
製品品質と財務体質を問う2025年2月期上期レビュー
はじめに
歯科・眼科・外科用の精密医療器具を手がけるマニー株式会社(証券コード:7730)は、2025年2月期上期(第66期中間)の半期報告書を提出した。
売上高は148億円(前年同期比+6.5%)と増収を維持する一方で、営業利益は41.7億円(同0.6%減)、経常利益は42.7億円(同6.0%減)と減益決算となった。
中国におけるダイヤバー製品の自主回収が足かせとなる中、スマートファクトリー投資や北米販売子会社の設立、新製品の投入など、次の成長を見据えた布石も多数。
この記事では、財務・製品別動向・キャッシュフロー・ESG・事業再編の動きまで、多角的にマニーの現状を読み解く。
1. 財務ハイライト(2025年2月期上期・連結)
- 売上高:148億円(+6.5%)
- 営業利益:41.7億円(▲0.6%)
- 経常利益:42.7億円(▲6.0%)
- 親会社株主に帰属する純利益:29.4億円(▲7.9%)
- 自己資本比率:91.6%(高水準維持)
- 営業CF:+30億円/投資CF:▲46億円/財務CF:▲23億円
- 現金等期末残高:175億円(前年末比▲47億円)
2. 製品別動向と地域別収益構造
セグメント別売上・利益
製品カテゴリ | 売上高 | 増減率 | セグメント利益 | 増減率 |
---|---|---|---|---|
サージカル関連 | 47億円 | +24.6% | 16.4億円 | +32.1% |
アイレス針関連 | 55.6億円 | +11.7% | 20.7億円 | +8.1% |
デンタル関連 | 45.4億円 | ▲11.9% | 4.6億円 | ▲55.8% |
- 眼科ナイフを中心とするサージカル製品は欧州・アジアで堅調
- アイレス針は中南米・アジアで受注増
- デンタル製品は中国自主回収の影響で大幅減益(中国売上は年間25億円規模)
3. 主要トピックス──製品品質・グローバル展開・新工場
【中国】ダイヤバー製品の自主回収
中国当局への届け出情報に不備があったとして、2025年3月に一部製品を自主回収。
50%超の品目で販売停止。安全性に問題なしとしながらも、当局への変更申請が必要。
【北米】MANI MEDICAL AMERICA設立
2024年9月、米国に新販売子会社を設立。地域密着型営業とディーラー網整備を進行。
【国内】花岡工場(スマートファクトリー)竣工
2025年1月に完成。眼科ナイフ・NiTiロータリーファイル「JIZAI」シリーズの生産体制を強化。
【製品】JIZAI Pre 020を新発売
根管治療向け新サイズを追加し、製品ラインのフルライン化を推進。
4. キャッシュフロー・財務の健全性
- 営業CF:+30億円 → 売上増・営業利益による
- 投資CF:▲46億円 → 花岡工場建設・定期預金など
- 財務CF:▲23億円 → 配当支払いの影響
- 自己資本比率:91.6% → 無借金体制
定期預金の移動・設備投資によりキャッシュは減少したが、安定財務は維持。現預金は175億円と潤沢。
5. ESG・人的資本・ガバナンスの進展
- 女性管理職比率:約8%(業界平均上回る)
- 育休取得率:女性100%/男性82%(国内外)
- 有給取得率:約77%(前年並み)
- 海外売上比率:約90%超
- 持株比率:マニックス10.76%、日本マスタートラスト信託12.5%(機関投資家の長期保有構造)
人的資本や健康経営に関する定量情報の開示は限定的だが、今後の可視化とTCFD対応の強化が期待される。
6. 投資家視点での評価と今後の焦点
- 自己資本比率91.6%の超健全財務体質
- 営業利益率28%台、ROE30%超(フルイヤー)を維持
- 自社株買いなし、配当利回り約1.3%(控えめ)
- 中国回収影響・欧米展開強化の“両面リスク”に注目
中長期視点では、製品ポートフォリオの多様化・北米深耕・スマート工場による生産性向上が、株主価値向上のドライバーとなる。
論評社としての視点
マニーは“品質ファースト”と“グローバルニッチ”を両立する稀有な医療機器メーカーである。
製品の一部停止や出荷遅延が経常利益を圧迫する中でも、財務健全性と営業キャッシュの強さが目立つ。
2025年は、規制対応・新製品普及・米国事業の早期黒字化がカギとなるだろう。
静かに確実に──ニッチ・プレミアムを体現する企業の成長力が試されるフェーズが始まった。