
「7期連続赤字」と“暗号資産転換”の虚実
■決算サマリー(2025年4月〜9月期)
| 指標 | 今期 | 前期 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 14億5,280万円 | 15億3,000万円 | ▲5.1% |
| 営業損失 | ▲1億9,370万円 | ▲2億1,000万円 | 改善 |
| 経常損失 | ▲1億8,890万円 | ▲2億円 | 改善 |
| 親会社株主に帰属する純損失 | ▲2億4,030万円 | ▲2億3,100万円 | 拡大 |
| 総資産 | 30億5,700万円 | 33億3,000万円 | ▲8.4% |
| 自己資本比率 | 79.2% | 77.1% | +2.1pt |
| 現金及び預金 | 3億9,178万円 | 5億1,900万円 | ▲1.2億円 |
| 短期貸付金 | 9億円 | 11億円 | ▲2億円 |
出典:堀田丸正「第73期中間報告書」(2025年11月12日提出)
「RIZAP体制の崩壊」と新支配構造
かつてRIZAPグループ傘下として再建を進めた堀田丸正。
だが、2025年夏――親会社がRIZAPからBakkt Opco Holdings(米国)に交代。
持株比率は以下のように逆転した。
| 株主 | 持株比率(2025年9月末) |
|---|---|
| Bakkt Opco Holdings | 29.98% |
| RIZAPグループ | 27.25% |
| ほかSBI系・機関投資家 | 約10% |
Bakktは暗号資産の決済・カストディ基盤を手がける米系プレイヤーであり、
この持分移動は単なるファンドトランザクションではない。
“繊維の老舗”から“Web3関連銘柄”への転換シグナルとして市場は受け止めている。
論評社分析:
企業再建の現場から見れば、これは“資本の再編”ではなく、“支配権の移転”。
実質的に、RIZAPが引き取った「衣料商社の殻」をBakktが利用し、上場シェルの暗号資産ハブ化を狙う構図だ。
業績構造の実態
「在庫商売の終焉」
堀田丸正の中核事業は、かつての「着物・ファッション・マテリアル(素材)」で構成される。
だが、いずれも縮小トレンドにある。
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きもの事業:3.3億円(+3.6%)も、販管費重く赤字継続。
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ファッション事業:6.6億円(▲5.6%)、赤字だが縮小。
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マテリアル事業:4.3億円(▲9.3%)、日本向け堅調も国内市場縮小。
営業キャッシュフローは▲2億円。
在庫資産は3.2億円と減少したが、営業赤字は7期連続となった。
論評社視点:
もはや“繊維商社”としての構造的利益は消えている。
同社の財務安定性は、短期貸付金(9億円)という金融収益頼み。
製造・販売の実体よりも、貸付スキームの管理会社化が進行している。
財務の“虚実”
自己資本は厚いが流動性は細る
表面上は自己資本比率79.2%と「超健全」。
しかし、その中身は営業CFマイナスを貸付回収益で穴埋めしている構造だ。
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貸付金の極度額は12億円。期末残高9億円。
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1億円単位の資金移動を伴う金融性資産が、BSの3割を占める。
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投資CFプラスは貸付金回収(+9.6億円)>新規貸付(▲7.5億円)による帳尻合わせ。
一見「資金余力あり」と見えるが、それは「貸付を回収した瞬間」だけの錯覚。
営業CFマイナス×投資CFプラスという組み合わせは、事業の自走力が失われた証左である。
臨時株主総会と「暗号資産」へのシフト
2025年11月に公表された臨時株主総会議案は、企業としての方向転換を明確にした。
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商号変更(予定)
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暗号資産関連事業の新設(定款追加)
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新取締役体制と株式報酬制度
Bakktによる“Web3再生構想”の一環だが、
財務諸表に暗号資産関連の投資・売上・資産計上は一切存在しない。
つまり、「構想はあるが実体はまだない」。
繊維企業の残骸に、ブロックチェーンの衣をかぶせただけの“再編第一段階”に過ぎない。
継続企業の前提
「疑義あり」の自己診断
同社は「継続企業の前提に重要な不確実性は認められない」と結論づけた。
だが本文(リスク欄)には、明確にこう記されている。
「重要な疑義を生じさせるような事象や状況が存在しております。」(報告書 p.3)
つまり会計上はギリギリで“注記回避”したが、実態は継続企業リスクの域にある。
営業赤字・資金流出・新規事業不透明――三拍子がそろっている。
論評社注:
継続企業の「前提」そのものが“資本再編に依存”している限り、
これは再建ではなく延命である。
論評社による総括
“シェルの中の亡霊”
堀田丸正の現状を一言で言えば、
「繊維の顔をした金融シェル」である。
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本業赤字7期連続
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資金源は貸付金の回収
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自己資本はあるが事業の血流は止まっている
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新親会社Bakktのもと、暗号資産業へ“業態替え”を宣言
だが、財務の中身に“Web3”は一片もない。
このままでは「繊維から暗号へ」ではなく、
「商社からシェルへ」の転落で終わる可能性が高い。

