【決算分析】アクシスコンサルティング(第24期)

「人材紹介×スキルシェア」のミックス転換

売上は2桁増でも利益率は大きく後退

企業概要|“ハイエンド人材”に特化した複合モデル

アクシスコンサルティングは、コンサルタント等のハイエンド人材に軸足を置くヒューマンキャピタル企業。

収益柱は、

(1) 人材紹介「AXIS Agent」(コンサルファーム/事業会社向け)

(2) スキルシェア──フリーコンサル常駐「AXIS Solutions」とスポット相談「AXIS Advisors」

の二系統。

創業来の人材紹介にスキルシェアを重ね、案件×人材DBの循環でリカーリングを高める設計だ。

2024/7には子会社ケンブリッジ・リサーチ研究所を吸収合併(以降は単体開示)。

ビジョンは「あらゆる課題は、人で解決する」。

決算ハイライト(2025/6期・単体)

指標 2024/6期 2025/6期 増減
売上高 4,082百万円 5,271百万円 +29.2%(本文では+13.0%と記載、単体/連結切替等の影響に注意)
売上総利益 2,591 2,857 +10.3%
営業利益 495 210 ▲57.6%(本文数値は▲74.7%)
経常利益 614 219 ▲64.3%
当期純利益 369 321 ▲13.0%
EPS 74.48円 64.12円 ▲10.36円
自己資本比率 78.3% 73.5% ▲4.8pt
  • 売上構成の転換:人材紹介 2,768百万円(▲12.4%)に対し、スキルシェア 2,502百万円(+66.3%)Solutionsの伸長が全社売上の牽引役。

  • 粗利率は低下(63%→54%台):スキルシェア比率上昇で原価(委託費)が膨らむミックス悪化が主因。

  • 利益率は急低下(OPM 12.1%→4.0%):人員増による人件費+広告費が重し。

主要顧客の売上比率:PwC 25.2%、アビーム 10.0%濃い顧客集中は構造リスクでもある。


キャッシュフロー

営業はマイナス、借入で厚みを確保

  • 営業CF▲183百万円:税支払い(▲379)や抱合せ株式消滅差益の非資金性調整などでマイナス。

  • 投資CF▲139百万円データベース/分析基盤など無形投資が中心。

  • 財務CF+298百万円長期借入+400/返済▲107でネットプラス。期末現金は2,999百万円。平均金利2.0%、長借残高367(うち1年内返済133)。

評価:ストックで積むビジネスに転じつつも当期は投下先行運転資金×無形投資借入で下支えする形が鮮明。

サービス別の骨格(単一セグメントの内訳)

  • AXIS Agent(人材紹介)決定人数は減少(ファーム若手枠の縮小影響)も、マネージャー以上で単価は維持。売上2,768

  • AXIS Solutions(フリー常駐)稼働人数 867→1,568(+80.8%)へ拡大、売上2,502。粗利は相対的に薄い。

  • AXIS Advisors(スポット):ブランド再編を進行。将来のリード獲得装置

論点:売上成長はSolutions依存GM(粗利率)低下販管費の肥大をどう抑えるかがカギ。

バランスシート・資本政策

安全域は厚いが、流動性と支配構造に注意

  • 総資産 4,515/純資産 3,325/自己資本比率 73.5%。流動比率453.6%で安全域は厚い。

  • 新株予約権の潜在株 41,620株(希薄化0.8%)と小ぶり。

  • DOE 5%の安定配当自己株100,000株の取得(ToSTNeT-3、2025/8/21)を実施。加えて譲渡制限付株式(RS)制度新設(年10万株枠)。

  • フリーフロート 29.0%創+会長個人で64.2%保有の安定支配。一方で流動性リスクは残る。

事業環境と成長ストーリーの再点検

  • 追い風:日本企業のDXは中期テーマ化。マネージャー以上の採用需要は堅調フリー常駐の活用も拡大。

  • 向かい風:ファームの採用枠若手→新卒中心への回帰でAgentの決定数は細るトップ顧客集中(PwC25.2%)とGM低下はリスク。

  • 打ち手:事業会社向けの開拓強化、Solutionsの単価・マージン是正データ基盤投資でマッチング効率を高める。

投資家の着眼点(実務KPI)

  1. ミックスと粗利率
     Solutions比率の上昇がGM低下→OPM悪化に直結。GM>60%回復、OPM>8%を中期目安に。

  2. Agentの“質の成長”
     決定人数は落ちても単価(年収×手数料率)を維持・向上できているか。Mgr以上の案件比率を継続モニタ。

  3. 顧客集中の緩和
     Top1 25.2%は高い。上位2社35%超の状態から、事業会社比率でバランスを取れるか。

  4. CFと借入バランス
     営業CF黒字化への転換点、長短構成(2.0%)と返済スケジュール(133/132/100)の負担感。

  5. 資本政策の“質”
     DOE5%配当+自己株+RSの三点セットは、流動性29%の下で希薄化と還元の最適点を探るゲーム。


総括

“量の成長”は示した。次は“質の回復”を数字で

売上は2桁増Solutionsがドライブした半年・一年だった。

一方で、粗利率低下→営業利益率急落というミックスの副作用が明確だ。

強み(ハイエンド×Mgr+)を軸に、事業会社開拓と単価・粗利の是正をどこまで仕上げられるか。

投資妙味は、

  • Agentの単価維持Solutionsのマージン管理が効いたときの利益レバレッジ

  • 堅いBS(自己資本比率73.5%)×安定還元(DOE5%)がもたらす下方耐性

  • 上位顧客集中の緩和フローからストックへの質的転換にある。

次の決算では、GM回復・OPM底打ち・営業CF黒字化の三拍子を確認したい。

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