Gold Pacificの再登場、フォーシーズHD資本政策の構造的盲点

再び浮上する香港籍ファンド

Gold Pacific Globalとは何者か

2025年8月5日、関東財務局に提出された変更報告書が静かに波紋を広げた。提出者はGold Pacific Global Limited(香港・クオリーベイ)

代表は川瀬篤氏、2003年に設立された“投資業”を営むオフショア法人だ。

既報のとおり、同社は過去から幾度となくフォーシーズHDへの関与を深めており、2024年・2025年を通じて段階的な保有比率の上昇が確認されている

このたびの報告は、さらに1%超の保有増加を経て、ついに発行済株式の20.96%を取得したという内容である。

0.48円の新株予約権

信じがたい価格設定の意味

報告書には、新たに新株予約権(705,000株分)を市場外で取得したことが明記されている。取得日は2025年6月30日、単価はわずか8.49円。

だが、ここで注目すべきはこの価格の内訳である。

  • この予約権の行使価格は、過去の取得事例では「0.48円」だった前例があり、

  • 今回の予約権も「0.48円」と推定される可能性が極めて高い(=資金調達契約と連動)

仮にこの705,000株を行使した場合、その保有総数は2,636,300株。直近の発行済株式数12,577,670株に対し、20.96%の保有比率に達することになる。

つまり、わずか約89万円の出資で企業の5分の1を支配可能な構造が、制度の中で合法的に成立してしまっているのだ。

フォーシーズHD側の構造的な資本政策の緩さ

フォーシーズHDは、外食・ライフスタイル事業を手がける企業だが、近年は以下のような資本政策を展開してきた。

  • 2019年以降、連続的な第三者割当・新株予約権発行を実施

  • 2023年度決算でも大幅赤字(経常損失▲4.7億円)を計上

  • 2024年〜2025年の中間決算でも営業利益は赤字続き

  • 有利子負債依存と、現金流動性の逼迫が続く

こうした背景から、同社は資本調達の選択肢として、希薄化を受容する代替策に依存する構造となっている。

これが、Evo FundやGold Pacificといった“オフショア支配型”のファンドを呼び込む結果となっている。

制度的には合法

だが、支配構造は誰のものか?

大量保有報告書には「純投資」「重要提案行為なし」と記載されているが、下記の構造を見れば単なる投資とは思えない。

項目 内容
保有株数(現物) 1,931,300株
保有株数(予約権行使後) +705,000株
合計 2,636,300株(20.96%)
資金源 自己資金896万円
借入・融資なし リスクヘッジやファンド圧力の制限不明

このように、合法的に企業の5分の1を「ローリスク・ローコスト」で支配する構造が制度内で容認されている現実は、投資家にとっても制度設計者にとっても“問い直すべき問題”である。

制度の影に潜む「外資支配型の資本政策」

投資家の視点から考えるべきこと

Gold Pacificの保有比率は、まもなく1/3(特別支配株主ライン)に迫る可能性すらある。これは以下のような問題を提起する:

  • 株主総会の特別決議が不要なまま、企業の意思決定に影響を与える水準

  • 買収防衛策がない企業では、敵対的支配と見做されかねない

  • 株価が上昇した場合、わずかな原資で巨額の利益がファンドに帰属する構造

そしてこれは、「違法」ではない。「合法」だ。

合法だからこそ、“問題の本質は制度の内側にある”のだ。

フォーシーズHDのような赤字企業は、今後もこの種の支配構造に置かれる可能性が高い。これは、個別企業の問題ではない。日本市場全体が孕む構造リスクである。

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