
X線×光学×AIの融合で2030年に3億ドル市場の創出を目指す
本報告書は金融商品取引法第27条の23第1項に基づき、2026年4月22日に関東財務局長へ提出された。報告義務発生日は2026年4月21日であり、義務発生翌日という迅速な対応がなされている。提出書類の窓口代理人は西村あさひ法律事務所・外国法共同事業の弁護士・前澤友規が務め、事務連絡先担当者は同事務所の末村祥真弁護士である。
| 発行体名称 | リガク・ホールディングス株式会社(268A) |
| 提出者 | オントゥ・イノベーション・インク(Onto Innovation Inc.) CEO:マイケル・P・プリシンスキー |
| 提出者所在地 | 米国デラウェア州ウィルミントン(登記上)/事業本部:マサチューセッツ州 |
| 設立年月日 | 2005年1月18日 |
| 事業内容 | 半導体産業向け計測・検査機器およびリソグラフィ装置の設計・開発・製造・サポート |
| 保有目的 | 資本業務提携契約(2026年4月21日付)に基づく事業提携を目的とした保有 |
| 取得株数 | 61,123,436株(普通株式のみ、潜在株券等ゼロ) |
| 取得単価 | 1株1,850円(市場外取引) |
| 発行済株式総数 | 226,402,700株(2026年4月21日現在) |
| 株券等保有割合 | 27.00% |
| 取得資金 | 113,078,357千円(全額自己資金、借入なし) |
| 株式の売主 | Atom Investment, L.P.(旧筆頭株主) |
本取得は市場外の相対取引(株式譲渡契約)であり、Atom Investment, L.P.が保有するリガクHD株の一部をOnto Innovationへ直接売却する形式をとる。新株の発行を伴わないため既存株主の持分希薄化は生じない。クロージング日は2026年7月1日の予定で、必要な規制当局の承認その他の条件充足が前提となる。
| 年月日 | 株券等の種類 | 数量(株) | 割合 | 市場区分 | 区分 | 単価(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2026年4月21日 | 普通株式 | 61,123,436 | 27.00% | 市場外 | 取得 | 1,850 |
60日間の記録は2026年4月21日の一件のみである。Onto InnovationはそれまでリガクHD株を保有しておらず、本資本業務提携契約の締結と同一日付で株式譲渡契約を締結し、6,112万株超を一括取得する旨合意した。段階的な市場内取得ではなく契約に基づく一括取得であることが、取引ログの構造から明確に読み取れる。
Onto Innovation Inc.(NASDAQ:ONTO)は、半導体プロセス・コントロール分野における計測・検査装置のリーディングカンパニーである。ウエハー上のパターン形状、膜厚、欠陥を光学的手法で高精度に計測するシステムや、リソグラフィ工程に用いるマスク検査装置を主力製品とし、グローバルな主要半導体メーカーを顧客基盤に持つ。その強みは光学計測技術とモデルベースの解析ソフトウェアの統合にあり、AI・機械学習を活用したイールドマネジメント(歩留まり管理)ソリューションを展開している点で、純粋な装置メーカーとは一線を画す。
Onto Innovationは純粋な投資目的ではなく、事業上の補完関係に基づいて本取得に踏み切った点が、FMR LLCのような金融機関による大量保有と根本的に異なる。すでに2025年から両社はリガクのCD-SAXS(小角X線散乱を用いた臨界寸法計測)とOnto Innovationの解析ソフトウェアを組み合わせたハイブリッド計測技術の共同開発に着手しており、本提携はその技術協業を資本の側面から固定化するものである。全額自己資金(約1,131億円)による取得資金の調達は、Onto Innovationが本提携を財務的にも重要な戦略投資として位置づけていることを示している。
リガク・ホールディングスは1951年の創業以来、X線分析技術をコアに熱分析等を含む先端分析機器を世界136の国・地域に展開してきた企業である。売上高の約70%が海外向けであり、半導体・電子材料・電池・ライフサイエンス等の幅広い産業を顧客とする。2025年12月期は半導体関連事業の好調により売上収益が前期比3.9%増の941.93億円を達成したが、成長投資継続により営業利益は9.0%減の167.09億円となり、収益性の一時的な鈍化を記録している。2026年12月期はAI・半導体需要を背景に7.2%増収・16.1%営業増益を会社側は見込んでいる。
株価面では、発表前日(2026年4月20日)の水準から提携発表翌日の2026年4月21日にストップ高(+22.1%、2,766円)を記録し、10年来高値を更新した。取得単価1,850円はこのストップ高前の水準に設定されており、市場のプレミアムを享受する前の価格でOnto Innovationが株式を取得する構造になっている。年初来安値(1,152円、2026年2月6日)からの上昇率は約139%に達しており、市場がリガクHDの半導体計測分野における成長ポテンシャルを急速に評価し直したことを反映している。
X線計測とOnto Innovationの光学計測は技術的に競合ではなく補完の関係にある。X線は光が透過できない埋め込み構造(三次元積層構造や貫通シリコンビア)の計測に優れ、光学は高速・非破壊の表面計測に強みを持つ。AIを活用した解析レイヤーで両者を統合することで、先端半導体の製造工程全体をカバーする「フルスタック計測ソリューション」への昇格が視野に入る。
総額約1,131億円
今回の取引は、単純な財務投資家による持分取得ではなく、半導体計測という高度に専門化した産業における技術的補完関係を資本構造で固定する「戦略的資本結合」の典型例として位置づけるべきである。Onto InnovationがNASDAQ上場の米国企業として全額自己資金約1,131億円を投じてリガクHDの27%を取得したことは、X線計測というリガクの固有技術が次世代半導体製造工程において代替困難な差別化資産として評価されたことの証左であり、光学・AI・X線の三技術が一体化することで単独では届き得なかった顧客課題の解決が視野に入ったという判断が背景にあると見るのが自然だ。一方で、譲渡制限・追加取得制限・優先引受権が複層的に設定された資本業務提携契約の構造は、Atom Investmentが依然として15%超の株主として残存する状況も含め、将来の株主間の利害調整が経営判断に与える影響について継続的な注視が求められると見るのが自然だ。

