みさき投資が動いた

KeePer技研5%超取得の深層

第1章 大量保有報告の衝撃

2025年9月24日、カーコーティング事業で急成長を続ける KeePer技研(6036、東証プライム) を巡り、みさき投資株式会社が1,431,000株(5.06%)を取得したことが明らかになった。

代表取締役の中神康議氏が率いる同社は「働く株主(R)」を掲げ、日本版スチュワードシップ・コードに沿ったアクティブ投資を実践してきた。

その理念は、単なる株式保有を超えた「経営との建設的対話」を意味する。

報告書には、重要提案行為を行う可能性がある旨が記載されており、今回の投資は純粋なパッシブ保有ではなく、経営に対する積極的関与を視野に入れたものであることが示唆されている。

取得の実態

市場内外での二段構え

みさき投資の取得は、2025年8月から9月にかけて段階的に進められた。

特徴的なのは、市場内での分散取得と市場外での大口取引を組み合わせた手法だ。

  • 8月7日:市場内20,000株、市場外25,700株(取得単価3,197円)

  • 9月10日:市場内17,500株、市場外22,500株(単価3,488円)

  • 9月12日:市場外27,400株(単価3,589円)

  • 9月19日:市場外19,700株(単価3,797円)

  • 9月24日:市場外22,000株(単価3,726円)

この取引履歴から見えるのは、株価を乱高下させないよう日々の流動性を利用しつつ、節目でまとまった株数をブロック取引で確保する戦術である。

取得資金は顧客資金66億円超。つまり、自己勘定ではなく投資家から預かった資金を背景に、集合的株主行動として投資を実行している点が際立つ。

みさき投資の理念と狙い

みさき投資は2013年に設立され、「働く株主」をキャッチフレーズに独自の存在感を築いてきた。

単なる株価上昇益を狙うのではなく、経営改善にコミットし、企業価値を中長期的に引き上げるというスタンスを強調している。

KeePer技研は名古屋を拠点とする地方発の成長企業であり、独自ブランドで全国にカーコーティング店舗を展開。

直近では業績も堅調に推移しているが、拡大路線におけるガバナンスや資本効率は課題として残る。

そこに「働く株主」としてのみさき投資が入り込むことは、企業の成長を促す外圧として機能する可能性がある。

論評社が見る三つの論点

  1. 助言の本気度
     報告書には「重要提案行為の可能性」が明記された。これは、将来的に経営方針や資本政策に直接意見をぶつける余地を残したということだ。

  2. 顧客資金による集合行動
     今回の投資は自己資本ではなく顧客資金によって支えられている。言い換えれば、複数の投資家が「みさき投資」というプラットフォームを通じてKeePer技研に影響力を及ぼす仕組みだ。

  3. 地方発グロース企業への挑戦
     KeePer技研は地方企業としては稀有な成長例だが、そのガバナンスは大都市圏の大企業と比べれば発展途上にある。ここに外部株主の圧力が加われば、成長の加速か、衝突か──企業の進路を左右する試金石になる。

「共に働く株主」か「新アクティビスト」か

みさき投資によるKeePer技研5%超の取得は、数字以上の意味を持つ。

それは「株主は単なる出資者ではなく、経営と共に働く存在である」という強いメッセージだ。

──この「働く株主」は本当に経営の伴走者なのか。あるいは、新しい形のアクティビストとして経営に外圧をかける存在なのか。

KeePer技研は今、その答えを示すことを市場から求められている。

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