
PEファンドが仕掛ける経営参画の深層
エンデバー・ユナイテッドの素性
エンデバー・ユナイテッド株式会社は2013年に設立された独立系プライベート・エクイティ(PE)ファンドである。
代表は三村智彦氏。拠点は東京・丸の内に構え、大手外資系ファンドとも国内金融機関系列とも異なる「独立資本」を掲げて活動してきた。
ファンドの特徴は、
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事業承継支援:オーナー経営者の高齢化や後継者不在問題を背景に、持続可能な成長を目指す中堅企業への投資。
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再成長戦略:収益構造が停滞する企業に経営人材や戦略を注入し、再成長のきっかけを作る。
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IPO支援とEXIT多様化:投資先を上場に導くだけでなく、上場後も一定比率を維持し続ける。
今回のUNICON保有はまさに同社の投資哲学を体現したケースであり、経営介入型ファンドとしての存在感を示すものだ。
報告書の要点
2025年9月26日時点で、エンデバーは4,666,600株(47.16%)を保有。発行済株式総数9,894,900株のほぼ半分を握っている。
保有目的は「経営に参画し、企業価値向上を通じた投資リターンを得る」と明記されており、財務的な投資ではなく明確に経営介入を志向している点が重要だ。
保有の経緯とIPO対応
エンデバーはUNICON設立時から資本参加しており、合併や分割を経ながら一貫して株式を保有してきた。
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2020年4月:設立時に27,693株取得
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2021〜23年:複数の吸収合併で計約67,000株を取得
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2025年1月:株式分割(1:100)により保有株式数は9,391,700株に増加
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2025年9月26日:新規上場に伴う売出しで4,725,100株を市場外処分 → 残高4,666,600株
通常のPEファンドであればIPOをもって大半をEXITするのが通例だが、エンデバーは約半数を残して上場後も深く関与するという異例の姿勢を取っている。
ロックアップと主幹事証券との関係
エンデバー・ユナイテッド2号投資事業有限責任組合(同社が無限責任組合員)は、
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2025年9月17日〜2026年3月24日まで:野村證券の承諾なく売却できないロックアップ契約
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野村證券へ708,700株を貸付(オーバーアロットメント対応)
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グリーンシューオプションを付与し、市場安定化に協力
このスキームは、エンデバーがIPOの裏側で主幹事証券と協調しつつ、投資家利益と市場安定を両立させるプレイヤーであることを示している。
資金構造とファンドの実力
今回の投資資金は約26.8億円。借入金はなく、ファンド出資者からの拠出金をそのまま投下している。
この構造は、PEファンドとして健全で透明性の高い運用形態であり、外部金融機関の融資に依存しない「リスクマネーの直接投入」を象徴する。
エンデバー・ユナイテッドの過去事例と業界位置づけ
エンデバーはこれまで、
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伝統的中堅製造業の再生
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小売・サービス業の成長支援
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IT企業の事業承継案件
など幅広く手掛けてきた。
国内PE業界では、カーライルやベインキャピタルのような外資大手が大型案件を主導する一方で、エンデバーは独立系として国内中堅企業をターゲットに特化。
その戦略は「日本的PEモデル」として注目され、特にIPO後も大株主として残る点は国内市場において稀有な存在感を放つ。
視点と論点
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長期的関与:EXITを急がず、上場後も経営参画を継続する点は評価される一方、独立性の観点から「ファンド依存」のリスクも生じる。
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企業価値の向上と株主利益:経営改革と市場評価をどう両立させるか。ファンド主導のガバナンスが果たす役割が試される。
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国内PEの新たなモデル:外資系に比べ規模は小さいが、エンデバーのケースは「日本の中堅企業再成長の触媒」となり得る。
経営に寄り添うPEの姿
エンデバー・ユナイテッドによるUNICONホールディングスへの47%保有は、単なる大株主の存在ではない。
それは、PEファンドが日本企業の経営に深く寄り添い、上場後も伴走する新たなスタイルを象徴する。
──これは「企業価値向上に資する経営パートナー」なのか。あるいは「ファンド依存のリスク要因」なのか。
UNICONの今後の成長は、エンデバーと市場の双方の眼差しを受けて試されることになる。