
トランクルーム市場の先駆者、成長投資の光と影
企業概要|専業上場企業としての立ち位置
ストレージ王は、国内でも数少ないトランクルーム専業の上場企業である。
創業以来、住宅密集地や地方都市の遊休地を活用し、トランクルームの企画・運営を事業の中核に据えてきた。
事業は大きく三つの柱から成り立つ。
第一に、自社保有や他社委託物件を運営する運営管理事業。
第二に、コンテナ型を中心とした施設を開発し分譲する開発分譲事業。
第三に、ホテルや土地を取得し転売する不動産取引事業である。
同社の特徴は、在庫を抱えて運営利益を積み上げるモデルと、物件を売却してキャッシュを確保するモデルを組み合わせ、資金循環を意識したビジネスを行っている点だ。
大株主には業界関連企業や戦略的パートナーが並び、トランクルーム市場の拡大を見越した“業界内連合”の様相もある。
決算ハイライト
売上は急拡大も赤字は続く
2025年2〜7月期の売上高は12.8億円(前年同期比+129.2%)と倍増以上。
中間純損失は6,769万円で前年から約4割縮小した。営業損失は1.05億円と横ばい、経常損失は1.10億円でやや悪化。自己資本比率は23.3%に改善し、現金残高は5.9億円に積み上がった。
指標 | 2024年中間 | 2025年中間 | 評価 |
---|---|---|---|
売上高 | 5.6億円 | 12.8億円 | 2.3倍 |
営業損失 | ▲1.08億円 | ▲1.05億円 | 横ばい |
経常損失 | ▲1.05億円 | ▲1.10億円 | やや悪化 |
純損失 | ▲1.14億円 | ▲0.68億円 | 赤字縮小 |
自己資本比率 | 21.7% | 23.3% | 改善 |
数字は「拡大と改善」を示す一方、収益構造の脆弱さをも浮き彫りにした。
キャッシュフロー
在庫投資を借入で支える
営業キャッシュフローは▲7.8億円と依然流出だが、前年▲20億円超からは大幅に改善した。
販売用不動産の積み増しが主因である。投資CFは小幅なマイナスにとどまり、財務CFは借入増加で+8.8億円を確保。
結果として期末現金は5.9億円へと積み上がった。
「営業はマイナス、財務で補填する」という構図は、成長企業特有の姿ではあるが、借入依存度の高さは中長期のリスク要因でもある。
セグメント分析
在庫投資を借入で支える
運営管理事業は売上5.2億円を計上したが、赤字3,100万円と損益改善に至らず。開業コストが重荷となっている。
開発分譲事業は売上4.0億円、利益1,500万円を確保。コンテナ物件の分譲売却が寄与した。不動産取引事業は売上3.6億円、利益2,400万円と堅調で、ホテル物件の売却が収益を押し上げた。
セグメント合算では黒字化に近づいているものの、本社費用1億円超が足を引っぱり、全社では営業赤字が続いた。
ここに「事業の芽は育っているが、まだ経営体制が追いついていない」現実がある。
財務と資本政策
在庫拡大と安定株主
総資産は45.1億円に拡大。その中心は販売用不動産27.9億円で、前年から8.1億円増加した。
一方で、短期借入金も14.3億円に増加し、在庫投資と借入が並行して膨張する構図となった。
株主構成はケイ・エル・アイ(24.08%)、デベロップ(9.89%)、寺田倉庫(2.71%)など、業界プレイヤー色が濃い。潜在株はなく、希薄化リスクは限定的だが、借入構造の健全性をどう維持するかが問われる。
拡大か収益化か、その分岐点
ストレージ王の今期決算は、売上の急拡大と赤字縮小を同時に示した。
しかしその裏では、在庫の積み増しと借入依存というリスクが進行している。
投資家の視点からは、在庫の回転速度と運営管理事業の黒字化が焦点となる。
アクティビストの視点では、本社費用の圧縮や借入構成の透明性、資本効率の改善が求められるだろう。
次の半期は、ストレージ王が「成長の加速」を選ぶのか、「収益性の確立」を優先するのか。その選択が企業価値の行方を左右する。