Long Corridor、Def consulting株式19.94%取得

譲渡制限・買取条項・全額借入スキームが仕掛ける“戦略的資本支配”の全貌

2025年6月18日、香港を拠点とする資産運用会社Long Corridor Asset Management Limited(以下、Long Corridor)は、株式会社Def consulting(証券コード:4833)の新株予約権7,300,000株を取得し、発行済株式総数29,302,015株に対して19.94%の保有比率に達したと大量保有報告書により開示した。

この取得は、第三者割当による第6回新株予約権の全数引受に基づくものであり、取得単価は1個35円(100株換算で0.35円/株)という極端に低い水準である。さらに、同報告書からは以下のような“資本支配スキーム”が読み取れる。

  • 予約権には【譲渡制限】がかけられており、会社の書面承諾なく第三者に譲渡できない。
  • 【行使期限末日】には、発行者(Def consulting)が当該予約権を買い取るオプション(=買取条項)を有する。
  • 取得資金は全額「メリルリンチ・インターナショナル(英国)」からの【借入】であり、Long Corridor側の資金コミットメントは“ゼロ”。

これらはすべて、表面的には法的に整合性のある契約で構成されているが、その“設計思想”は明確に、【実質的経営影響の取得と希薄化利益の収奪】を目的としたファイナンスであると読み解ける。

Long Corridorとは何者か

“合法的資本戦略”を展開するクロスボーダーファンド

Long Corridorは2018年に香港で設立され、代表者はJames Xinjun Tu氏。米中資本を背景としつつ、東京都丸の内に拠点を構えるなど、日本株への直接的なアクセスルートを複数持つ“クロスボーダー型アクティブファンド”である。

報告書では、「Long Corridor Alpha Opportunities Master Fund」および「MAP246 Segregated Portfolio」の2ファンドの投資一任に基づく取得とされ、通常のヘッジファンドと異なり、事業会社の資本政策とIR環境を巧みに利用する構造が特色とされる。

近年は、類似スキームにより複数のグロース企業・再建ベンチャーへ“資本支配的接近”を図っており、関係筋では「表に出ないエンゲージメントファンド」との見方もある。

このスキームが孕む4つの異常性

  1. “希薄化を行使せずに既得化”する構造
    • 通常、予約権の大量保有は「将来の資本参入」を目的とするが、今回のケースでは、譲渡制限と買取条項があることで“行使しなくても資本支配効果を発揮できる”戦略に見える。
  2. 企業が“買い戻し”を強制されるリスク
    • 期限末日にDef consulting側が買取義務を負う(または選択できる)という条項は、企業財務を予見不能な形で圧迫する“財務拘束オプション”に等しい。
  3. 全額借入=資本市場への一方的リスク転嫁
    • Long Corridor側は1円の自己資金も投下せず、外部借入で権利を手に入れており、“権利は持つが責任は負わない”という片務的構造が顕在化している。
  4. 規制の空白を突く巧妙な設計
    • 譲渡制限・買取条項・第三者割当という3点セットは、現行の大量保有報告制度・金商法・会社法のいずれにおいても“個別の違法性”を問えないが、組み合わせとしては制度趣旨の逆行である。

投資家が問うべき3つの問い

  • IR開示の適正性:Def consultingがこの契約の詳細を正確かつ公平に説明できるか
  • 取締役会の説明責任:第三者割当の背景、交渉の経緯、選定基準の妥当性
  • 市場監視の在り方:希薄化ファイナンスが企業支援か、実質的支配かを見極めるガバナンスの整備

“希薄化”は合法かつ構造的、しかし透明性が不可欠

Long CorridorによるDef consultingへの19.94%の予約権取得は、形式上は合法な資本提携スキームである。

しかし、譲渡封鎖・買戻し条項・全額借入という“3つの透明性欠如”を孕む構造は、明確に“資本市場の盲点”を突いたものであり、その本質は【支援ではなく制圧】に近い。

今、投資家に求められるのは、「どのような形のファイナンスが、健全な企業活動と株主利益に資するのか?」という本質的視点だ。

目の前の資本調達が企業の未来をつくるのか、それとも市場の秩序を崩すのか──今、Def consultingが示すのは、その問いに対する一つの試金石である。

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