
CF創出・M&A戦略に注目集まる
生成AI案件を主軸に、Laboro.AI(東証グロース:5586)は2024年10月〜2025年3月の中間期で売上979百万円(+37.3%)、営業利益205.9百万円(+205.3%)と大幅な増収増益を達成。
営業キャッシュ・フローは275百万円に達し、潤沢な資金基盤を確保。4月にはCAGLA社を買収し、グラフDB技術との統合戦略も進行中だ。
高利益率案件の拡大と商用化移行が進展
売上高は前年同期比+37.3%の979.1百万円。特に生成AI関連のPoC案件から本格商用契約へと移行する動きが目立ち、受注単価・継続性ともに改善傾向が確認された。
営業利益率も前年9.5%から21.0%へと大きく上昇した。
収益構造の要点(損益計算書ベース)
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売上高:979,091千円(前年同期:713,172千円)
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売上原価:299,372千円(前年同期:239,692千円)
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売上総利益:679,718千円(同+43.6%)
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販管費:473,794千円(同+16.7%)
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営業利益:205,924千円(前年同期:67,449千円)
販管費の伸びが抑制されたことで、利益成長に寄与した。
営業CFは275百万円、現預金1800百万円へ増加
営業キャッシュ・フローは前年同期30.2百万円→275.6百万円と大幅に改善。損益計上ベースだけでなく、債権回収・未払費用増加などの運転資本改善も奏功している。
キャッシュ・フロー内訳(キャッシュ・フロー計算書より)
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税引前利益:206,955千円
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売上債権減少:+64,031千円
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未払費用・法人税等増加:+50,000千円超
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法人税支払:−27,653千円
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投資CF:−3,037千円(主に固定資産取得)
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財務CF:+5,337千円(新株予約権行使)
現預金残高の推移:
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前期末:1,523,398千円 → 今期末:1,801,319千円
財務の変化を決算書から読み解く
以下は貸借対照表・PL構造の定量比較分析である(2024年9月末→2025年3月末)。
資産構成の変化
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総資産:2,591,538千円 → 2,845,177千円(+253,639千円)
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現預金:+277,921千円(CF改善による増加)
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売掛金・契約資産:−64,031千円(回収による減少)
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有形固定資産:−9,794千円(減価償却)
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負債構成の変化
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総負債:200,221千円 → 306,419千円(+106,198千円)
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未払法人税:+41,726千円
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未払金:+36,758千円
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純資産構成の変化
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純資産:2,391,317千円 → 2,538,757千円(+147,440千円)
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資本金・資本準備金:それぞれ+2,668千円(新株予約権行使)
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利益剰余金:+142,102千円(中間純利益の全額反映)
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CAGLA買収によりDB技術統合へ、のれん影響は今後判明
2025年4月、グラフデータベース開発を手がけるCAGLA社を買収(取得対価:153百万円)。
統合に向けたアドバイザリー費用41.2百万円も計上されており、今後ののれん・無形資産の会計処理は通期決算で確定する見通し。
M&A概要:
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買収企業:株式会社CAGLA
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買収目的:AI×DB技術の融合による新ソリューション創出
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取得費用:現金153百万円+統合費用41.2百万円(概算)
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会計処理:のれん・受入資産は期末時点で未確定
中期戦略・統合管理体制の可視化
Laboro.AIは、短期的な業績成長を実現した一方で、中期的な企業価値向上には「事業拡大の方向性」と「統合・投資の実行性」が問われる。
注目トピック:
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CAGLA社統合の進捗、技術連携ロードマップ
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営業CFの再投資方針(人材、研究、外販拡張など)
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セキュリティ・AI倫理・ESGの開示強化
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株主還元・資本政策の方針整備
定量構造は堅調、次は「成長の設計思想」へ
Laboro.AIは第10期中間で明確な増収増益とCF改善を達成。収益性・健全性の双方でポジティブな数値が並ぶ一方、今後はそのキャッシュをどう再投資し、どのような形で次の収益源を創るのかが問われるフェーズにある。