日本宇宙ベンチャー”に資本集中

グローバル・ブレインが12.04%を握る理由とは

アクセルスペース

宇宙産業のフロントエンドに立つ日本発スタートアップ

アクセルスペースホールディングス(402A)は、人工衛星の設計・打ち上げ・運用から、宇宙データの取得・解析までを一貫して提供する、日本有数の宇宙系スタートアップだ。

主な事業モデルは以下の通り

  • 超小型衛星による高頻度地球観測(AxelGlobe)

  • 顧客向け衛星提供(AxelLiner)

  • データ解析を軸としたSaaS型ソリューション

2023年のIPO後、企業や自治体との連携を拡大しつつあり、特にスマートシティ、防災、農業、金融等の分野で利活用が進んでいる。

国産衛星×サブスクリプションというモデルは海外でも珍しく、国内外のファンドが注目するテーマ性を有する。

グローバル・ブレインとは

国内スタートアップ支援の中枢ファンド

今回提出された報告書の主役であるグローバル・ブレイン株式会社は、日本を代表する独立系ベンチャーキャピタル。以下のような特徴がある。

項目 内容
設立 1998年1月
代表 百合本 安彦(Yasuhiko Yurimoto)氏
本社 東京都渋谷区渋谷二丁目17番1号
主な投資先 SmartHR、freee、メルカリなど多数
運用形態 GPとして自社ファンドを多数保有し、事業会社CVCとも連携多数

今回の保有は、同社が直接または無限責任組合員として運用する6本のファンドを通じた実質的な合算持株である。

報告書の中身

12.04%、7,712,200株の“戦略的包囲網”

報告書によれば、グローバル・ブレインはアクセルスペースの株式を7,712,200株(発行済の12.04%)保有している。

保有目的は一貫して「純投資(投資事業有限責任組合契約に基づく組合財産の運用)」とされているが、その内訳が戦略的だ。

【ファンド別の保有内訳】※括弧内は株数

  • YMT-GB投資事業有限責任組合(879,400株)

  • EP-GB投資事業有限責任組合(861,800株)

  • AH-GB未来創造投資事業有限責任組合(319,400株)

  • 日揮みらい投資事業有限責任組合(319,400株)

  • 富国-GB投資事業有限責任組合(319,200株)

  • SMBC-GBグロース1号投資事業有限責任組合(5,013,000株)

合計:7,712,200株(保有比率12.04%)

そのうち5,013,000株は、SMBCベンチャーキャピタル・マネジメント株式会社との共同GPファンドによる保有である。

売却制限とロックアップの重層構造

“資本の固定化”で何を守るか

本報告書の注目点は、極めて複雑かつ厳格な売却制限(ロックアップ)条項の存在だ。

▍主な制限項目(抜粋)

  1. SMBC日興証券との契約
    AH-GB未来創造、日揮みらい、富国-GBの3組合については、2025年11月10日まで売却制限付き。

  2. 発行者(アクセルスペース)との契約
    YMT-GB、EP-GB、SMBC-GBグロース1号の3組合については、上場後6ヶ月間(〜2024年6月末)売却不可契約

    ただし例外条項あり(経営悪化時など)。

これは、短期的な換金目的ではなく、中長期にわたって資本構造の安定性を確保する意図があることを意味する。

とりわけ「国策・インフラ化」していく可能性が高いアクセルスペースにおいて、無秩序な株式売却による混乱を防ぐバリアとして機能している。

今後の焦点

グローバル・ブレインは“投資家”か“共創者”か

現時点では「重要提案行為なし」とされているが、今後以下の展開も視野に入る。

  • アクセルスペースとのJV・共同開発プロジェクト

  • 都市データ/インフラ/建設業界との“衛星×地上”連携事業

  • 将来的な資本提携・追加出資・CVC連携型の事業創造

グローバル・ブレインは単なる金銭的リターンだけでなく、「事業の共創者としてのポジション」も構築しているように見える。

12%の保有は“出口”ではなく“入口”

宇宙インフラ投資の新潮流

今回の大量保有報告書は、いわばアクセルスペースが「次のフェーズ=社会インフラとの統合」に突入したサインとも言える。

  • ベンチャー支援ではなく“宇宙×社会×資本”の三層構造

  • グローバル・ブレインの“出資は終わりでなく始まり”

  • 日本発の宇宙産業に、いま資本秩序の構築が始まった

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