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論評RONPYOIndependent Research
OPEN FILE決算分析論評編集部公開 2026.05.12更新 2026.06.13

ココナラ 第15期中間、売上5.9%増・営業利益17%増で黒字基調定着

ここナラ第15期中間は、マーケットプレイスセグメントが売上8.9%増・利益率12.3%と着実に成長する一方、エージェントセグメントの先行投資損失(▲135百万円)とのれん・顧客関連資産の非現金償却(合計74百万円/半期)という二つの構造的な下押し圧力が営業利益を2.3億円水準に抑制している。BPO事業という新たな収益軸が軌道に乗るかどうかが、経営陣が公開した160億円売上目標の達成可否を規定する最重要変数と見るのが自然だ。

売上高
49.9億円
前年同期比 +5.8%
営業利益
2.32億円
前年同期比 +17.0%
経常利益
2.32億円
前年同期比 +35.3%
流通総額(GMV)
84.9億円
前年同期比 +1.2%

出典:株式会社ここナラ 第15期中間有価証券報告書(2026年4月13日提出)

第1章

3期推移と収益構造の変化

第15期中間は売上高49.9億円(前年同期比5.8%増)、営業利益2.3億円(同17.0%増)と増収増益基調を維持した。売上高成長率(5.8%)が流通総額(GMV)の伸び(1.2%)を大幅に上回っている点は、ネットレベニューレート(流通総額に対する手数料率)の改善を示唆しており、セラーサポートからセラーサクセスへの移行や月額固定型の新収益源の確立が奏功したと見るのが自然だ。

親会社帰属純利益は157百万円(前年同期比1.4%減)とわずかに減少した。前年同期に計上されていた投資有価証券評価損(30,000千円)の消滅と子会社株式売却損(1,409千円)のゼロ化が経常利益の改善に貢献したが、法人税等の増加(56,090千円→74,626千円)が純利益の伸びを抑制した。

指標 前年同期(千円) 当中間期(千円) 増減額 増減率
売上高 4,715,404 4,991,173 +275,769 +5.8%
売上原価 1,704,876 1,832,537 +127,661 +7.5%
売上総利益 3,010,527 3,158,636 +148,109 +4.9%
売上総利益率 63.8% 63.3% ▲0.5pt
販管費 2,812,334 2,926,823 +114,489 +4.1%
営業利益 198,193 231,813 +33,620 +17.0%
経常利益 171,383 231,961 +60,578 +35.3%
親会社帰属純利益 160,008 157,789 ▲2,219 ▲1.4%
1株当たり純利益(円) 6.71 7.01 +0.30 +4.5%

出典:第15期中間有価証券報告書 連結損益計算書

第2章

セグメント:マーケットプレイスの成長とエージェントの課題

グループは大きくマーケットプレイスエージェントの2セグメントで構成される。両者のセグメント損益を合算すると(マーケットプレイス+367百万円、エージェント▲135百万円)、グループ営業利益232百万円に一致する。

セグメント 売上高(当中間期) 売上高増減率 セグメント損益 前年同期損益
マーケットプレイス 29.7億円 +8.9% +3.7億円 +3.2億円(利益率11.8%)
エージェント 20.2億円 +1.7% ▲1.35億円 ▲1.07億円(赤字拡大)

出典:第15期中間有価証券報告書 セグメント情報

マーケットプレイスではここナラスキルマーケット・募集・法律相談が着実に成長し、PayPay決済対応(2025年12月)とセラーサクセス(2026年1月)の開始でプラットフォームの付加価値が向上した。「一時点で移転される財」が25.6億円と大半を占め、取引完結型の手数料収益が主軸となっている。セグメント利益率は12.3%(前年同期11.8%)と改善傾向にある。

エージェントセグメントでは、ここナラアシストの急成長・テック事業の営業効率改善は進むものの、2026年1月立ち上げのBPO(営業代行・補助金・SNS・HR)の先行投資が損失を拡大させた。損失幅が107百万円から135百万円へと27%悪化しており、エージェントの損失縮小・黒字化がグループ全体の損益改善の主要ドライバーとなる構図は不変だ。

第3章

利益の質:のれん償却と非現金費用の影響

損益計算書の表面上は営業利益2.3億円であるが、このなかにはのれん償却額43,969千円と顧客関連資産償却費30,485千円、合計74,454千円の非現金費用が含まれている。これらを加算した調整後ベースでは営業利益相当額は3億円超となり、事業の実態的なキャッシュ創出力はより高い。

のれん残高は875,766千円(中間期末)であり、前期末比43,969千円の減少(償却進捗)が着実に進んでいる。顧客関連資産も285,850千円まで残存しており、今後も毎半期約7.4千万円規模の非現金コストとして損益に影響し続ける。

また前年同期に計上されていた投資有価証券評価損(30,000千円)と子会社株式売却損(1,409千円)が当期はゼロとなったことで、特別損失に依存しない利益構造への移行が確認できる。

のれん残高(中間期末)
875,766千円(前期末比▲43,969千円)
顧客関連資産残高(中間期末)
285,850千円
非現金償却合計(半期)
74,454千円(のれん43,969千円+顧客関連資産30,485千円)
前年同期の特別損失
投資有価証券評価損30,000千円+子会社株式売却損1,409千円(当期はゼロ)

