ウエストホールディングス、太陽光の“次”を問う(2025年2月期・中間レビュー)

FIT後時代のグリーン・インフラ企業の行方はじめに

株式会社ウエストホールディングス(証券コード:1407)は、再生可能エネルギー事業を柱とする建設・電力グループであり、本社を広島県広島市に構える。

2025年4月現在の時価総額はおよそ1,410億円、自己資本比率24.5%ながらも潤沢なキャッシュフローと高い施工技術、メガソーラー事業での全国展開を武器に、エネルギーインフラ市場で独自の地位を築いている。

2025年2月期・中間決算では、工事の季節要因や天候の影響により減収減益となったが、下期以降に大型案件の引渡しが集中する見込みであり、通期では回復を見込んでいる。

また、非FIT(固定価格買取制度)時代を見据えた蓄電池、電力卸、スマートグリッドへのシフトも本格化。グリーン・バリュー株としての中長期的評価が問われる局面にある。


1. 財務ハイライト(2025年2月期・中間)

  • 売上高:148億円(前年比▲25.3%)
  • 営業利益:14.3億円(▲50.6%)
  • 経常利益:11.1億円(▲56.7%)
  • 純利益:5.5億円(▲70.7%)
  • 総資産:1,276億円(前期比+17.5億円)
  • 純資産:314億円(▲19.9億円)
  • 自己資本比率:24.5%
  • 営業CF:+12.4億円/投資CF:▲21.6億円/財務CF:+51.0億円
  • 現金等残高:295億円(前期末比+17億円)

2. セグメント別業績と工事実態の構造分析

セグメント 売上(百万円) 前年比 営業利益(百万円) 前年比
再生可能エネルギー 11,393 ▲30.0% 729 ▲61.6%
省エネ事業 611 ▲31.0% 187 ▲10.5%
電力事業 2,111 +7.2% 172 ▲64.0%
メンテナンス 952 ▲1.1% 305 +14.2%

FITに依存しない再エネモデルの構築として、非FITメガソーラーの自社開発、電力の直接販売(PPA・卸)への対応、住宅向け蓄電池やBEMSの導入が拡大。

太陽光施工事業者から、エネルギー自給自足型企業への進化が鮮明となっている。

工事実態の補足:

  • 非FIT太陽光発電所のEPC(設計・調達・施工)請負工事(メガソーラー中心)
  • 住宅用ソーラー+蓄電池+HEMS連携による住宅エネルギー最適化工事
  • 中小事業者向けのPPAモデル提案・自家消費型発電所の設置工事
  • 発電所メンテナンス(O&M)契約の履行(洗浄、監視、草刈、修繕)
  • 電力系統接続・変電設備の施工支援

3. 財務・キャッシュフロー構造の再評価

  • 借入金の積極的活用により資金調達力を確保(長期借入金+58億円)
  • 流動比率230%超、現金水準300億円弱と高い流動性
  • ROE(中間ベース):3.5~4.0%、営業利益率:9.7%

営業CFの黒字転換はポジティブだが、資本効率の向上(ROE7%超)に向けては、売電益の積み上げと案件回転速度の改善が必要。


4. 株主構成・資本政策と評価水準

  • 発行済株数:46,027,488株/株価:3,400円前後(時価総額:約1,410億円)
  • 自己株保有:13.84%(636万株)
株主名 持株比率
吉川 隆(創業者) 43.8%
日本マスタートラスト信託 5.5%
日本カストディ銀行 4.1%
  • 配当予想:1株65円/利回り:約1.9%
  • PBR:0.9倍前後/PER:約13倍

中長期的に見ると、EPS成長とPBR改善余地が大きく、配当・自社株買いによる還元強化の期待も根強い。


4.5. 投資家視点での評価と戦略的展望

  • 自己資本比率:24.5%と高水準ではないものの、現金保有額295億円と流動性に優れる。
  • 配当利回り1.9%、PBR0.9倍、PER13倍前後と、割安感のあるバリュー株の特性を備える。
  • ROE・ROICは中間期で3〜4%台にとどまるが、通期での案件進捗と利益の積み上げによって、年6〜7%への回復余地あり。
  • 自己株式13.8%保有という安定株主構造と、創業者・機関投資家の安定持株比率は、資本政策の柔軟性にもつながる。
  • ESG文脈での脱炭素・分散型エネルギー供給・スマート施工技術など、定量評価可能な非財務情報も充実しつつある。

投資家としては、通期利益の反転、キャッシュ配分方針(増配・自社株買い)、非FIT領域での設備稼働率・利益率改善を注視すべき。再生エネルギーの中でも“実需に即したエンジニアリング主導型”企業として、再評価の機運が高まりつつある。


5. 論評社としての視点

ウエストホールディングスは、太陽光施工の「量から質」への転換、非FIT構造への脱却、そしてグリーン・エネルギー企業としてのアイデンティティ確立に向けた岐路にある。

資本効率・成長性・還元力の三拍子を揃えた企業へと脱皮できるかどうかは、今後2年の電力取引事業、蓄電領域、スマートメンテナンス技術の商業化にかかっている。

再生可能エネルギー企業の“第二章”が、今まさに始まった。

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