
Capital Groupの“揺れる静圧
アクティブ・ジャイアントの本性
Capital Groupとは何者か?
Capital Group(キャピタル・グループ)は、1931年設立、運用資産規模約2兆ドル超を誇る世界最大級のアクティブ運用会社である。今回はその運用主体である複数の法人──
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Capital Research and Management Company(米・LA)
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Capital International, Inc(米・LA)
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Capital International 株式会社(東京)
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Capital International Sarl(スイス・ジュネーブ)
──の4社連名で、株式会社マネーフォワードに対する保有状況の変更報告書(No.16)を提出している。
減少の構図
5.58%に縮小した“静かな後退”
今回の報告書における最大の注目点は、保有割合の減少である。
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前回報告時点(2024年):6.19%
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今回(2025年7月31日時点):5.58%(▲0.61ptの減少)
保有株数は3,097,836株で、発行済株式数55,520,779株に対してこの割合となる。
最大保有者であるCapital Research and Management Company(米国)の保有が最も多く、2,618,636株=4.72%を占めている。一方で、以下のように他のグループ会社の保有比率は微増・微減の範囲に収まっている。
保有者名 | 株数 | 保有比率 |
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Capital Research & Mgmt Co. | 2,618,636株 | 4.72% |
Capital International, Inc | 138,000株 | 0.25% |
Capital International 株式会社 | 249,100株 | 0.45% |
Capital International Sarl | 92,100株 | 0.17% |
マネーフォワードをなぜ“削った”のか
潜むリスクと期待の乖離
マネーフォワードはSaaS型の会計・経理クラウドを提供し、成長株として注目されてきた。
しかし、以下のような“構造的な懸念”も根強い。
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営業赤字が続き、黒字化の達成は2026〜27年以降と想定されている
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会員数の伸びと売上は堅調だが、LTV(顧客生涯価値)/CAC(顧客獲得コスト)比率が業種平均よりも低い水準にある
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M&A戦略が加速しており、のれんの増加や希薄化リスクへの懸念
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株価は2023年をピークに冴えない横ばい圏で推移
こうした状況で、大型アクティブ運用ファンドが一部利確やリバランスを行ったとしても不思議ではない。
実際、過去のCapital Groupの行動を見ると、業績の成長加速が見えない銘柄については「5%以上は維持しつつ段階的に比率を縮小する」傾向が見られる。
5%ラインを維持する意図
“沈黙の戦略的残留”
とはいえ、Capital Groupが完全に撤退しているわけではない。
5.58%という数字は、あくまで「報告義務を維持しつつ、議決権行使や株主提案を封じられないライン」に意図的に留まっている印象を与える。
この保有比率であれば、
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株主提案権(会社法303条)に基づく提案が可能(6ヶ月保有前提)
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株主総会における議案への影響力を持つ規模
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IR部門や経営陣への“間接的な統治圧力”として機能
つまり、今回の報告書は「一歩退いたが、目は離していない」というCapital Groupの明確なメッセージでもある。
統治される企業、監視する資本
“行動しない”が最大の戦略になる時代
この変更報告書は、単なる株式保有比率の増減の記録ではない。それは、グローバル資本が日本の成長企業にどのような期待を抱き、どこでそれを取り下げ、どこに残留するかという“戦略の羅針盤”である。
マネーフォワードは今、資本の視線にどう応えるのか──
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成長の証明として、黒字化への確実な道筋を示せるか?
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株主価値の最大化に向けたIR・資本政策を強化できるか?
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統治の質と透明性を外資の期待にどう応えるか?
すべては、株主総会と次の決算で明らかになる。