出典:第15期中間有価証券報告書 注記・損益計算書

第4章

キャッシュフローとの整合

営業CFが前年同期の▲22百万円から+326百万円へと大幅改善した。主因は前受金・預り金の増加というプラットフォームビジネスの健全なキャッシュサイクルである。前受金の増加(54,980千円)や預り金の変動(83,493千円減少)などが営業CFを支えている。

投資CFは前年同期に子会社株式売却支出254百万円があった反動で大幅に改善し、当期は有形・無形固定資産の取得支出58百万円が主体となっている。財務CFは長期借入金返済105百万円・社債償還10百万円・自己株式取得100百万円の3項目が主要な支出であり、前年同期とほぼ同水準の流出が続いている。

CF区分 前年同期(千円) 当中間期(千円) 増減
営業活動によるCF ▲22,488 +326,127 +348,615
投資活動によるCF ▲201,069 ▲37,218 +163,851
財務活動によるCF ▲217,455 ▲214,165 +3,290
現金期末残高 3,464,310 3,010,744 ▲453,566

出典:第15期中間有価証券報告書 連結キャッシュフロー計算書

第5章

運転資本と資産の質

売掛金は890,152千円(前期末874,589千円)で+1.8%の微増にとどまり、売上増加率(+5.8%)に対して小幅な増加であることから、回収サイクルの悪化は確認されない。サービスプラットフォーム事業のため棚卸資産は非保有であり、在庫リスクは非適用となる。

有利子負債は1年内返済予定の長期借入金209,988千円、固定長期借入金829,207千円、社債70,000千円(流動・固定合計)で構成される。半期で長期借入金を104,994千円返済しており、返済スケジュールは概ね計画通りに進捗している。手元現金は30.1億円と財務的なバッファーは十分に確保されている。

売掛金(中間期末)
890,152千円(前期末874,589千円、+1.8%)
棚卸資産
非保有(サービスプラットフォーム事業のため該当なし)
1年内返済予定長期借入金
209,988千円
固定長期借入金
829,207千円
社債
70,000千円
手元現金(中間期末)
3,010,744千円(約30.1億円)

出典:第15期中間有価証券報告書 連結貸借対照表・注記

第6章

財務と還元

広告宣伝費は627,755千円(前年同期比+11.1%増)と拡大し、対売上比率は12.6%(前年同期12.0%)と微増にとどまった。給料及び手当も824,122千円(同+8.9%増)と増加しており、PayPayとの決済連携(2025年12月導入)やセラーサクセス(2026年1月開始)といった戦略施策の実装コストが販管費に反映されている。

当中間期に290,800株(約1億円)の自己株式取得を実施し、自己株式は発行済株式の6.88%に達した。一方で譲渡制限付株式報酬として105,263株を処分しており、自己株式の一部が人材インセンティブとして再流通している。

第21回新株予約権(取締役・従業員向け、145,871株)には「2028〜2031年の各8月期において連結売上高が160億円を超過した場合に行使可能」という条件が設定されている。直近の年間売上高94億円(第14期)に対して160億円は1.7倍超の水準であり、経営陣が中期的な売上成長にコミットしていることを示す公的なシグナルとして読み解くことができる。

自己株式取得(当中間期)
290,800株(約1億円)
自己株式比率
発行済株式の6.88%
譲渡制限付株式報酬による処分
105,263株
第21回新株予約権
145,871株、行使条件:2028〜2031年8月期に連結売上高160億円超
直近通期売上高(第14期)
94億円

出典:第15期中間有価証券報告書 株式等の状況・新株予約権等の状況

第7章

論点の整理

第15期中間決算から導かれる構造的な論点を3点に整理する。

論点① GMVと売上高の乖離の持続性
流通総額(GMV)の伸びが1.2%にとどまる一方、売上高が5.8%伸びている。ネットレベニューレートの改善が今後も継続するか、それともGMVの低成長が売上成長の天井を規定するかが、収益構造の持続性を左右する。セラーサクセス等の月額固定型収益源の拡大状況が監視点となる。
論点② エージェントセグメントの損失拡大とBPO収益化タイミング
エージェントの損失は107百万円から135百万円へと27%拡大した。2026年1月に立ち上げたBPO事業(営業代行・補助金・SNS・HR)の先行投資が主因であり、BPOが法人顧客の獲得を加速できるかどうかがグループ利益改善の主要ドライバーとなる。損失縮小の進捗を半期ごとに追う必要がある。
論点③ のれん・顧客関連資産の残存と純利益への影響
のれん残高875,766千円と顧客関連資産285,850千円が毎半期74,454千円の非現金費用を発生させ続ける。BPO立ち上げコストが重なる局面では、営業CFの改善ペースと純利益の乖離が拡大しやすい。調整後ベースの収益力と会計上の利益水準の差異を意識して読む必要がある。

出典:第15期中間有価証券報告書をもとに論評編集部が整理

3つの論点が交差する焦点は、BPO事業の収益化タイミングと新株予約権の行使条件(年間売上160億円)との距離感にある。GMVの伸び鈍化を手数料率改善で補い続けながらエージェントの黒字化を実現できるかどうかが、グループ全体の損益構造の転換点を規定すると見るのが自然だ。

論点 → 質問状

この決算を、どう追うか

次の半期報告書においてエージェントセグメントの損失額の推移・BPO事業の売上計上開始時期・のれん残高の減少ペースを継続して記録する。GMV成長率と売上高成長率の乖離が縮小に転じた場合、ネットレベニューレート改善の限界点として企業カルテに反映する。

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