
日本最大級の運用会社
アセマネOneの本質的な投資スタイル
アセットマネジメントOne(通称「アセマネOne」)は、みずほフィナンシャルグループと第一生命ホールディングスの資産運用部門を統合して生まれた、日本最大級の資産運用会社である。
国内外の機関投資家や年金基金の資金を受託し、インデックス投資からアクティブ投資、さらにはESG戦略に至るまで、幅広いスタイルを持つ。
今回、アセマネOneが大量保有報告書を提出したのは、ECプラットフォーム「BASE」を運営するBASE株式会社(4477)。
その内容は、市場における“静かな監視”の始まりを示すものと受け取られる。
報告書の概要
“静かにして、確かに”積み上がった5.05%
提出された報告書によれば、アセットマネジメントOneは、**BASE株5,955,000株(5.05%)**を保有していると報告している。
注目すべき点は以下の通り
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報告義務発生日:2025年7月31日
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提出日:2025年8月7日
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発行済株式総数:117,821,657株(2025年7月31日時点)
- 保有目的:投資信託または投資一任契約に基づく運用の一環
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特例対象報告(共同保有扱いではない)
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信用取引・担保設定等:該当事項なし
このように、形式的には「純投資」かつ「受託運用」として定義されているが、その実、アセットマネジメントOneの保有は、市場構造における“沈黙の存在感”を体現している。
BASEという企業
ポテンシャルと市場評価のギャップ
BASEは、「誰でも簡単にネットショップが作れる」という低障壁型ECプラットフォームで成長してきた企業である。
しかし、上場後の株価は乱高下を繰り返し、近年は次のような構造的課題を抱えている。
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利益体質への移行が遅れている(黒字化と赤字の往復)
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広告依存や手数料収入の変動性が高い
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成長性の割にPBRが割高/割安と評価が分かれやすい
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EC市場の競争激化により中長期の展望が読みづらい
こうした不確実性の中で、アセマネOneのような長期・制度重視型の投資家が参入するということは、単なる短期の値幅狙いとは異なる“構造的な賭け”を意味している。
5.05%の“戦略的ピンポイント”
制度ラインを巧みに突く構造
保有割合は5.05%。これは偶然ではない。
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5%を超えることで大量保有報告書の提出義務が発生
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議決権に基づく“意思表明可能な水準”としての閾値
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6ヶ月以上の保有で株主提案権の行使も理論上可能
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しかし「提案・対話は現段階ではしない」という立場を維持
つまり、これは「沈黙を保ちながら、制度の中に配置された圧力構造」と読み取れる。
今は見守るが、必要とあらば声を上げる準備はある──そんなポジショニングである。
構造改革と市場統治の“変革は静かに始まる”
アセットマネジメントOneによるBASE株の5%超保有は、短期売買でも、アクティビストのような劇的な動きでもない。
だがそれこそが、“変化の芽”である。
資本構成に静かに介入し、企業に対して「あなたたちの動きは、確実にモニタリングされている」という構造的プレッシャーを与える──それが、日本型ガバナンス改革の現在地なのだ。
BASEは、この沈黙の背後にある意志をどう受け止めるのか。資本効率・収益性・株主対話の在り方に、本当の変革をもたらせるか。
答えは、これからのIR方針と株価に現れてくるだろう。