
First Plus Financial Holdings の70.6%支配
サマリー
-
First Plus Financial Holdings(FPFH)が70.6%の支配権を確立
-
支配の核心は 新株予約権(第23回・第19回)を軸にした大量割当と急速行使
-
取得株式の議決権をアースエレメンツ・キャピタルに委任する異例の多層構造
-
契約上、取締役2名の指名権を保持し、経営への直接的影響力を確保
-
「潜在株+実株」という構造により、既存株主の希薄化と支配の固定化が深刻化
First Plus の実像
データセクションの大量保有者として登場したのが、シンガポール拠点の投資会社 First Plus Financial Holdings である。
設立は2019年と新しいが、記載されている保有目的は「純投資」と「重要提案行為の実施」。
つまり、単なる資産運用ではなく、明確に経営介入を前提としたアクティビスト的投資会社である。
代表者LI ZHIBOのもと、同社は日本企業の第三者割当を中心とした資本参加に積極的で、今回のデータセクション案件はその典型と言える。
70.6%へ至る“新株予約権ドライブ”の構造
FPFHが握る株式関連の内訳は以下の通り
-
普通株式:978万株超
-
潜在株式(予約権):3793万株超
-
総保有:4771万株超
発行済株式2966万株に対して、70.6%の支配率を示す。
ここで重要なのが、実株よりも潜在株の方が圧倒的に多い異様な構造である。
この手法は、希薄化を伴う新株予約権を大量に第三者へ割り当て、その行使を通じて後から支配を確立する典型的な“資本政策型支配”。
既存株主が事実上抵抗できないままコントロールが移転していく。
1か月で一気に支配を固める「行使ラッシュ」
2025年10月〜11月にかけて、FPFHは怒涛の勢いで予約権を行使している。
-
第23回予約権:4,400万個の大量取得(第三者割当)
-
第19回予約権:148.8万株の行使
-
第23回予約権:308万株行使 → 普通株式化
-
同じく 299万株行使 → 普通株式化
合計で1200万株近い普通株式が短期間で市場外発行されている。
行使価格は
-
544円
-
1,250円
など、いずれも市場外での直接取得。
市場の需給に影響を与えず水面下で支配力が強化されていく、典型的な“静かな乗っ取り”構造である。
議決権はアースエレメンツに委任される異常構造
さらに異例なのは、FPFHが行使して取得した普通株式の議決権が、アースエレメンツ・キャピタルに丸ごと委任されている点である。
対象株式は
-
第19回行使株:148.8万株
-
第23回行使株:607万株
→ 合計 755.8万株
名義はFPFH、議決権はアースエレメンツ。
この“支配権の分離”によって、実質的なコントロールが誰の手にあるのかが極端に不透明になる。
これは日本のガバナンス環境において極めて珍しく、投資家保護の観点から重大な問題をはらむ。
支配を永続させる契約構造
複数の契約書により、FPFHは支配を固定化する仕組みを持つ。
-
取締役2名の指名提案権(新株と第19回予約権関連の契約)
-
第23回予約権の譲渡には 発行者の承認が必要
-
発行済株式の33%超保有時の行使には事前承諾が必要
一見すると制限だが、実質は
「支配した後は、経営側の承諾なしに支配基盤が崩れない構造」
となっており、経営陣との合意形成を前提にした支配維持メカニズムである。
“全額自己資金”で投入する異常な資金力
新株予約権の取得および行使資金として記載されているのは
-
自己資金:98億円(約9.8億円)
-
借入:ゼロ
-
その他資金:ゼロ
一般的に数十億円規模の第三者割当では外部資金やファンド構造を伴うケースが多いが、借入ゼロでこれを実行している点は、FPFHの資金源の透明性に疑問を残す。
資金調達経路が見えないまま支配権が一気に形成されたことは、市場全体のリスクでもある。
制度の盲点が露呈
今回のデータセクション案件は、日本市場の制度的脆弱性を象徴する。
-
新株予約権の大量引受
-
市場外での行使
-
議決権の第三者委任による多層支配
-
経営への直接的なアクセス契約
-
株主価値の急速な希薄化
これらが組み合わさることで、企業のコントロールは、市場ではなく“契約の世界”で完結してしまう。
これは透明性を重視すべき上場企業のガバナンスとして、深刻な制度的欠陥を露呈させた事案と言える。

