
金利上昇局面で試される「不動産特化銀行」モデルの耐久性
決算サマリー
オリックス銀行の2025年9月期・中間決算は、規模拡大と利益減少が同時に進行する局面を映し出した。
経常収益は411億円と前年同期比で大きく増加した一方、経常利益は105億円、中間純利益は74億円と、ともに前年同期を下回っている。
総資産は3兆2,207億円まで拡大し、貸出金・預金ともに順調に積み上がっている。
しかしその内実を見ると、投資用不動産ローンへの集中と、金利上昇に伴う調達コスト増が、収益構造に明確な影響を及ぼし始めている。
本決算は、拡大路線そのものよりも、ビジネスモデルの持続性が問われる段階に入ったことを示す内容だ。
財務分析
まず財務の全体像を整理する。
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総資産:3兆2,207億円(前期末比+1,086億円)
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貸出金残高:2兆6,337億円(同+1,181億円)
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預金残高:2兆4,885億円(同+2,522億円)
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自己資本比率(国内基準):11.5%
資産・負債ともに順調に拡大しており、量的成長は維持されている。
一方で、自己資本比率は配当実施の影響もあり低下傾向にあり、成長と資本余力のバランスが今後の焦点となる。
特筆すべきは、有価証券残高が前期末比で約500億円減少している点だ。
これは、含み損を抱えた債券を売却し、利回り改善を優先した結果であり、金利環境の変化に対する能動的な対応と評価できる。
利益の内訳
収益構造を分解すると、利益減少の要因は明確だ。
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経常収益:411億円(前年同期比+84億円)
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経常費用:305億円(同+111億円)
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経常利益:105億円(同▲26億円)
収益は増えているが、費用の増加がそれを上回っている。
特に影響が大きいのが資金調達費用の急増で、預金利息の増加を主因に、調達コストは大きく膨らんだ。
一方、資金運用収益は貸出金利息の増加により拡大しているものの、金利上昇の恩恵よりもコスト増の影響が先行している状況が読み取れる。
結果として、実質業務純益は減少し、最終利益も前年同期を下回った。
事業セグメントの収益構造
オリックス銀行は銀行業単一セグメントだが、実態としては収益源の偏りが極めて明確だ。
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貸出金の約8割は個人向け
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その中心は投資用不動産ローン
投資用不動産ローン残高は1兆9,135億円まで拡大しており、依然として同行の最大の収益ドライバーである。
一方、カードローンは需要回復が鈍く、残高は減少している。
法人向け貸出は、再生可能エネルギーや物流施設などへ分散が進んでいるものの、全体から見れば不動産依存構造に大きな変化はない。
このモデルは、低金利環境下では高い収益性を誇ったが、金利上昇局面では信用リスクと調達リスクが同時に顕在化する可能性を内包している。
キャッシュフローの流れ
キャッシュフローは、同行の経営判断をより端的に示す。
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営業CF:▲22億円
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投資CF:+484億円
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財務CF:▲300億円
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現金同等物残高:2,580億円(前期末比+162億円)
営業活動では貸出金増加により資金が流出している。
一方で、有価証券の売却により投資CFは大きくプラスとなり、流動性は確保されている。
注目すべきは、300億円の配当支払いを行いながらも、最終的に現金残高を積み上げている点だ。
これは、バランスシート調整を通じた守りの財務運営を優先した結果といえる。
株主目線での検証ポイント
株主の立場から見た論点は、次の3点に集約される。
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投資用不動産ローンへの集中が、金利上昇・不動産市況変動に耐えられるか
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預金金利上昇局面で、利ざやをどこまで維持できるか
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高水準の配当と成長投資を、自己資本比率を保ったまま両立できるか
現時点では健全性は維持されているが、余裕が無限にあるわけではない。
今後の市況次第では、資本政策の見直しが迫られる可能性もある。
論評
オリックス銀行の中間決算は、拡大モデルの限界が静かに浮かび上がり始めた決算といえる。
これまで同行を支えてきた「投資用不動産ローン特化×低コスト運営」というモデルは、金利上昇局面では別の顔を見せる。
収益は維持できるが、コストとリスク管理の巧拙が、これまで以上に業績を左右する。
この決算を「失速」ではなく「耐久テストの始まり」と位置づけたい。
次に市場が問うのは、金利環境がさらに厳しくなったとき、このモデルはどこまで持ちこたえられるのか。
その答えは、次の決算でより明確になるだろう。

