株式会社トゥエンティーフォーセブンHD 決算分析

企業概要

再建フェーズを進む「24/7」ブランドの中核企業

株式会社トゥエンティーフォーセブンホールディングス(旧社名:株式会社トゥエンティーフォーセブン)は、「24/7Workout」ブランドを展開するパーソナルトレーニングジム事業の先駆企業である。

もともとは「短期間・高密度」のボディメイク指導に特化し、広告戦略によって急成長を遂げたが、新型コロナ禍以降、5期連続で減収・赤字が続いた

2025年6月には持株会社体制へと移行し、パーソナルジム専業モデルから脱却すべく、フィットネスジム業態「24/7FiT」やパーソナルピラティス業態「24/7Pilates」などの多業態展開を開始している。

現在は東京都港区に本社を置き、全国直営・フランチャイズを含む約100店舗を運営。

2025年時点ではNOVAホールディングスおよびいなよしキャピタルパートナーズの資本傘下にある企業として、再建と黒字化に向けた構造改革を進めている。

財務サマリー

赤字縮小の裏にある“広告費急減”と“事業再編”

指標 前年同期(第17期中間) 今期(第18期中間) 増減幅 通期(第17期)
売上高 1,295百万円 951百万円 ▲344百万円(▲26.6%) 2,527百万円
営業損失 ▲324百万円 ▲117百万円 +207百万円(赤字縮小) ▲320百万円
経常損失 ▲324百万円 ▲110百万円 +214百万円(赤字縮小) ▲381百万円
純損失 ▲371百万円 ▲128百万円 +243百万円(赤字縮小) ▲436百万円
自己資本比率 14.1% 17.4% +3.3pt 14.4%
現金等残高 495百万円 559百万円 +64百万円 651百万円

大幅な減収にもかかわらず赤字幅が縮小した最大の要因は、広告宣伝費の大幅削減(前年:386百万円→今期:82百万円)。表面的には「改善」と見えるが、“集客コストを削りすぎた結果としての売上急減”とも読み取れる。


◆ セグメント構造

パーソナルジム一本足経営からの脱却模索

当社はパーソナルトレーニング事業(24/7Workout)を主軸とした単一セグメント企業であり、今期もセグメント別の開示はない。

ただし、以下の動きが重要な経営構造変化を示している。

  • 低価格・短期型新コースの導入(価格破壊による需要創出)

  • 業態転換および新規展開

    • 「24/7FiT」(フィットネス型):新規2店舗、業態転換2店舗

    • 「24/7Pilates」(パーソナルピラティス型):15店舗併設、1店舗単独開業

  • 直営店88店舗・FC8店舗体制(前期末比+5店舗)

つまり、パーソナル単一モデルの限界を見据えた分化戦略が進んでいることが読み取れる。

 キャッシュフロー分析

営業赤字でも資金流出は限定的

指標 前年同期 今期(第18期中間) 備考
営業CF ▲340百万円 ▲200百万円 税引前損失と前受金減
投資CF ▲12百万円 ▲38百万円 新規出店による設備投資
財務CF +115百万円 +145百万円 増資(第三者割当+新株予約権)
現金残高 495百万円 559百万円 CF改善で増加

営業キャッシュフローは依然として赤字だが、広告費抑制と新業態開発を投資に留め、資金繰りの延命に成功している。ただし、継続的な資金流入を伴わなければ、今後は再びキャッシュアウトに転じるリスクを孕む。

 財務構造と増資依存の資本政策

  • 今期、第三者割当増資と新株予約権行使により資本金・資本剰余金を合計145百万円増強。

  • しかしながら、累積損失を穴埋めすべく393百万円を欠損補填に使用。

  • 固定負債の中心は「資産除去債務:28億円超」であり、長期リスクとして重くのしかかる。

  • 自己資本比率は改善(14.1%→17.4%)しているが、本質的な資本蓄積には至っていない

株主構造

親会社2社で支配体制を構築

株主名 持株数 持株比率
いなよしキャピタルパートナーズ 3,360,700株 39.6%
NOVAホールディングス 1,394,500株 16.4%
上位2社合計 4,755,200株 56.0%

経営支配は完全に親会社グループに依存。これは財務支援や経営再建の“後ろ盾”であると同時に、独立性・ガバナンス面での懸念材料でもある。

持株会社化と子会社M&Aの真意

2025年6月1日付で持株会社へ移行し、「事業会社=新トゥエンティーフォーセブン」へ事業承継。同時にNOVAグループ傘下のサンシャインビル株式会社(スポーツ施設運営)を800千円で子会社化

これにより、

  • 「24/7Workout」+「24/7Pilates」+既存スポーツ施設

  • 一体提供による収益化モデルを模索。

グループシナジー狙いは明白だが、あまりに低価格な買収額(800千円)は、実質的な資産移転か社内グループ再編の側面も否定できない。

延命から成長への転換を本当に果たせるのか?

当社の今期決算は、「危機脱出」と「構造改革初動」が混在する過渡期にある。

広告費削減による黒字転換は見かけの改善に過ぎず、本質的には事業構造と顧客獲得モデルの再構築が問われている。

  • 新業態は果たして定着するのか?

  • 月次黒字化(見込み)以降の利益構造は?

  • 増資依存体質からどう脱却するのか?

“第二の創業”を掲げるならば、問われるのは次の一手の「リアルな持続力」である。

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