fundnoteが豊和工業に突きつけたIR・ガバナンス改善要求

ファンドノート(Fundnote)とは

台頭する独立系運用会社の新しい顔

fundnote株式会社は、2021年設立の比較的新興の独立系投資運用会社である。

拠点は東京都港区、代表は渡辺克真氏。

第二種金融商品取引業および投資運用業の登録を持ち、主に投資信託の資産運用を行う運用主体として近年存在感を増している。

今回の報告書では、実質的な助言者として「Kaihou」という名も登場しており、投資判断・スチュワードシップ対応の実務はKaihouの助言に基づいて行われているとみられる。

特徴的なのは、「受益者利益の最大化」「建設的な対話の促進」「ガバナンス改善とIR高度化」など、典型的な日本版スチュワードシップ・コードの実践事項を正面から掲げている点である。

報告の要点

5.66%、IRとガバナンスへの対話要求を構える

2025年8月22日、fundnoteが提出した大量保有報告書の要点は以下の通りである。

項目 内容
保有株数 710,500株
発行済株式数 12,548,134株
保有割合 5.66%
報告義務発生日 2025年8月15日
保有目的 投資信託の信託財産としての運用。必要に応じて重要提案行為への変更あり
助言者 株式会社Kaihou
対象企業 豊和工業株式会社(6203)

注目すべきは、当初の保有目的が“対話重視”のスチュワードシップ型である一方で、報告書中には明確にこう記されている。

「受益者の利益を保全するために、保有目的を“重要提案行為を行う”に変更する場合がある。」

つまりこれは、“対話で動かせなければ、提案に移行する”という強い姿勢の表明であり、制度上の最大自由度(5%超)を行使可能な状態で保有していることがポイントである。

豊和工業とは

戦後機械・防衛産業の“静かな重鎮”

豊和工業は、戦後の航空機技術の流れを汲む重機械・工作機械メーカーであり、防衛省向けの銃器製造(機関銃など)や工作機械のOEM供給などを主力とする。

近年は以下のような状況に置かれている。

  • 防衛関連予算の増加に伴い、事業機会は拡大傾向

  • だが、ガバナンスや資本政策、IR情報が極めて限定的であり、市場評価が割安

  • PBRは0.6〜0.7倍台で長年放置

  • 配当性向・総還元性は不明瞭で、アナリストカバレッジも限られている

fundnoteが狙うのは、まさにこうした“動きづらく情報発信の乏しい中小製造業”に対し、スチュワードシップの名の下に企業価値の可視化と資本効率改善を迫ることにある。

この報告が突きつけるもの

“対話”か“提案”かの分水嶺

この保有報告は、現時点では「提案を行う」状態にはない。しかし、報告書に明記されたように、必要があれば“提案行為へ移行する”と宣言されている

つまり、豊和工業に対して次のようなアクションが今後想定される。

  1. IR部門との面談を通じた対話開始(ESG対応・資本政策のヒアリング)

  2. 改善がなければ、総会提案(ROE目標、社外取締役の拡充、配当性向引上げ)

  3. 保有比率のさらなる引き上げと他ファンドとの協調の布石

このように、「スチュワードシップ」という名の“緩やかなアクティビズム”が、豊和工業という旧来型企業に突きつけたメッセージは明確である。

静かなる圧力

fundnoteが体現する“日本型アクティビズム”の次の波

fundnoteは、オアシスやエフィッシモのような急進的なアクティビストとは一線を画す。

だがその戦略は、制度上の正当性と透明性を携えて、対象企業に改革の契機を与える点において、極めて“正統的”なアクティビズムである。

変わらなければ、対話は提案に変わる。

この報告は、豊和工業にとって“5.66%の存在”が、単なる数字ではないことを突きつけている。

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