オービスがさくらインターネットを5.30%取得

海外バリュー投資の老舗が動いた。

サマリー

  • Orbis Investment Management Limited(オービス) が、さくらインターネット株を 5.30%(222万1,800株) 保有

  • 1989年創業の老舗グローバル投資運用会社で、顧客ファンドの資産運用として取得

  • 保有目的は「ファンドの資産運用」。経営介入を示唆する文言はなし

  • しかし5%超という規模は、さくらの株主構造に一定の影響を与える“ストラテジック級”

  • AI・クラウド・データセンター需要拡大の中、海外長期資本が本格参入した可能性

今回の大量保有のポイント

提出者は Orbis Investment Management Limited(バミューダ)

世界的に知られる長期志向の資産運用会社であり、

  • 創業:1989年

  • 投資一任業

  • 顧客資産を長期的なグローバル分散で運用するスタイル

代表者は Matthew Farr(ディレクター)
日本拠点としての届け出は、丸の内の法律事務所経由。

取得内容

  • 保有株数:2,221,800株

  • 保有比率:5.30%

  • 発行済株式数:約4,189万株

5%というラインは、特例報告であっても、“本気の中長期投資”でなければ到達しない水準 である。

保有目的と投資スタイル

老舗ファンドの静かな判断

保有目的はシンプルにこう書かれている

「当社の管理下にあるファンドの資産運用のための投資」

つまり、

  • アクティビストではない

  • 経営介入を目的としない

  • 顧客ファンドの中長期投資の一部

という立ち位置だ。

ただし、Orbis の特徴は“本当の長期バリュー投資”。
世界的にも珍しい、10年単位の運用哲学を持つファンドである。

彼らが動くときは、

  • “割安放置された成長企業”

  • “市場の誤解が大きい企業”

  • “長期テーマに乗る企業”(AI・クラウド・データセンターなど)

こうした特徴を持つ銘柄に集中する。

さくらインターネットは典型的にこれに当てはまる。

さくらインターネットを選んだ理由

AI需要と設備投資の蓄積

なぜ今、さくらインターネットなのか?

① AI・生成AI需要とデータセンター強化

さくらは北海道データセンター強化、GPUクラスタ整備など、

AIインフラに直結する設備投資を加速させている。

海外勢からすると、“日本のAIインフラの本命のひとつ” に見える。

② クラウド事業の高成長見込み

AWS・GCP・Azureを使わない“国産クラウド”という独自ポジション。

相対的に割安で、政府需要にも強い。

③ 株価の変動が大きく、海外勢には好材料

ボラティリティが高い銘柄は、長期ホルダーにとって“安く拾えるチャンスが多い” と映る。

④ 中期計画のリスクより成長余地が大きい

設備投資は重いが、その先の収益レバレッジが見える。

Orbis が好む「長期的な割安成長」の典型。

5.30%という数字が持つ意味

5%超の保有は、企業に対して “注意深く見ている長期資本” のシグナルとなる。

企業側には次の影響がある

① ガバナンスの透明性が強く求められる

海外長期資本は、

  • 公正な開示

  • 株主平等

  • プロジェクト投資の合理性
    に敏感。

② 中期計画の実行に対して継続的にプレッシャー

アクティビストではないが、“沈黙のガバナンス圧力” をかけ続けるタイプ。

■ ③ 需給面での下支え

大口長期ホルダーは株価の急落局面で安定株主として機能する。

■ ④ 他の海外投資家が入りやすくなる

大型ファンドが入ると、「この銘柄は海外評価が始まった」というシグナルになり、さらに資金が流入する。

市場が読む“Orbisの意思表示”

さくらインターネットの株価は、AI・クラウド文脈で激しく動くが、海外長期ファンドが入ると、マーケットは以下を予測し始める。

① 成長テーマとしての再評価

AIインフラ × データセンター × 国産クラウド

この三点は、世界的にもホットな長期テーマ。

② 海外資金の中長期流入が増える

Orbis が入った以上、他のファンド(Baillie Gifford系、Nordeaなど)が
参入する可能性が高まる。

③ 設備投資の“焼却期間”が理解される

海外勢は投資回収期間を長く取れるため、“短期採算”より“長期キャッシュ創出力”を重視する。

これは国内短期投資家と真逆の評価軸であり、さくら株の価格形成に新しいプレイヤーが加わった ことを意味する。

今回の大量保有が示す“日本IT市場の転換点”

さくらインターネットは、国内IT企業の中で長らく“地味な存在”だった。

しかし、AI・GPU需要の爆発を背景に、「日本のAIインフラの柱」 として海外勢の視線が一気に集まり始めた。

そこで動いたのが、世界の長期バリュー投資を象徴する Orbis。

これは偶然ではなく、日本のITインフラ産業が世界マネーの投資対象に昇格したという市場構造の変化そのものだ。

5.30%という一見控えめな数字だが、背後には巨額の海外年金・機関資金の判断がある。

さくらインターネットにとっても、日本市場にとっても、“海外長期資本の本格参入”という重要な転換点 となる出来事だ。

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