
Gold Pacific Global Limitedが仕掛ける“東証グロースの獲り方”
香港発、静かに日本株を仕留める
Gold Pacific Globalとは何者か
今回、注目すべきは香港の投資会社「Gold Pacific Global Limited」(以下、GPG)が、東証グロース上場のジェリービーンズグループ(3070)に対して一気に10.51%を取得したという事実である。
▍GPGの基本情報
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設立:2003年1月22日
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所在地:香港・クオリーベイ(Quarry Bay)
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代表者:Kawase Atsushi(河瀬敦氏)※日本人の可能性
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業種:投資業
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資金調達:全額「自己資金」(約21.3億円)
これは、「PEファンド的な動き」とも「アクティビスト的な侵略」とも異なる、“独自ルートの買い回し”であることを意味している。
取得の概要
新株予約権と現物株をダブルで押さえる
報告書によると、GPGは以下の手法で2025年8月29日に大量保有状態となっている。
日付 | 種類 | 株数 | 保有比率 | 取得方法 | 単価 |
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2025年8月29日 | 普通株式 | 2,105,200株 | 3.00% | 市場外 | 95円 |
同日 | 新株予約権 | 5,263,100株相当 | 7.51% | 市場外 | 2.64円 |
合計で7,368,300株(10.51%)を保有したことになる。
特に注目すべきは、新株予約権の行使価格である。
2.64円という異常に低い水準で取得できている点だ。
これは、何らかのスキーム(第三者割当等)により、極めて安価に転換可能なワラントを入手している可能性を示している。
GPGの狙い
“一撃取得”は何を意味するのか?
GPGの行動を解釈するためには、以下の点を踏まえる必要がある。
▍① 事業再生系 or TOB前の構え?
このような「市場外での一括取得+予約権」というパターンは、しばしば以下の文脈で現れる:
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財務的に困窮した企業が、“増資による延命”を行うとき
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企業支配を狙う投資家が、“株価希薄化スキーム”を活用して事実上の影響力を握るとき
GPGが新株予約権を含めて10%超を保有したことにより、一定の影響力を行使できる状態にあるのは間違いない。
▍② 単なる「純投資」か?
報告書では「保有目的:純投資」とされているが、これは形式的な記載にすぎず、実質的には次のような目的も視野に入る:
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資本提携・役員派遣・M&A準備
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価格吊り上げによる短期利益の追求
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他投資家へのシグナル発信
ジェリービーンズグループ側のリスクと防衛線
このような急激な外資保有の増加は、発行企業側にとって以下のようなリスクを孕む:
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取締役の選任・解任などの経営干渉(保有比率次第)
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株価操縦的な動き(例えば転換→売却による需給悪化)
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他ファンドや個人投資家による“便乗買い”の誘発
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最悪の場合、経営統制権の掌握
ジェリービーンズG(3070)は、東証グロース市場における中小型株として、ガバナンス体制が比較的“脆弱”な立場にある。
対抗措置(買収防衛策やIR対応)が極めて重要になる局面である。
“10.5%を1日で取得”の真意とは
この一件は、次のような問いを私たちに投げかける。
「なぜこのタイミングで?」
「なぜこの企業を?」
「なぜ新株予約権を使ったのか?」
答えは明示されていない。
しかし、「わずか1日で10.5%を取得する投資家」は、単なる傍観者ではない。
彼らは“既に動いている”。