
ケイマン籍ファンドがITインフラ企業に示した“最初の踏み込み”
2026年2月9日、関東財務局に提出された大量保有報告書により、ケイマン諸島籍の投資会社 SilverCape Investments Limited が、株式会社ブロードバンドタワー の株式を 6.35% 保有していることが明らかになった。
一見すれば、海外投資家による標準的な5%超保有に見える。
しかし本件は、設立から半年足らずの新設ファンドが、市場内で短期間に6%超を積み上げている点、さらに保有目的に「重要提案行為の可能性」を明示している点において、単なるパッシブ投資とは性格を異にする。
これは、ブロードバンドタワーの資本構造と事業構造を見据えた初期的な問題提起と捉えるのが自然だ。
大量保有報告書の事実整理
まず、事実関係を淡々と整理する。
報告義務発生日:2026年2月2日
提出日:2026年2月9日
提出者:SilverCape Investments Limited
発行体:株式会社ブロードバンドタワー
保有株数:3,919,800株
保有割合:6.35%
保有目的:
純投資又は場合により重要提案行為を行う可能性がある
取得方法:市場内での取得
新株予約権等の保有:なし
担保契約等重要な契約:該当なし
取得資金:自己資金 713,530千円
直近の取得履歴を見ると、2025年12月中旬から2026年2月初旬にかけて、
ほぼ連続的に市場内で買い増しが行われていることが確認できる
取得主体・SilverCape Investmentsの正体と立ち位置
問題は「誰が買ったか」である。
SilverCape Investments Limited は、2024年8月設立のケイマン諸島籍投資会社で、事業内容は投資運用業とされている。
代表者は Kelvin Chiu 氏であり、法律事務所を通じた慎重な開示体制が取られている点も特徴だ。
設立から間もないにもかかわらず、単一銘柄に対して6%超を集中投資市場内で段階的に買い進め保有目的の段階で「重要提案行為の可能性」を明示という行動様式は、指数対応や短期トレーディング主体とは明確に異なる。
少なくとも本件は、「とりあえず買ってみた5%」ではなく、今後の関与余地を意識したポジション構築と見るのが妥当だ。
なぜブロードバンドタワーなのか(現在の構造)
次に問われるのは、「なぜこの会社なのか」である。
ブロードバンドタワーは、データセンター
クラウド・ITインフラ
メディア・放送関連
といった分野を手がけるITインフラ企業であり、事業領域そのものは中長期での需要が見込まれる。
一方で構造を見ると、業績の安定性に課題事業ポートフォリオが分かりにくい株価は長期的に低迷傾向といった点が重なり、事業価値と市場評価の乖離が生じやすい企業構造を抱えてきた。
これは、外部株主が入り込みやすく、構造改善余地を論じやすい典型的なケースと言える。
6.35%という取得比率の意味
6.35%という数字は、偶然ではない。
5%を明確に超え、大量保有報告の対象となる
10%未満に抑え、対立色を過度に出さない
追加取得・意見表明・撤退のいずれにも動きやすい
この水準は、「まず存在感を示し、次の一手を見極める」ための実務的ラインと評価できる。
特にブロードバンドタワーのような中小型株においては、6%超の外部株主は 経営陣にとって無視できない存在となる。
市場・経営陣へのメッセージ
大量保有報告書は、単なる法定開示ではない。
それは、株主から経営陣への無言のメッセージでもある。
本件が示すのは、現在の事業構造は市場に十分伝わっているかITインフラ企業としての成長ストーリーは明確か株主との対話姿勢は十分かという問いだ。
SilverCapeの6.35%は、敵対的な圧力ではない。
しかし、「外部の目が本格的に入った」ことを示すには十分な数字である。
企業・資本構造の将来余地
現時点でブロードバンドタワーには、いくつかの将来余地が残されている。
事業ポートフォリオの整理・再定義
データセンター・インフラ事業の位置付け明確化
資本政策・IRの改善余地
重要なのは、SilverCapeが業績が完全に回復した後ではなく、評価が定まり切る前に入っていると考えられる点だ。
これは、短期の業績反転ではなく、構造変化を見据えた保有である可能性を示唆する。
今後想定されるシナリオ
現時点で断定はできないが、以下の展開が想定される。
経営陣との非公開の対話
事業・資本政策に関する意見表明
追加取得、または一定水準での持分調整
少なくとも本件は、「何も起きない大量保有」ではない。
論評:ITインフラ企業に突きつけられる“説明責任”
本件は、ブロードバンドタワー一社の問題にとどまらない。
ITインフラという将来性のある分野に属しながら、市場で十分に評価されていない企業が多く残されている現実を示している。
SilverCape Investments の 6.35% は、経営権を奪うための数字ではない。
それは、「この企業の構造と将来を、資本市場の言葉で説明できるか」という問いを突きつけるための数字である。
経営陣がこのシグナルを対話の起点とするのか受け流すのかその対応次第で、ブロードバンドタワーの将来評価は大きく変わる可能性がある。
