【決算分析】ストレージ王(第16期・中間)

トランクルーム市場の先駆者、成長投資の光と影

企業概要|専業上場企業としての立ち位置

ストレージ王は、国内でも数少ないトランクルーム専業の上場企業である。

創業以来、住宅密集地や地方都市の遊休地を活用し、トランクルームの企画・運営を事業の中核に据えてきた。

事業は大きく三つの柱から成り立つ。

第一に、自社保有や他社委託物件を運営する運営管理事業

第二に、コンテナ型を中心とした施設を開発し分譲する開発分譲事業

第三に、ホテルや土地を取得し転売する不動産取引事業である。

同社の特徴は、在庫を抱えて運営利益を積み上げるモデルと、物件を売却してキャッシュを確保するモデルを組み合わせ、資金循環を意識したビジネスを行っている点だ。

大株主には業界関連企業や戦略的パートナーが並び、トランクルーム市場の拡大を見越した“業界内連合”の様相もある。

決算ハイライト

売上は急拡大も赤字は続く

2025年2〜7月期の売上高は12.8億円(前年同期比+129.2%)と倍増以上。

中間純損失は6,769万円で前年から約4割縮小した。営業損失は1.05億円と横ばい、経常損失は1.10億円でやや悪化。自己資本比率は23.3%に改善し、現金残高は5.9億円に積み上がった。

指標 2024年中間 2025年中間 評価
売上高 5.6億円 12.8億円 2.3倍
営業損失 ▲1.08億円 ▲1.05億円 横ばい
経常損失 ▲1.05億円 ▲1.10億円 やや悪化
純損失 ▲1.14億円 ▲0.68億円 赤字縮小
自己資本比率 21.7% 23.3% 改善

数字は「拡大と改善」を示す一方、収益構造の脆弱さをも浮き彫りにした。

キャッシュフロー

在庫投資を借入で支える

営業キャッシュフローは▲7.8億円と依然流出だが、前年▲20億円超からは大幅に改善した。

販売用不動産の積み増しが主因である。投資CFは小幅なマイナスにとどまり、財務CFは借入増加で+8.8億円を確保。

結果として期末現金は5.9億円へと積み上がった。

「営業はマイナス、財務で補填する」という構図は、成長企業特有の姿ではあるが、借入依存度の高さは中長期のリスク要因でもある。

セグメント分析

在庫投資を借入で支える

運営管理事業は売上5.2億円を計上したが、赤字3,100万円と損益改善に至らず。開業コストが重荷となっている。

開発分譲事業は売上4.0億円、利益1,500万円を確保。コンテナ物件の分譲売却が寄与した。不動産取引事業は売上3.6億円、利益2,400万円と堅調で、ホテル物件の売却が収益を押し上げた。

セグメント合算では黒字化に近づいているものの、本社費用1億円超が足を引っぱり、全社では営業赤字が続いた。

ここに「事業の芽は育っているが、まだ経営体制が追いついていない」現実がある。

財務と資本政策

在庫拡大と安定株主

総資産は45.1億円に拡大。その中心は販売用不動産27.9億円で、前年から8.1億円増加した。

一方で、短期借入金も14.3億円に増加し、在庫投資と借入が並行して膨張する構図となった。

株主構成はケイ・エル・アイ(24.08%)、デベロップ(9.89%)、寺田倉庫(2.71%)など、業界プレイヤー色が濃い。潜在株はなく、希薄化リスクは限定的だが、借入構造の健全性をどう維持するかが問われる。

拡大か収益化か、その分岐点

ストレージ王の今期決算は、売上の急拡大と赤字縮小を同時に示した。

しかしその裏では、在庫の積み増しと借入依存というリスクが進行している。

投資家の視点からは、在庫の回転速度と運営管理事業の黒字化が焦点となる。

アクティビストの視点では、本社費用の圧縮や借入構成の透明性、資本効率の改善が求められるだろう。

次の半期は、ストレージ王が「成長の加速」を選ぶのか、「収益性の確立」を優先するのか。その選択が企業価値の行方を左右する。

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