,481,600株を取得している。

  • 市場内取得:1,429,900株(97%超)

  • 市場外取得:51,700株(主に5月~6月のスポット取引)

  • 取得単価:平均3,600円台前半(市場外取得に基づく)

このような短期間かつ着実な累積は、株価水準・流動性・時価総額を精査しながら、報告義務ライン(5%)直前まで分散取得したアクティビスト特有の“ステルス戦略”の典型といえる。


保有目的の記載

本報告書でストラテジックキャピタルは、保有目的を以下のように明記している:

「純投資および状況に応じて重要提案行為等を行うこと」

この文言は同社が用いる標準的表現であり、以下のアクションを含意している。

  • 議決権行使助言(取締役選任・剰余金処分等)

  • ガバナンス改善提案(社外取締役比率・取締役会構成)

  • 自己株式取得拡大提案(PBR是正とROE向上)

  • 定款変更・配当方針の修正提案

つまり、ストラテジックキャピタルの投資スタンスは「沈黙型ではなく、制度に基づく“明示型影響力行使”」であり、株主提案や総会での可視的行動を前提にした参加型資本運用である。


ノリタケとは

財務の堅さが“アクティビスト誘引磁場”となる企業

ノリタケは、セラミックス・研磨材・エンジニアリング素材などを手がける老舗企業グループの中核であり、以下の特徴を備える

  • 時価総額:約1,000億円(2025年7月現在)

  • 自己資本比率:約70%超

  • 現預金:約900億円(2025年3月期末)

  • 有利子負債:ゼロ水準

  • PBR:0.55〜0.60倍と長期的に1倍未満

これらの数値は、東証がPBR是正を求める「資本効率の低い企業像」に完全に一致している。特にノリタケは

  • 自己株取得を抑制

  • 株主還元政策は保守的(配当性向30%未満)

  • 投資家向け説明は年1回に限られ、IR活動は限定的

という“ガバナンス緩和銘柄”であり、制度適合型アクティビストから見れば「改革余地の宝庫」と映る。

資金源構造──“顧客資産を使った構造的アクティビズム”

報告書では、取得資金の内訳が以下のように示されている

  • 自己資金:352千円(=わずか0.01%)

  • 投資一任契約に基づく顧客資産:5.29億円(実質全額)

この構造は、ストラテジックキャピタルが

  • 投資信託等を通じて一般投資家から委託された資金を活用

  • 顧客資産を用いて制度に則ったアクティビズムを展開

  • 「個人アクティビスト」ではなく「受託者責任型の制度アクティビズム」

を実践している証左である。企業改革を顧客資産で支えるという仕組みの可視化は、金融業界全体にも新しい意味を持つ。


“明示型アクティビストの制度出撃”が始まった

ストラテジックキャピタルによるノリタケ株5.10%取得は、制度・ガバナンス・資本市場の三者の狭間にあって、「制度適合型アクティビズム」の実践例として歴史に刻まれる可能性を持つ。

  • 表向きは“純投資”

  • だが中身は“構造提案型の経営参加”

  • 株価には“PBR1倍回帰”への圧力がかかり、

  • IR戦略には“透明性拡大”が求められる

静かに見えて、その本質は“問うアクティビズム”。ノリタケの経営陣がこの提案を無視するか、応えるか──その選択が今、問われている。

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