
◆企業概要
スターシーズ(旧・シーズメン)は1989年にアパレル店舗事業としてスタートし、主にショッピングセンター内でカジュアル系・ストリート系のブランドショップを展開してきた老舗衣料小売業者である。
近年ではM&Aを通じて、エスニック雑貨(チチカカ)、ビルメンテナンス(ミヤマ)、ライブコマース(MF6)など事業領域を多角化。
さらに「系統用蓄電池事業」への参入も表明し、方向性が急激に拡散しつつある。
だが本業の赤字脱却は果たせず、この5年間で一度も営業利益黒字を記録していない。
株式の大幅希薄化、新株予約権発行による希薄化によって「株主が持ち出しで延命する構図」が続いている。
財務サマリー(第36期:2024年3月〜2025年2月)
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売上高:51億10百万円(前年比▲7.6%)
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営業損失:▲2億82百万円(前年:▲1億03百万円)
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経常損失:▲3億60百万円
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当期純損失:▲5億30百万円
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営業CF:▲2億95百万円
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投資CF:▲1億84百万円(資産除去・投資有価証券)
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財務CF:+4億12百万円(株式発行:5.3億円)
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現預金残高:2億81百万円(前年比▲6,700万円)
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自己資本比率:34.6%
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連結子会社「チチカカ」:債務超過▲4.6億円
“赤字5期連続”と、未達の営業利益目標
同社は過去5期にわたり、毎年営業黒字を目標に掲げながら、一度として達成していない。
以下がその目標と実績の対比である。
決算期 | 目標(営業損益) | 実績(営業損益) |
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第32期 | ▲3.2億円 | ▲1.8億円 |
第33期 | ▲2.4億円 | ▲2.5億円 |
第34期 | ▲1.7億円 | ▲1.0億円 |
第35期 | +2,000万円 | ▲2.8億円 |
第36期 | +2,000万円 | ▲2.8億円 |
株式発行と新株予約権──資金調達は「株主持ち出し」
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2024年3月以降、新株発行+予約権行使により株式数は+45%増加(2.88百万株 → 4.19百万株)
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資本金増加:+2.75億円(第三者割当)
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株価:2024年高値1,406円 → 直近981円(▲30%以上)
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結果:希薄化により1株当たり純資産は124円に低迷
新株発行による調達資金5.3億円のうち、営業活動や成長投資に資する実績は乏しく、主に赤字の埋め合わせに吸収されている。
“M&Aと新規事業”の多さ=再生の足かせ
今期実行された主な事業展開は以下のとおり。
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子会社化:ライブコマース事業「MF6」
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撤退:ミヤマ(ビルメンテナンス)を売却し非子会社化
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宣言:蓄電池事業への参入予定
だが、これらはいずれもPL・CF上で直接的な利益貢献が確認できず、むしろ財務負担や統合コストを増加させている可能性が高い。
とくに子会社「チチカカ」は債務超過▲4.6億円、今期も当期純損失4.4千万円を計上している。
営業CFマイナス3億円──利益なき延命の実態
営業損失は2.8億円であったが、キャッシュフローではさらに悪化。
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売上債権増加(資金減):▲1.1億円
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棚卸資産減少(資金増):+9,700万円
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税金支払:▲4,500万円
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減価償却等による非現金増加:+5,600万円
CF構造を見ると、「赤字を補いながらも営業活動では資金が枯渇している」ことが明確だ。
一方で、資金確保は増資による5.3億円の株式発行で補っており、株主が損失の緩衝材になっている形だ。
再建の足場なき“予測と希薄化”の連鎖
スターシーズの決算は、売上・利益ともに回復の兆しが見えず、むしろM&Aと株式発行に依存した“戦略的迷走”を印象づける内容であった。
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過去5期連続の営業赤字未達
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希薄化による株価・資本効率の悪化
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M&Aの即時収益化失敗と子会社の債務超過
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新規事業の成果が不明瞭なまま増資だけが進行
この構造のままでは、2026年2月期の営業利益目標(2億円)も達成は極めて困難であり、再び“資金調達の口実”として使われる可能性すらある。
論評社は問う。
この会社に、次の増資を正当化するだけの「数字」と「構想」はあるのか?
黒字転換に至らない経営計画の連続は、やがて“上場企業としての信頼”そのものを損なうだろう。