
1株0.61円の第三者割当、その構造を読み解く
2025年7月23日、RIHUAXING INVESTMENT LIMITEDは、環境フレンドリーホールディングス(以下、EFH社)の株式に対する保有割合が6.46%に達したとして、大量保有報告書を関東財務局へ提出した。
さらに翌24日には訂正報告書を提出し、保有株券の数値が「20万株 → 2,000万株」への訂正とされたことで、案件の性質は一変する。
この保有は、1株あたり0.61円という異常な低価格の第三者割当新株予約権(行使価額)によって形成されたものであり、EFH社の資本政策の中核に、海外籍のプレッシャー資本が密かに入り込んでいることが明らかとなった。
提出者は何者か
英領バージン諸島の“匿名資本構造”
報告書によれば、提出者であるRIHUAXING INVESTMENT LIMITEDの概要は以下の通り
-
設立:2017年2月22日
-
所在地:英領バージン諸島(トルトラ島、ポートパーセル)
-
代表者:Chen Bin(チェン・ビン)
-
業態:株式投資
- 日本国内窓口:AZ MORE国際法律事務所(東京都千代田区)
設立から7年余りの同法人は、「自己資金による株式投資」を掲げており、借入・レバレッジは使用されていない。
しかし所在地や代表者、取引の性質から判断するに、本件は単なる財務投資ではなく、“制度を活用した資本影響力の獲得”を目的とする構造資本である。
問題の取得方法
1株あたり0.61円、新株予約権による取得スキーム
訂正報告書によると、RIHUAXING社は2025年5月30日付で、EFH社の第三者割当による新株予約権を市場外で取得。その内容は以下の通りである。
-
発行数:20,000,000株分の新株予約権
-
割合:発行済株式289,756,980株に対する6.46%
-
取得価格:1株あたり0.61円(1個61円/100株分)
これは、市場価格との乖離が著しく大きく、資本政策上の公正性や株主価値の希薄化への懸念を抱かせる設計である。
さらに、このスキームは通常の転換社債やMSワラントと異なり、「短期間かつ一括行使」で支配比率を形成可能な“直線的資本注入構造”となっている点に注意が必要だ。
資金構造と報告スキーム
自己資金1,220万円で6.46%を取得
報告書では、RIHUAXINGがこの取得に投じた資金は以下の通りである。
-
取得資金合計:12,200千円(≒1,220万円)
-
資金源:全額自己資金
-
借入・ファンド資金:ゼロ
つまり、EFH社の資本に6.46%という決定的な影響力を与えるために、わずか1,220万円で支配的地位が構築されたという構図になる。
この事実は、EFH社の資本政策が、“小資本でも影響力が持てる緩さ”を制度的に許容していることを意味している。
EFH社の構造的脆弱性
繰り返される外資割当と株価構造の希薄性
環境フレンドリーホールディングスは、もともとPBR・PERともに市場基準を大きく下回る“資本不全型上場企業”であり、過去にも以下のような構造的特徴を持つ。
-
自己資本比率:低位安定
-
IR:イベント性・材料性依存
-
希薄化率:度重なる第三者割当で常に株数増加
-
株価:数十円レンジで推移、機関投資家の参入は限定的
その中で今回のような「自己資金1,000万円台での6%超取得」は、日本の資本市場における制度的ガバナンスの綻びを象徴しているとも言える。
「見えない支配者」が割安上場企業の内側へ
RIHUAXING社によるEFH株の6.46%保有は、単なる“バイ&ホールド”ではなく、日本の制度を熟知した海外プレイヤーが、少額資本で制度内支配を獲得するための実例である。
その構造は「静的アクティビズム」に近く、提案行為や経営介入がなくとも、IR、ファイナンス、M&Aの場面で影響を及ぼすポジションとして機能し得る。
かつてMSワラントやTOBが主戦場だった資本戦略の最前線は、いま“0.61円”の新株予約権に宿っている──そのことをこの報告は突きつけている。