
SilverCapeの視線は何を狙うのか
ヤマトインターナショナルとは
“クロコダイル”で知られる老舗アパレルの再構築期
ヤマトインターナショナル(8127)は、大阪を拠点とする総合アパレル企業で、主に以下のブランドを展開する。
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クロコダイル(中高年向けカジュアルウェア)
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エルフォーブルなどのインナー・下着部門
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百貨店・量販店を通じた全国販売網
現在の株価は低位安定、PBRも1倍を大きく下回る。
売上の微減傾向や収益性の鈍化、DX対応の遅れなども重なり、市場では“放置銘柄”に近い扱いを受けていた。
提出者はどこから来たのか
SilverCape Investments Limitedの正体
提出者は、2024年設立のケイマン籍投資ファンド「SilverCape Investments Limited」である。
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本店所在地:ケイマン諸島グランドケイマン
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設立:2024年8月26日(設立から約1ヶ月で報告)
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代表者:Kelvin Chiu(チュウ・ケルヴィン)氏(マネジング・ディレクター)
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事務代理人:ホワイト&ケース法律事務所(東京・丸の内)
設立直後での報告提出という点において、“目的特化型の投資車両”である可能性が高い。
保有目的にはこう記されている:
「純投資、又は場合により重要提案行為を行う可能性がある」
すなわち、現時点ではノンアクティブだが、将来的に株主提案や経営関与も視野にあると明言している点が非常に重要だ。
5.73%
その静かすぎる取得過程
報告書によれば、SilverCapeはヤマトインターナショナル株を1,220,200株(発行済の5.73%)保有
取得履歴は次の通り
取得日 | 株数 | 割合 | 取引種別 |
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2025/6/30 | 500株 | 0.00% | 市場内 |
2025/7/14 | 104,300株 | 0.49% | 市場内 |
2025/8/25 | 100,000株 | 0.47% | 市場内 |
2025/8/28 | 238,800株 | 1.12% | 市場内 |
このように、約2か月かけて断続的に取得されており、大きな買いが目立たないように調整されている。また、取得資金はすべて自己資金(約4.7億円)であり、借入はゼロである。
何を見据えたのか
外資が注目した3つの理由
なぜこのタイミングで、しかもヤマトインターナショナルなのか?主に以下の理由が考えられる。
▍① PBR0.3倍水準──資本効率の見直し余地
長年黒字を維持し、配当も出しているにもかかわらず、株価純資産倍率は0.3〜0.4倍水準。自己資本の活用度が低く、ROEも4%台で低迷している。
▍② 経営陣の持株比率が低い=外部からの影響を受けやすい
過去の有価証券報告書では、取締役の合計持株比率は3%未満。これはアクティビストから見て“議決権で攻めやすい構造”だ。
▍③ サプライチェーン改革期=事業売却や再編の余地
インバウンド消失、流通コスト高などを背景に、業績が鈍化している一方で、過去には不採算ブランドの閉鎖や構造改革も実施しており、再編余地が生まれている。
これは“静かなる変革の予告編”なのか?
現時点では重要提案行為は未実施であるが、報告書の内容と構造を見る限り、SilverCapeは“静かに株主構造を整え”、タイミングを見てアクションに移る準備をしている可能性が高い。
この保有は単なる“投資”ではなく、“含みのある静寂”である。
ヤマトインターナショナルにとって、外資の影はただの脅威ではなく、自社の資本戦略やIR活動、そして資本効率に向き合う鏡となりうる。